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拾った泥んこわんこの王子様、(肉球で)おっぱい触った責任をとる! と、宣言されても困ります!!  作者: 礼(ゆき)
出会い編(キースサイド)

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おばかなわんこ⑧ ~作戦を練るわんこ~

「(肉球で)触った責任はちゃんととるから」

「責任なんてとらずに結構です。あれはお互いに不可抗力なのだから」

「じゃあ、正直に言おう。(肉球で)触った感触を忘れられないんだ」

「忘れてください。(肉球で)触ったといっても、あれは数のうちに入りません」

「アリス。君は着やせするタイプだろう」

「唐突に何ですか!」

「まさか、あんな美しく丸いボールを目の前にして、一般論として(子犬ならば)ボールで遊びたいと思うものじゃないか。しかも二つもあって」

「変態ですか。そんなところをまじまじと見るなんて! 私はただ(子犬を)抱いていただけだと思っていたのに!!」

「(子犬の)僕の視界一杯に、押し付けるように見せてきたのは君だ。目の前に、二つの豊かなボールを見せられたら、(肉球で)触りたくなるに決まっているんだ。

 僕はもう一度、(子犬じゃなく)ちゃんと、君と、一緒に寝たい」

「結構です」

「君だって僕(の肉球)を、もみもみしていたじゃないか。もう一度、(肉球に)触りたいと思っているんじゃないのか」

「そりゃあ、肉球それは格別魅力的ですよ。でも一緒に寝るとなれは、子犬それ男性これは違います!」


 私たちの会話を断つように、ぱんぱんと手が打たれた。

 私たちははっと正気に戻る。


「殿下、痴話げんかは後ほどに」


 魔法使いに、諫められる。

 さすがに周囲を見渡せば、生温い目線に晒されていた。


「ちゃんと話が伝わっていなかったのは、我が国の広報がいたらなかったからです。申し訳ありません、殿下」


 王の近くに座っていた高官が笑いを噛みつぶしながら頭を垂れる。


 所詮、私は狼の獣人。

 お月さまには弱いのだ。

 些細なことは気にすまい。

 

 それよりも、アリスが心配だ。彼女の方が、この状況にショックを受けている。

 私は彼女を守る意味でも毅然と言った。


「気にされないでください。彼女は、色々あって、狼狽しているのです。

 突然隣国に嫁げと言われて、正気を失うのは、とても正常な反応だと私は思います。

 彼女については私が誠意をもって応じます。

 皆様方は、彼女がつつがなく嫁ぐための準備をお願い致します」


 私は頭を垂れた。

 アリスのためなら、このぐらいの行動を選ぶのは当然だ。


 会議はそれでひとまず終了した。


 アリスには学園に戻ってもらい、私は魔法使いとともに、国へ知らせるなどの雑務に取り掛かることにした。


 なにより大事なことは、アリスの気持ちをこちらに向けるにはどうしたらいいかである。




 私と魔法使いは執務用の机や応接セットがある居室と寝室が隣り合う客室に通された。

 

 私と魔法使いは応接セットのソファに座り、額を突き合せた。


「魔法使い。どう思う」

「どう思うとおっしゃられますと?」

「アリスのことだ。このまま、嫁いできてくれると思うか?」

「王の勅令まで出ています。彼女に拒否することはできかねるでしょう」

「だよな。問題は……、彼女が私をどう思ってくれるかということだ」


 魔法使いは軽く目を見開いた。

 

「キース王子。少し、私はあなたを見直しましたよ」

「そうか?」

「ええ、私はもっとあなたがチャランポランだと思っていましたからね。それこそ、子犬の愛らしさで女の子を引っ掻けてやろうと考える低俗な男だと思っていましたから」

「そりゃあ、最初はそう思ったさ。まさか雨に降られるとは思っていなかったしね。

 しかし、雨に打たれ食べる物もろくに食べれずに放浪し、空腹のなかでミルクと一切れのハムは私の心に染みわたったのだ」

「王子……」

「そこで、私は考えたのだ。

 夢も見た。だから、これは啓示だ。

 私は彼女を称えるために、双子月を崇め、山羊の乳と豚肉を奉納する社を建てる」


 途端に魔法使いは不可思議な表情を浮かべた。


「殿下……。それを夢で見たと……」

「そうだ。彼女を我が国に迎え入れ、彼女の尊さを称える社を建てるのだ。そうすれば、少しは気持ちが変わるのではないか」


 魔法使いは皺を寄せた眉間をもむ。

 私はなにか、おかしなことを言っているのだろうか。


「殿下。その双子月を祀るというのはどういうことですか」

「ああ、それは比喩だ比喩。つまりはこれだよ」


 私はアリスのたわわな双球を思い出しながら、開いた手の指を少し折り曲げ、胸に掲げて見せた。

 魔法使いが大仰なため息をつく。


「そのような夢を見たというのは分かりました。

 いずれは、国に迎え入れ、ご婚礼を済まされた後に、ご相談したうえで、お決めになればよろしいかと思います」

「しかし、私はアリスに無理強いはしたくないのだ。

 私は彼女を好きだし、彼女からも好かれたい」

「殿下……。あなたが一人の女性を心をそれだけ砕かれていることは評価に値します。

 成長なさいましたね」


 滅多に褒めない魔法使いに褒められ、私はちょっと照れくさくなる。


「しかしですね。

 社を建てるというのは早急すぎます。彼女の心を振り向かせたいならば、ですがね。

 このまま、何もしなくても、彼女は外堀を埋められ、国に連れ帰ることはできるのです。殿下が行動しようとしまいと、結果は変わらないのですよ。

 なにもしなくても彼女は殿下のものになります」

「それが嫌なのだ。私はアリスが好きだし、アリスにも私を好きになってもらいたい」

「そうですね。

 恋愛において、相手の心がこちらに向くのは奇跡に近いことです。それは魔法使いの魔法でどうにかできるようなものでさえありません」

「魔法使いにもできないことはあるのか。意外だな」

「人の心が通じ合うということは、それぐらい、奇跡的で、尊いものなのですよ。しかし、その奇跡と尊さを手にするには、まずは、好きな人を選ばなくてはいけません。相手がどうであるかよりも先に、自身が相手を好きであることが大切なのです」

「……深いな」


 私は身を乗り出し、魔法使いの言葉に耳を傾けた。


「勉強も、それぐらい熱心にしていただければよろしいのですがねえ……」


 やれやれと魔法使いは肩をすくめる。


「それはいいだろう。今は大事なことは、アリスのことだ」

「そうですね。まずは、彼女の背景を整理しましょう。そこから、彼女のしてほしいこと、彼女に示せる誠意を模索します。

 良いですか、殿下。

 物をあげることも確かに誠意を示す行為になります。

 しかしですね、相手へ真心を贈りたいなら、相手の真に欲することはなにかということを考えましょう」

「わかった」

「では、殿下が知りうる、彼女についての情報を教えてください」


  




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