うんち犬
ぷりーーーーん
ぽとり。
パグ犬のらいたがさんぽの途中、悲しそうな顔をしてふんばってコロっとしたうんちをしました。飼い主のこうた君はそのうんちを見て、
「らいたが元気なうんちをしたなぁ!」
と喜んでスコップを掴んでうんちを掃除しようとしました。
するとらいたのうんちはブルブルふるえるとぽこんと耳と足をだして最後に目をパチリとあけてらいたにそっくりな犬のカタチになって
「わん!」
となきました。
こうた君は「このうんちはいささか元気すぎるぞ!」とおどろきました。
らいたは犬になったうんちに興味津々です。クンクンとにおいをかいでらいたとおなじにおいがしたので、そのうんちをとても気に入りました。
らいたはよろこびのあまり
「わん!」
となくとうんちも
「わん!」と喜びました。
らいたとうんちが仲良くなったのを見てこうた君は
「このうんちも育てたいなぁ」と思いました。
うんちの目はかわいらしくうるうると輝いていました。こうた君はあまりのかわいさに頭をなでたいと思いましたが、そもそもはうんちであることを思い出してなでようとしてた手を引っ込めました。
それでもこうた君は犬になったうんちがかわいくて家につれて帰りたいのでうんちを入れるビニールぶくろの中へ入れて帰ろうと思いました。
地面に大きな口を広げてビニールぶくろを置くと、犬になったうんちはおとなしくふくろの中へ入っていきました。
そうしてこうた君はらいたとうんちといっしょに家に帰りました。
玄関をあけて「ただいま!」と言うと家の奥からお母さんが「おかえりなさい」と言って出てきました。
こうた君は「らいたが元気なうんちを出したよ!」とお母さんに伝えてビニールぶくろの中を見せました。中でうんちが「わん!」となきます。
お母さんはそれを見ると「あらまあ」とおどろき、「元気だけれど、お母さんが思った以上に元気すぎるね」と言いました。
「そうなんだ。だかららいたと一緒に飼ってもいい?」
「でもこの子はうんちでしょう?何を食べるの?」
「それはよくわからないなぁ」とこうた君が困っていると、ビニール袋からうんちが飛び出してかなしそうな顔をして踏ん張るのでした。
ぷりーーん
ころん。
「あ!うんちがうんちをしたぞ!」
「あらあら大変大変」
こうた君とお母さんがオロオロしていると、うんちがしたうんちはブルブルとふるえると耳とあしを出すと小さな目をパチリとあけました。うんちがしたうんちも犬になってしまいました。
小さなうんちは「きゃん」となきました。
「これは大変なことになったぞ」こうた君はおどろいて思わずつぶやきました。
お母さんも「こまったわね。こんなにカワイイとトイレに流すわけにもいかないわね」
「トイレに流すなんてかわいそうだよ!」こうた君はお母さんにおこりました。
「流さないよ。こんなにカワイイんだもの」お母さんはこうた君の頭をなでました。
「とりあえずお庭に連れて行ってあげなさい」お母さんはこうた君に言いました。
こうた君はらいたとうんちたちを庭に連れて行くと、らいたとうんちたちはうれしそうに庭を駆け回るとやがて庭の隅っこであなほりをはじめました。最初はみんなでやってましたが、やがてらいたはあきたようで、うんちたちがいっしょうけんめいに穴を掘ります。
やがてポッカリと庭に穴ができるとうんちたちはその中に入り込むとスヤスヤと眠ってしまいました。その様子を見てこうた君は「疲れていたのかな?」と思いました。こうた君はらいたを家の中に入れて、うんちたちの上に寒くならないようにタオルをかけてあげました。
そうしてその日は終わって次の日の朝、こうた君はらいたと一緒に庭にうんちの様子を見に行くと、こうた君は驚きました。うんちたちは犬のすがたでは無くなっていて、うんちになっていたのです。
こうた君はお母さんを呼ぶと、お母さんも驚いていました。しばらくお母さんは考えていましたが、やがてこうた君に「きっとねごこちが良すぎたのよ」とこうた君に言いました。
「悲しい?」お母さんはこうた君に言いました。
「悲しいよ。もっとうんちと遊びたかった」
「そうね。でもうんちたちはこの場所の居心地が良かったのだと思うのよ」
「うん。そうかもしれない」
こうた君の足元でらいたも「わん」となきました。そうして悲しそうな顔をするとふんばってうんちをしました。しかしらいたのうんちはもう犬にはなりませんでした。
「もう犬にはならないんだね」
こうた君はらいたのうんちをスコップで掃除しながらしょんぼりと悲しく思いました。
それから1ヶ月ほど経ちました。
こうた君は「お母さん!」と庭からお母さんを呼びます。
お母さんが庭にくるとこうた君が庭の隅っこ、ちょうどうんちたちがすやすや眠っていたところに小さな葉っぱが開いていました。
「うんちが栄養になって芽が出たのね」とお母さんが言いました。
「なんの植物だろう」こうた君がぎもんに思います。
「うーん、わからないなぁ」お母さんは言います。
「何しろうんち犬が栄養だもん。もしかしたら不思議な植物かもしれない」
「そうだね」こうた君がうなずきました。
らいたも「わん」となきました。