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[共通]リトランド王国

捨てたムーングレイ

作者: 月森香苗

◆カラーコード:#d4d9dc

◆こちらの作品はリクエストを受け付けた際に「婚約破棄して、愛する人を妻にしたヒーローが後悔する話」としてお題を頂いたものです。

◆上記が主題となっておりますので、主人公(男)は決して幸福な終わりにはなりません。

◆そして、男はクズでいらっとする性格をしています。男視点で書いていますが、男に腹が立ったりイラっとしたりムカついたり屑だと思ってくださったらありがたいです。

◆読んで不愉快に感じたと思ったらこちらの思惑通りなのですが、それに対して文句を言おう・重箱の隅をつつくような指摘をしてやろうとか思うような人は速やかに撤退してください。

(男がクズで苛つきました!とか言うのは大歓迎です。狙って書いているので)


上記をご了承の上でお読みください。

 幼い頃から婚約をしていた人がいた。家の格は同じくらいで、政略的な意味は無く、どちらかというと親同士が仲が良くこれからもいい関係を続けて行こうという意味合いでの婚約だと聞いていた。

 だからだろう、何時でも彼女に対して不満があったのは。思い合って婚約したわけではない。だが家同士の利益になるわけでもない。ただ親が仲が良いからという理由だけで組まれた縁組に自分の意思は反映されていなかった。

 彼女に対して抱いた感情は友人の妹というものでしかなかった。領地は隣同士ではなく一つ間に小さな子爵領が挟まっており、彼女の家に行く時は必ずその子爵領を通る事になった。

 幼い頃は家族で赴いていたけれども、成長するにしたがって一人で行くようになる。そうなると馬車よりも馬を駆けたほうが速いという事を理解するのは簡単だった。

 彼女の兄と友人関係で、婚約者に会いに行っているはずが彼女に会うよりも友人と遊ぶ方に専念する事の方が多かった。どちらかというと物静かで大人しい彼女は、木剣を片手に訓練のようなものをしている兄と婚約者を日傘の下から見ている事の方が多かった。

 二人きりで会うという事は殆どなく、だが誰にも咎められなかったので気にしたことは無かった。

 誕生日の時期になると母からプレゼントを贈るように言われたけれども、彼女が何を好むのか分からなくて使用人に任せて、一応メッセージカードは書いたけれどもそれも至ってシンプルな文章だった。

 彼女の誕生日の時期は冬の寒い頃で、雪も積もるからという理由で訪問する事が無かった。

 やはり誰も何も言わなかったから気にしていなかった。


 そうして十八歳になり、そろそろ結婚をという頃になってもなお、どこかに燻ぶる気持ちがあった。二歳年下の彼女は何時でも変わらない笑顔を浮かべていて、貴族の令嬢らしいとは思ったけれども情熱的な恋を抱くようなことは無かった。ただ、一緒にいて不愉快に感じたりこちらの気分を害するようなことは一切言わなかった。


 結婚に対して不満を抱いたけれども、かと言って婚約がなくなるわけでもなく、嫌だなと漠然と思いながらその日も馬に乗っていつも通りの道を駆けていると、いつもと違う光景があった。立ち往生している馬車があったのだ。馭者が車輪を確認しているので手伝いは必要かと声を掛けながら近寄る。

 人慣れした愛馬は大人しいので静かに着いてくる。

 馭者は困ったような表情をしながら「いや、何とか直ってはいるのですが、点検している最中でして」と答えた。

 すると、馬車の中から軽やかな女性の声が聞こえた。


「あら、申し訳ありません。邪魔をしてしまいましたか?」


 窓から見える、情熱的なバーミリオンの髪。


「いや、こちらは馬車ではなく馬だから問題は無かったが、何か手伝えることがあればと思って」

「まあ、それはご丁寧にありがとうございます。マーク、大丈夫かしら」

「はい、お嬢様。問題はございません……っと、雨が降ってきそうですね。急いでお屋敷に戻ります」

「そうね。ああ、待ってマーク。馬に乗っているという事は雨凌ぎが出来ないでしょう?雨が止むまで我が屋敷においでになりませんか?」

「え?」

「濡れてしまうと大変でしょう?遠慮はなさらないで。直ぐそこですから」


 その女性が指さした先は立派な屋敷。かつて父から聞いた事のある子爵家の家である。


「もしや、子爵家の御令嬢で?」

「ええ。ミコラ=マッケンベルグと申します」

「俺は、ボリス=トマンソンという」

「まあ、トマンソン伯爵家のご令息でしたの。それは失礼いたしました。ああ、いけない。本格的に降ってくるわ。トマンソン様、是非お越しくださいな」

「それでは、失礼させていただきます」


 確かに空は今にも雨が降りそうなほど暗く重い雲がかかっている。濡れたまま婚約者の家に行くわけには行かず、言葉に甘えてマッケンベルグ子爵邸に寄らせてもらう事にした。屋敷に着くや否や、雨が強い勢いで降り始めたので、好意に甘えて良かったと素直に思えた。

