関税障壁問題と亡父への懺悔
私は亡父との約束を守れなかった。
少々前の話になるが、父親からコソッと頼まれた。
「俺が死んだら☓☓に隠してあるバランタイン17年を末期の水に使ってくれ。なるべく多目で」
「わかった。残りは飲むぞ」
「おう、高価い酒だから愉しめ」
「いや、最近バランタインとかそんな高価くないぞ」
「え?」(驚きの表情)
「幾らで買ったの」
「ボーナス吹っ飛ぶ位した」(不安気な表情)
「いつの話だよ。今☓☓円位」
この辺は1ドル360円時代の洋酒価格を調べて貰えば解ると思う。
良い時代になったもんだ。
「えぇ……」(絶望的な表情)
「サッチャーの外圧もあったし」
「でも、中味が今とは……」(何かに縋る様な表情)
「同じだろ」
「……」(総てを喪った様な表情)
……と、いった事があったのだが、葬式とかドタバタして忘れてた。
すまん親父。
化けて出たりはしないでくれ。
後で探して飲む。