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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

そして彼は、

ただ、知るために体験する、それだけだった。











そして彼は、屋上から足を一歩踏み出した。






















彼は、〇〇として、この世に生を受けた。


彼は、兄弟姉妹のいない、親子3人家族の息子として生まれた。


彼の親は、ごく平凡な性格の、ごく平凡な収入を持ち、それなりに彼を愛していて、それなりに幸せだった。


しかし小学の半ば頃から、彼自身は少し常識から外れていった。


というのも彼は、人一倍好奇心や探究心が強くなっていき、気になったことはなんでも目で、耳で、この身体で体験してみたいと考えるようになったのである。


彼は、人より頭が良くなった。


だが彼は、少し常識が分からなかった。


ある日は遠く離れた地のーーーを見たいと言い、またある日は〜〜について実験してみたいと言う。また違う日はそこらで連れてきた虫をバラバラにし、ある日は家に石や草を持ち込んでくる。


彼の親はこの彼の行動に少し気味の悪さを覚えたが、時に彼のわがままを聞き入れ、時にわがままを止めるように説得した。


それでも彼は、ただ、知りたくてたまらなかった。






彼は、高校生に成って自立し始め、自分の知りたいことを自分で確かめるようになった。


彼は、時折ひとりでに何処かへいってしまうことがあった。


ある休日に、彼は何か遠出をするような準備をしていて、親がどこへ行くのかと聞くと、その目的地はおおよそ新幹線か飛行機で行くような場所だった。


長期休暇中に、一週間以上も家に帰ってこない時もあった。


全て彼自身が考えている疑問を解くための行動だった。


彼の親は、何度も続く彼の行動に、段々と慣れ始めていた。











ある日彼は、唐突に『死』について考え始めた。


単純なこと、人は死ぬとどうなるのか。


彼は考えの中で、1つの矛盾に行き着いた。


それは、死んだ人の意識はどうなるのかを考えている時だった。


一般的には、死んだ人の意識は永遠に戻らないという。


彼はそこに少しの矛盾を覚えた。


意識を失った人は、意識を失っている間のことはわからない。


意識を失った人の意識が戻る時、その人自身にとっては、意識を失っている時間など、一瞬でしか無い。


しかし、死に、意識を亡くした人の意識は、永遠に戻らないという。


その人自身にとっては一瞬であり、また、永遠でもある。


彼には、この永劫と刹那の矛盾がどうしても解けなかった。


彼は考えた。


死んだら意識が戻らないのだから永遠に戻らないのだろう、というのはごく簡単なことである。


しかし、本当にそうなのか。


死んだ人の意識が永遠に戻らないと誰が分かるのか。


死んだ人の意識はどこに行くのか。


彼は考え続けた。


いくつかの人に何をそんなに悩むのかと訊かれたが、誰にも理解はされなかった。


彼は考え続けた。


別に理解してもらおうとも思わなかった。


自分が理解できればよかった。


彼は考え続けた。


彼は考え続けて、1つの結論を出した。


答えは出なかった。


答えを出すために、いつも通りのことをすることに決めた。


彼の考えは常識から外れていた。


その歪みは、少年の時よりも遥かに大きくなってしまっていた。


彼の考えは常識から外れていた。


知りたいことを知るために何でもした、何でもするようになっていた。


彼の考えはある意味、世界の常識であった。











ただ、知るために体験する、それだけだった。











そして彼は、迫り来る電車を見上げた。





















彼は、△△として生を受けた。


彼は、人一倍好奇心、探究心が強かった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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