国取り戦編
冷たい風が頬を撫でる。
「冬の夜は好きだ。空気が澄んでいて星がよく見える。満点の星空。この星屑のように一つ一つが輝きながらそれぞれがそれぞれを高め合ってこれからは生きていこう。」
兄さんは言った。
「ゴミとか屑とか言われる俺たちでも、いつかこの国をぎゃふんと言わせてやろうぜ。」
みんな、兄さんの言葉に勇気付けられ、雄叫びをあげている。カッコいい。ただ単純にカッコよかった。みんなをまとめる兄さんは輝いていて、それこそ夜空に輝く星のようだった。いつか俺も兄さんのようになりたい。俺は幼心にもそう思った。
「あーさーだーよーー」
聞き慣れた声で起こされる。明らかに年齢より幼く聞こえるその高い声は朝にはきつい。
「わかってるよ、うるさいな。」
「うるさいとは何だー!このあんず様が直々に起こしに来てやってるのだぞ!感謝したまえよー感謝ー!」
めんどくさいから無視して、食堂へ向かう。
「あーまたそうやって無視するー!そんなんでよく私たちの世代のdebrisのリーダー候補に選ばれるよねー不思議でしょうがないわー絶対俊介の方がいいってー」
「あっそ。別にお前の指示なんていらねーよ。」
「うわーみなさん聞きました?これが雅樹の本当の姿だよー。こんなのリーダーにしたらやばいって。」
無視して食堂へ向かう。
「まーた無視したー!!」
本当に朝からうるさいやつだ。同い年には思えないその騒々しさは明るくて元気があっていいとは思うが朝はやめてほしい。それにしても食堂は一旦外に出ないといけないってのがここの建物の難点だよな。冬は寒くて行きたくなくなる。今日の朝食何かな。
「おはよ!」
食堂の目の前で俊介と会う。隣には愛梨も一緒だ。この2人付き合ってどのくらいになるんだろう。もう2年くらいにはなったかな。2人とも優秀で俊介はイケメン、愛梨は俺たちの世代で最も美人、非の打ち所がない完璧なカップルである。
「おっす。」
「おはよー!朝から見せつけてくるね〜」
あんずのいじりに対して、愛梨は「やめてよー」と顔を赤くして俊介の影に隠れる。それをかばいながら少し微笑みながら、
「やめてやってよ。愛梨、いじられるの好きじゃないって知ってるでしょ。」
俊介は模範のようなイケメン対応であんずに言う。
「はーい。」
口をすