完璧主義者の誓い
夢を見ていた。とても楽しい夢。
空調を効かせた部屋は北極へと様変わりしたし、木を積み上げればそこには街ができた。
ひょろ長い落書きのような線もそれは確かに龍だったんだ。
時が経つにつれ夢は醒める。何ら哀しい事ではない。皆がそうなんだ。
次第にフィクションはフィクションと勘付き、それに気付かないものを馬鹿にしている。
「サンタはいつまで信じてた?」
「そんなもの端から信じてはいないよ」
そんなありふれたこと。
でも、確かに夢は醒めた。夢が醒めるにつれ空想は錆び付いた。
雲は甘くないし、砂場を深くまで掘ろうとマグマは出てこない。
そんな当たり前のことに気付くたびに空想は塗り替えられ現実と成り替わった。
創作を知った。世界はどんなに広いのかを知った。
自分自身の世界を覗きたかった。でも、そこに自分の世界はなかった。どこかで見たような設定も、
培った常識が、現実がそれを許さない。世界が世界で居れないんだ。
悲しいじゃないか。
世界を知るために学んできた現実が、世界を作ることを邪魔するだなんて。
虚しいじゃないか。
ただ世界を傍観するだけで、自分の世界がないだなんて。
世界に理はいらない。体系化された世界なんて詰まらないじゃないか。
原理不明の魔法だって、神だってきっといるんだ。
そこに、原理はない。ただ、たしかにそこにあるんだ。
世界は、もっと自由でいいはずなんだ。
どこにも完全はない。ただ、震えた線で、乱れた文で、不自然な色で、不完全な理論で、
作ろう。
世界はどこまでも広がっている。そうだ、どこまでも。それは無限にも等しい。
想像しよう。
新しい世界を。