 それなり裕福な家であるというのは知っていた。父からは子爵領の発展を聞かされていたし、馬で婚約者の屋敷に赴くまでの間に実り溢れる麦畑の多さも見てきた。

 使用人が出迎え、応接室に案内される。壁には美しい絵画が掛けられていたり、美しく透き通るようなガラスの杯が飾られていた。純度の高いガラスの製品は高級なものだ。子爵家の富をさりげなく示す内装は、しかし上品にまとまっている。

 使用人が是非に、と用意してくれた紅茶を飲みながら机の上に置かれていた本を手に取る。最近人気のある作家の書かれた本で、どうやら待ち時間に自由に読んでいいというので読ませてもらう。

 暫くすると、お嬢様がお越しですと使用人から言われ扉の方を見る。すると、先ほどの外出着とは別のドレスを身に纏ったミコラが現れた。

 バーミリオンの髪の毛は緩く結い上げられ白い首筋に色気を感じる。豊かな胸元はコルセットによってさらに押し上げられて何とも目を惹くものだった。

 吊り目に近い大きな目がきらきらとこちらを見ていて、婚約者と母親以外の女性とあまり触れ合ってこなかった事もあり思わず顔を赤らめてしまった。

 そこからはもう坂を転がる石のように。今まで婚約者に抱いた事の無い情熱的な感情が生まれてしまった。婚約者に会いに行く体で途中にあるミコラの屋敷を訪れ彼女に会い、お互いに愛を深め合った。最初は指先が触れるだけ。そこから手が重なり、体を寄せ合い、抱きしめ合い、唇を重ね。そして全身で愛し合うようになるのに時間はかからなかった。

 婚約者への裏切りだと分かっていたが、どうしても止められなかった。これ以上ないという程の愛をミコラに抱いたのだ。

 こんな状況で結婚など出来るはずもなく、だがミコラを妻にするのであれば瑕疵が此方にあるのはまずいと思った。ミコラには最上の幸せを抱いてほしかった。何かしら婚約者に瑕疵が無いかと探り、そしてほぼでっち上げのような理由を付けて無理矢理婚約破棄に持ち込んだ。

 両親からは相手の家との関係を考えてくれ、と何度も言われたが、彼女を愛せる自信がない。子供が出来なくていいのか。など理由を付けた。

 相手の家からはボリスだけが絶縁されたけれども、気にしていなかった。

 結局、婚約の破棄ではなく白紙撤回という形になった。向こうからすれば何一つとして問題の無い娘にどんな瑕疵があるのだという事だった。当たり前だ。捏造のような状態で持ち込んだのだから彼女には一切の瑕疵はない。だがこちらに瑕疵を付けるわけには行かなかったのだ。


 なんという自分勝手な理論だろう。


 それからしばらくして、両親にミコラを紹介した。その時全てを察した父からは殴られたが、その時既にミコラは子を身籠っていた。腹が大きくなる前に婚姻せねば、子どもが嫡子と認められないと言い募ってどうにか婚姻届けを出す事が出来た。

 それからの日々は幸せだった。少なくとも、両親が隠居するまでは。

 両親が隠居して伯爵になったのは29歳の時。前の婚約者との婚約が白紙撤回されてミコラと結婚して10年目。両親は領地の端にある静養地で暮らすというので伯爵邸には夫婦と三人の子供、そして使用人だけになった。

 ミコラは今でも明るく華やかで、社交シーズンで王都に行くと誰よりも美しく輝いていた。

 三人の子供はミコラにそっくりで誰もが可愛く思えたし、大事に育ててきた。


 そんな幸せが、まさか代替わりして一年で消え失せそうになるとは思ってもいなかった。

 きっかけは事業に関わる職人が一斉に契約を終了した事だ。どういうことだ、と言えば、元々は元婚約者の家から派遣されており、契約者は父本人。代替わりと共に契約は終了するという事になっていた。それらも全ては元婚約者の嫁入りの為の準備のものであった。

 元婚約者がこの家に嫁げば契約は更新されるはずだった。だが実際には更新されなかった。そして期限が終了したので契約通り撤退するというのだ。

 それだけではない。これまで元婚約者の家から融通されてきた絹や鉱石の値段が一気に跳ね上がったのだ。何があったと問い合わせるも回答はない。そして思い出したのはボリスだけが元婚約者の家から絶縁されているという事実。

 父に慌てて連絡を取れば「契約は代替わりで終わる。婚姻していたら継続だった。あちらの好意を無下にしたのはお前だ」という回答が与えられるだけだった。

 思いつく限りの契約書を確認すれば、元婚約者から融通されたものはそれなりにあった。しかも領地経営に関わる所で。政略的な意味など無かったはずなのに、と思ったがそれどころではなかった。

 これまでは資金も十分にあり豊かであったのに、いきなりお金が回らなくなった。ミコラに実家に援助をしてもらえないか頼めば、ミコラは最初こそ当たり前じゃない、と言ってくれた。出来るだけ急いで業者を探したりしたのだが、熟練の腕前を持つ職人は早々いない。

 どうしようもない泥沼に足を沈めかけていた頃、いきなりミコラの実家である子爵家が潰された。王家に命じられた政務官の摘発により、ミコラの実家であるマッケンベルグ子爵家の不法取引、人身売買、脅迫、恐喝、横領などが明るみに出たのである。

 そして彼らは嫁いだミコラも拘束した上で「貴方には人身売買、脅迫、恐喝、禁止薬物の所持と使用の容疑があります」と騎士に連れられて行った。ボリスは何かの間違いだと叫んだけれども、騎士と政務官はボリスを哀れんだ目で見ているだけだった。

 後に、ミコラとの間に出来た三人の子供はいずれも父親が全員異なるという事だった。ミコラは自分の体を使う事に躊躇いは無く、ボリスと体を初めて重ねた時には既に純潔ではなかったのだという。それどころか、その時点で既に二人ほど子供を産んでいた。

 幸福だったはずなのに。

 残された三人の子供はいずれもボリスの血を引いていない赤の他人。取り返しがつかないほど資金繰りは困難になっている。ミコラとその父は有罪判決を下され、マッケンベルグ子爵家は既に無くなっている。

 幸いにしてボリスはマッケンベルグ子爵家の悪事に加担していなかったと証明はされたものの、失ったものは多い。貴族である事を保つ為にも奮闘するが、両親にどれだけ連絡しても返事はなく、三人の子供を知人に預けて静養地に行けばそこには誰もいなかった。建物はある。だが調度品は何一つとして残っておらず、使用人すらいない。名義はトマンソン伯爵家のものだがここを売りに出してもさほど金にはならないだろうなとどうでもいい事を思ってしまった。

 何故こんなことになったのだろう。

 両親の行方も分からなくなり、失意のまま帰宅したボリスに辛うじて残ってくれていた執事が来客を告げる。

 かつての婚約者の兄である男。


「アルフ、どうして」

「酷い顔だな。まあそうもなるよな。妻もその実家も犯罪者。伯爵家は事業がまともに回らない状況。子供は全員お前の子ではない、だったか」


 同じ伯爵を継いだ者同士だというのに、片や冴えない様子の男。片や質のいい生地で仕立てられた服を着こなした立派な男。どうしてこんなにも違うのだろうとボリスは考えるも答えは見つからない。

 辛うじて整えられている応接間、元婚約者の兄であるアルフレッドの向かいに座ったボリスは優雅に紅茶を飲むアルフレッドを見る。絶縁していたはずなのに何故この家に来たのか。

 問い合わせをした時は回答をくれなかったのに。


「お前は政略的な婚約ではないと聞いていたのだろうがそれは違う。実際の所は政略結婚だ。お前の家はあの当時少しばかり事業的に立ちいかない状況で、俺の父が金銭支援、事業支援として職人を派遣するようになっていた。父は前伯爵に大層世話になっていたというのもあり礼の意味でもあった。だが子供たちにその状況を告げるのは酷だと思い、成長して婚約の事実を告げるつもりだったそうだ。だがお前は俺の妹、ミシェルとの婚約について話題に出ると嫌そうに避けるなり逃げたそうだな。その所為で話が何時も出来ないと言っていたな」


 アルフレッドの表情に親しみは一つもない。そうだ、ミシェル。元婚約者の名前。思えば彼女の名前を言葉にしたことは殆どなかった。精々、義務的なメッセージカードを書く時に記すだけ。偶に忘れることもあった。結婚してからは元婚約者とは思っても名前を思い出さなかった事に違和感を覚えなかった。


「前伯爵は知識はあった。だがそれを実行するだけの職人を集める伝手が無かった。だからその話を聞いた我が父が協力を申し出た上、資金提供もした。婚約してお前とミシェルが婚姻をすれば、職人はミシェルの持参金の一部として契約の更新をするはずだったが、それを全て無に帰したのはボリス、お前だ」

「何故、言ってくれなかった」

「はっ。お前が我がワンベルト伯爵家を、何よりもミシェルを蔑ろにした結果だろう。前伯爵はお前にミシェルを大事にするように言ったはずだ。だがお前はあの女に篭絡された。言っておくが、お前の不貞の事をワンベルト伯爵家は知っていた。だがミシェルはそれらを飲み込んでお前と婚姻するつもりだった。だが、お前は浅はかにもミシェルに冤罪で瑕疵を付けようとしたな」

 

 十年前の婚約の白紙撤回。だが、ボリスはミシェルに傷をつけて婚約を破棄するつもりだった。解消すればいいだけの話なのに態々破棄しようとしたのは、ミコラがミシェルよりも優れているから、結婚するにふさわしいからと周囲に認めさせるためだった。

 今思えばなんという愚かで浅ましく非情な考えだろう。だがあの時はそれが最善だと思っていた。


「前伯爵が代替わりするまでは支援は継続する。だが、代替わりと共に終了するとしたのは前伯爵と我が父だ。子作り出来る位だ、成人した人間として自分でした事の責任は自分で責任が負えるだろうと助言したのは俺で、領民に罪はないので備える為の準備期間を設けるようにしたのはミシェルだ」


 ボリスはアルフレッドを呆然と見つめる。

 彼の言葉を脳が理解しようとしても上手く行かない。


「前伯爵は十年の時間をかけて領民に説明して回った。代替わりと共に事業は終了する。しばらく厳しい時期が来るから貯蓄をしておくように、と。お前とお前の妻だけがそれを知らなかった。その間に俺はお前の妻の実家を調べた。すると沢山出てきたよ、罪の証拠が。お前は知らなかったようだけれど、お前の妻の悪行はそれはもう水面下で広まっていた。手慣れた様子で男を誘う。平民は奴隷に落として売り払う。手に入れた金で豪遊。瑕疵の無い人の目をつくような女性に暴漢を差し向け、そしてそれを脅迫、恐喝の材料にする。最低最悪の悪女。被害者も訴えて処刑が妥当とされたそうだ」


 ボリスは何も知らなかった。今でも夫であるのに、妻が、ミコラが処刑される事になったなど知らなかった。何もかも知らない。何も分からない。何故。どうして。


「お前は何故、どうしてと思っているだろうが。お前がミシェルを捨ててあの女を選んだからこうなっただけだ。だがまあ、幸いにしてミシェルはあの後に良い出会いがあって嫁いでいった。リトランド王国の侯爵家の嫡男に見初められたんだ。そしてお前の両親もリトランド王国に移住した。前伯爵の知識は大変すばらしく、ミシェルの嫁ぎ先の指南役になって欲しいと頼まれてな。準備が終わり、代替わりを済ませ、こちらでのすべきことを全て終わらせた後にあちらへ移住した」

「リトランド王国……俺の両親も?」

「そうだ。お前に何も言わずに行くことを最後まで悩んでいたけれども、どうしてもお前の事を許せなかったそうだ」

「許せなかった?何を、許せなかったって言うんだよ」

「お前は何故円満に婚約の解消をしなかった。ミシェルに冤罪で傷をつけようとした。前伯爵からも何度も我が家との関係を考えて欲しいと言われたのに。こちらだって解消をするなら別の方法で契約の変更をする事も可能だった。だが、お前が選んだのはミシェルを貶め傷つける方法だった。俺達が友人関係だったのは親が友人関係だったからだ。人間関係をお前が好き勝手に壊していいと、本気でそう思ったのか?」


 元は親が知り合いだったから関係が出来た。子供同士が友人だったから親が仲良くなったのではない。ボリスの父の面子など当時のボリスは全く考えてもいなかった。ミコラをどうやって幸せにするか。完璧で傷一つない状態で迎え入れるかしか考えていなかった。家の事も人間関係も、ミシェルの事も何もかも考えず。むしろミシェルに至っては子爵家より迎え入れる為に貶めてミコラをより良く見せようとしていた。

 それらの積み重ねが今に至るなど、何も考えずに。

 ミコラの腹に子供がいたから結婚するしかない状態にした。だから相手の家の調査などしていない。少なくともボリスはしていなかった。


「すべてはお前が招いたこと。ワンベルト家を侮り貶め、ミシェルを蔑ろにした結果だ。マッケンベルグ子爵家の犯罪に関して、俺達はある程度は把握していた上で前伯爵夫妻がリトランド王国に移住したら密告しようと思ったが、その前に奴隷にさせられた平民が逃げ出して露呈した。この国で奴隷制度なんてない。なのにマッケンベルグ子爵とミコラは平民を攫っては暴力と恐怖で隷属させ、従順になったところで奴隷制度のある他国の奴隷商に売って金にしていたそうだ。トマンソン伯爵家に関しては前伯爵が徹底して領民管理をしていたから手を出せなかったらしいが、ミコラという女がワンベルト伯爵領の領民に手を出そうとしていたそうだ」


 人身売買も奴隷も全ては重罪だ。平民を守るのが貴族であって、その平民を食い物にして人権を奪い取る事は許されていない。他国では奴隷制度があってもこの国では認められていない。それを義父と妻がしていたという事実にボリスは愕然とする。


「それらは全てマッケンベルグ子爵領で行われていてトマンソン伯爵領ではしていなかったからお前が犯罪に加担していなかったと見做されている。だがな、お前がもっとマッケンベルグ子爵家と交流をしていれば違和感が見つけられたのではないかと周りは思っている。十年だ。十年という歳月でお前は本当に何も気づいていなかったとするならば、人を見る目も無ければ些細な違和感にも気付かない男だったと周りに知らしめた、という事になるな」


 一方的なアルフレッドの言葉に反論することも出来ない。ボリスはこの十年何をしていたのだろう。父の手伝いで書類などの作成に携わっていたが、重要な契約に関しては父しかしていなかった。そう言う関係からは遠ざけられていたと何故気付けなかったのだろう。

 ミコラの実家であるマッケンベルグ子爵家の悪辣非道な行いなど何も気づいていなかった。子爵家に行けば常に歓待されて、だが領地を回るなどしたことが無かった。屋敷のある周囲はどこも綺麗で時折見る人々は満足そうな顔で。でも、そこから離れた場所はどうだったのだろうか。

 ワンベルト家に通っていた時はアルフレッドと共に領内を馬で巡った事がある。遠出をしながらアルフレッドは領民と触れ合い状況を確認していたりしていた。彼は何時でも若様と言って歓迎されていたし、ボリスもお嬢様の婚約者として受け入れられていた。


「お前がミシェルとの婚約を不満に思っていた事はワンベルト家では誰もが知っていた。当たり前だ。婚約者なのに二人きりで会った回数は少ない。デートに誘う事も無ければ手紙も送って来ない。誕生日のプレゼントは妹の好みとはかけ離れたもの。一度、俺も交じって参加した茶会でミシェルは希望を告げたが実際に送られたものは全く違うもの。お前が用意したんじゃなくて使用人に用意させたのだろう。しかもミシェルの話を全く聞いてないというのがわかった。俺が同席して聞いていたんだからな。だから、お前が解消を言い出せば受け入れるとミシェルも言っていた。こちらから是非にと申し出た婚約だ。お前が言えばいつでも解消して希望する女と結婚できたというのに、お前がしたのは一番最悪なことだったな」


 知られていた。何もかも知られていた。その上でボリスが望むのであれば解消出来る状況にあったという事に衝撃を受けた。ただ一言、解消したいと言えばよかったのに。

 婚約の破棄を申し出たのはミシェルと二人の時だった。責め立てるようにミシェルを罵倒して婚約を破棄すると叩きつけて。そして白紙撤回になった時にはすっきりとしたものだ。ミシェルと婚約していたという経歴など無かった、という事になったのだから。

 だが、それはボリスの為ではなく全てはミシェルの為なのだろう。ボリスというどうしようもない男と婚約していたという事実を抹消させたのだ。両家共に。

 そのミシェルは、あのリトランド王国に行ったという。大陸の最西。黒魔の森と言われる広大な樹海によって他国と分断された上、高い山脈がぐるりと海岸線と陸地を分けるように囲んでいて、海に繋がっている場所はただ一か所だけ。しかもそこは岩礁があり複雑な水流をしている為、正確なルートを通らなければ船は大破するとされている。

 何よりもリトランド王国を有名にしているのは、この大陸で唯一魔法を日常的に使う国という事だろう。リトランド王国の人間が他国に嫁いで子供を産んでも、魔法が使える子供は殆ど生まれない。というのも、リトランド王国では取り囲んでいる山脈の内側だけ魔力の元になる魔素と呼ばれるものが充満している。濃厚で濃密な魔素を受けて育った人間の体には魔力変換機能となる受容体が存在している。だが、それは胎児の頃から作られるもので、リトランド王国以外では受容体が作られない。

 逆に、魔力を有していない他国の人間がリトランド王国に行き、リトランド王国の人間と結婚して子供が出来れば、子どもには受容体が出来て魔法が使えるようになる。その為、リトランド王国の人間は他国の人間を婚姻相手にするのも忌避されていないという。

 そしてリトランド王国最大の特徴は、優秀な人間を積極的に迎え入れる代わりに、外交を結んで魔導具を購入する権利を与えるのだ。争いになるような物ではなくて、日常的に使えるものが多い。魔石と呼ばれる魔力を帯びた石をはめ込み、ボタンを押したり、つまみを回せば使えるような日常生活用の魔導具は人々の生活を変えると言われている。

 それまで火をつけるのだって大変だった調理室の竃は、大型魔導具を設置すればつまみをひねるだけであっという間に天板が熱くなる。しかも直接火が出ない設計になっているので火事の危険性も減る。

 リトランド王国では平民ですら魔法を使えるので、こういった他国に売り渡すような製品を大量に作るのはそこまで難しくないという。様々な国と取引をして、しかもリトランド王国でしか作れないという点で独占販売しているが、王族や貴族に売るのは高級志向のもので、平民用のは簡素で複雑にされていないものとして差別化を図った上で、値段も分けているので普及するのはあっという間だった。

 だが、この国ではこれまでリトランド王国と関わりが無かった。

 ミシェルがリトランド王国の侯爵令息に見初められ、しかもトマンソン前伯爵の事業立案が画期的でそれを指南する為に引き抜きたいとリトランド王国から打診されれば王国としてはミシェルはともかく、トマンソン前伯爵夫妻の移住を認めるのは当然だった。

 希望する使用人を連れて旅立った両親とは二度と会うことは無いだろう。向こうからこちらに来る事は出来ても、こちらからリトランド王国に行く方法はほぼない。

 リトランド王国とのやり取りは主に三種類。

 一つ目が王城に設置されることになる転移門。これは許可を得た者だけが使える仕組みになっていて、申請してリトランド王国から許可が出れば通過してリトランド王国に行くことが出来る。

 ただし使用代金を支払わねばならずそれは高価なものだ。国からの正式な使者であったり、それこそ婚姻や招聘のような形の場合だけ使用代金は免除される。もしくは特例の場合である。

 二つ目は、リトランド王国が取引を開始した国に派遣する商会経由。この商会は船を持ち、あらゆる国の海に接する場所と王都の城下町の二か所に店舗を持つ。商船を有していて、転移門よりは安価だが代金の支払いは必要で、やはりリトランド王国の許可が必須である。

 三つ目は、黒魔の森を抜ける事である。森を抜けるのに使用料などはないが命懸けになる。黒魔の森には獣人やエルフなどの種族や魔獣などが住んでいる。更に妖精が人間を惑わせるいたずらをしたりして、彷徨ったあげくに命を落とすなどよくある話だ。

 どれだけボリスが両親に会いたいと願っても叶うことは無い。今のトマンソン伯爵家に使用料を払う事は出来ず、黒魔の森を抜けることも出来るわけがない。

 ボリスは幼い頃からの婚約者を捨てて愛を選んだ。

 だが、結果として今の彼は不幸になっている。

 もしも、もしもミシェルを選んでいたらどうなっていたのだろうか。きっと情熱的な愛は抱けなくても、親から捨てられることは無く、領地は更に栄えていただろうし、アルフレッドとの友情だって続いていたはずだ。

 ミコラは社交界で華やかに装っていた。だが、彼女は仕事をしているボリスを他所に他の男と体の関係を持ち子を成した。子供たちと血が繋がっていないというのを証明したのはリトランド王国から持ち込まれた「血液検査」というものを行う魔導具らしい。血液というのには型というものがあり、またそれぞれ個々を識別するものがあるそうだ。

 ミコラがあまりにも不特定多数の異性と体の関係があった事と、禁止薬物を摂取していた事もありボリスも血液を調べられた。更に妊娠中の薬物使用は子供にも悪影響という事で三人の子供も調べられた結果、誰一人としてボリスから生まれる型をしていなかったという。

 子供たちに薬物の影響はなかったけれども、実子ではなかったという事実が重い。


「今回の事でトマンソン伯爵家は関与はしていなかったにしても十分な醜聞だ。そして領地経営を続けて行くのは最早困難だろう」

「ああ……そうだな」


 アルフレッドの言葉はどれも正しい。ミコラが社交界に出ていた時は彼女は華だった。だがそれは多くの貴族を貶めたからこそ出来た事ともいえる。美しい令嬢達はミコラによって深い心の傷を負わされた。

 ミコラの悪事を知らなかったボリスは愚か者としてこれから長い年月笑われ続けるだろう。誰かが復讐をしに来ても可笑しくはない。


「トマンソン伯爵家の爵位を今の段階で返上するのであれば、ミコラ夫人が結婚後に犯した多くの罪に対しての賠償金の支払いをトマンソン伯爵家に請求するのではなく一括してマッケンベルグ元子爵家に乗せるそうだ。だが、返上せずに継続する場合はトマンソン伯爵家に賠償金の請求が行われる。未だにお前との婚姻は継続しており、ミコラ夫人はトマンソン伯爵夫人だからな」


 爵位を返上して平民になるか、それとも貴族のまま莫大になるだろう賠償金を支払うか。だが、賠償金を支払うにも金銭は無い。罪を犯したのは妻だが、妻を管理している夫が御せなかった責任は大きいという事だろうか。ボリスは犯罪に関与していないと証明されたけれども、犯罪者を養ってきていたのだ。

 被害者からすれば内情はどうあれ「ミコラ=トマンソン」はトマンソン家の人間になっている。よって、ミコラが支払えないのであればトマンソン家が支払えとなるのは当然のことだ。

 それにしても、何故ここまでアルフレッドは詳しいのだろう。

 ふわりと浮き上がった疑問をアルフレッドにぶつければ、ここに来て漸くアルフレッドの表情が変化した。まるで嘲笑うように。


「お前がミシェルと我がワンベルト家を裏切った時から報復してやろうと思った。ミシェルが止めたから我慢したが、それも前伯爵夫妻と領民の為だ。だから代替わりを済ませて彼らが無事にリトランド王国へ移住するまで待っていた。契約も終わるし、領民たちだって了承済み。無理だと思った者はワンベルト伯爵領に移動している。お前はそれすらも把握していなかっただろう?その間に俺は証拠を集めながら、爵位を継ぐまでの間は王宮に勤めて研鑽を積ませてもらった。宰相閣下の元で働けるようになったのが八年目。嫡男でありながら何故と聞かれたさ」


 決別してからアルフレッドがどのような生き方をしていたかをボリスは知らない。同じ嫡男として似たような事をしていたのだろうと思っていたが全く違っていた。

 報復、という言葉に体が震える。あの時の出来事をアルフレッドはずっと許していなかったのだ。

 領民が移住して行っている事も知らなかった。全ては父が抱え込んでいた。父は知っていた。知っていて、それら全てをボリスに引き継がなかった。一年もすれば破綻すると知っていたから。


「俺は正直に答えたよ。リトランド王国に嫁いだ妹の身に起きたことを。そして調べているマッケンベルグ子爵家の事も。あまりにも非道すぎて、罪が多すぎて調べるのにワンベルト伯爵家では限界だと言えば、悪質過ぎるという事で宰相閣下の元で新たに調査が始まった。他国に奴隷として売られた者達の中にはとある貴族の庶子もいたらしい。行方知れずになって数年。その貴族は諦めていたそうだが、宰相閣下はそれも調べ上げた。時間を随分と要したし、その間にもマッケンベルグ子爵家は犯罪を重ねていく。最悪な状況にならないように手は回したし、恐喝なども証拠を取って被害者のケアだって行った。そうして漸く全ての証拠が集まったのが二年後」


 他家を調べてどうにかしようとしても時間も金もかかる。そして人手だって足りない。だからアルフレッドは権力がある者の目に止まるように必死に這い上がっていったのだという。そして宰相閣下の目に止まり、ついに国として動いてもらえるようになった。

 それだけの年月をかけてでもアルフレッドから復讐心が消えることは無かったのだという。


「お前が幸せそうにあの女と社交界に出ていると聞く度に殺意が生まれた。復讐心が途絶えることは無かった。とは言っても最初からはマッケンベルグ子爵家の犯罪には気付かなかったさ。だが、あまりにもおかしすぎたんだよ。あの領内は端に行けば行くほど荒れ果てている。ワンベルト伯爵領と隣接している所だってあるが、貧しい者が多かった。それなのにマッケンベルグ子爵家はその地位に見合わないほど豪遊をしている。おかしいと思うに決まってるだろう。お前は何も気づかなかったが、父も俺もおかしいと思って調べ始めた。その間にどれだけの犠牲者が出たのかと思うと苦しくなるほどだ」


 ボリスは何も知らなかった。

 自分の幸福に酔いしれ、愛に突き進んだのは正解だと思っていた。間違いのない道。伯爵になって権力を有すればより一層幸せになれると思っていた。

 その間に多くの人間が不幸になっていたというのに。


「爵位返上の話は宰相閣下から出された提案の一つだ。恩情とも言えるな。このまま放置してもいいと俺は思ったが、少しでも早く領民を解放してやりたいという気持ちで話している。お前の選択がどうにせよ、早めに結論を出せ。そうでなければ多額の賠償金請求がトマンソン家に来る。それだけは覚えておけ」


 言いたいことを言い終わったアルフレッドは、ボリスとの話は終わりだ、と立ち上がって挨拶も無く出ていく。使用人を部屋から追い出していてよかったと思う。

 一人取り残されたボリスは延々と考え続けていた。

 不意に思い出したのは、元婚約者の色合い。アルフレッドは銀髪というにふさわしい淡い色彩だったが、元婚約者は青紫がかった彼よりも濃い銀髪で、灰色に近い色合いだったこと。

 その髪の色が気に食わなくて、アルフレッドが少しだけ席を外した時に馬鹿にしたのを思い出す。言われた彼女の表情は覚えていない。ただ、その時からずっと変わらない笑顔を浮かべ続けていた。

