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プロローグ

 夢を見た。

 木漏れ日が差し込む森の中に俺はいる。

 何故森の中にいるかは、わからない――正確には、“思い出せない”。そこにいるからには何か理由があるはずだが、全く思い出せない。


 ただ、これだけはわかる。これは思い出さなければならない記憶だ。


 夢の中での俺は歩き出した。道が道としての役割を終えてから幾年か経ったであろうその跡を辿りながら。

 その不自然な程朽ち果てた道の先には、小綺麗な館が建っていた。一面硝子張りの部屋の中に女。そして、館の前の草に水をやってる男。

 俺は、その水やりをしている男に近付いた。右手に刃物を生成しながら。

 男が俺に向かって何かを言っている様だったが、何て言ってるかはわからない。自分の声も含めてくぐもって聞こえる。

 突如、俺は右手を振り下ろし――男を斬り伏せた。足元には男だったものが転がっていた。

 血溜まりにいる男にもう一刺しした所で、先程の部屋にいた女が何やら慌てているのが目に入った。夢の中だから声は思ったように聞こえなかったが、行動から見るに叫んでいるんだろう。

 俺はすぐさま女の胸に一刺しした。手に滴り落ちる血だけは、何故か温かかった。刃物から伝わる鼓動が、消えた。


 ――~♪


 俺はその場から去ろうとした時、後ろから歌が聴こえた――気がした。夢の中の俺は聞こえたんだろう。

 声がする方を振り向くと、木々の隙間から動く影が見える。それが段々と鮮明になって、子供の姿を形作った。

 そして同時に、血に伏した男を見るや否や、籠を地面に投げ捨てた。声にならない叫びをあげながら、その亡骸へと駆け寄る。

 それを見た俺は、あろうことか刃物を構え直し、子供に向かって走り出した。


 子供が気付き、振り向くよりも早く。

 背中を、胸を、刃物が貫いた。


 蜂蜜色の髪にベリージャムみたいな血が絡む。

 浅い呼吸を繰り返すそれを見て、俺は空へと飛び立った。


 最後まで、その子供の顔は見えなかった。

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