 今ならわかる。あの瞬間から元婚約者は全てに対して諦めたのだ。婚姻しても解消してもどうでもいい位の存在になっていた。だからボリスは一度たりとも元婚約者の素の表情や感情を見た事がないという事実に今更ながら気付かされた。

 十年前のあの日に選んだ道。愛を選んだ男の末路。後悔してももう遅い。




 ボリスは国に爵位を返上した。子供たちはワンベルト伯爵領にある施設に預けられることになった。アルフレッドがそのように手配したのだという。ミコラが産んだ子供の父はいずれも明確にはなっていないが、ミコラの子供という事で恨まれて襲われる可能性があった為である。アルフレッドの元できちんと保護する事で被害を受けないようにしてくれるという。

 ボリスは多少のお金の持ち出しを許された上で平民になった。賠償金請求が来る前に対応したので家財などの差し押さえは無かったが、使用人たちに給与支払いをしなければならなかった。彼らに紹介状を書く事は出来なかった。

 紹介状というのは新たなる屋敷に勤める際、前の屋敷の当主から保証されているという事になるのだが、トマンソン伯爵家は無くなる為、信頼されないという事になる。

 使用人たちの恨みのこもった視線が辛かった。だが、彼らもまた一度ワンベルト伯爵家の分家に雇われることになった。そこからある一定期間労働した後、紹介状を書いて新たなる家に勤めるという事になった。ただし、そのまま継続して働く事だけは出来ないと言われたそうだ。それに納得した使用人たちはそちらに行き、これを機に辞めて家に戻る者は給与だけ受け取って去って行った。

 家財は使用人たちに支払う給与になり、手元に残された僅かな、とは言っても平民であれば十分に生活出来るだけの金を持ってボリスは屋敷を出た。生まれ育った屋敷を手放す事になり、しかも貴族から平民になる。せめてもの救いは持ち出せる金があった事だけだろう。

 これからどう生きるべきなのか、ボリスはわからなかった。だが、少なくともこの地に居続けることは出来ないしワンベルト伯爵領に住む事も出来ない。遠く離れた場所で平民として生きて行かなければならないのだ。

 爵位返上時にミコラとは離縁となった。平民は貴族よりも結婚も離縁も簡単で、ミコラは既に平民扱いであるし、ボリスも平民になったので実に処理は簡単だった。

 一人になったボリスは生まれて初めて乗合馬車に乗り込み、出来るだけ遠くに移動する事にした。

 平民の生活を知らない。何もかも知らないけれども、それでも多少は同情してくれた使用人たちから色々教わって最低限の事だけは出来るようになったボリスは生きていく。

 未だに、何故、どうしてという気持ちは消えていない。後悔だってし続けている。

 愛を選んだ男の中で成功する者はいるだろう。だが、人を不幸にして手に入れた愛は必ず報いが来るのだと突き付けられた。


 乗合馬車の中では軽やかに語る夫婦もいれば、静かに顔を伏せている男もいる。酷く揺れる椅子に慣れていない尻が痛くなったが文句は言えない。


 全てを失った男は、後悔を胸に抱きながら生まれ育った地を離れた。

◆主人公のボリスにイラっとしたりムカついたりしたら大成功です。


◆ボリス=トマンソン

基本的に自分が悪いとは思っていない。自分が裕福な貴族のままでいたかったなら、元婚約者と結婚して、ミコラを愛人にすれば良かったのかもしれないとか遠くの領にある安宿で思ったりしてる。

後悔はしても反省はしていない。そんなことが出来るような人間なら最初からちゃんと婚約者と交流するし、合わないなら親に解消を申し出るし、冤罪でっち上げで元婚約者に傷をつけようとか思わない。

真正のクズ。どうしようもない人間。

タイトルの「捨てたムーングレイ」は「元婚約者がボリスを捨てた」という事。救済するつもりは一切なかった。ただ、前伯爵夫妻と領民の事しか考えていない。ボリスは生きていようが死んでいようがどうでもいい。


恋愛カテゴリに入れていいのかとか思いますが、一応主人公とその妻の恋愛要素部分を少しは入れたので……一体どのカテゴリに入れるのが適切なのだろう。

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むかっとはしませんでしたが、芒洋と生きてきたツケと僅かな悪意は応報するんだなって思った。 実に小説らしい。 現実にはなかなかこうはならないだろうから。 一生、手に入ったはずのものを失ったのは自分のせい…
[一言] クズはクズなんですが、どちらかと言うと哀れで愚かな男との印象が強かったです。
[良い点] すごく面白かったですし、復讐もされてスッキリ! 義両親がクズ男を擁護しなかったのも良かった。 人物の描写がとても上手で、クズだけど極悪人という程でもない、 でも自分勝手過ぎる主人公の男に…
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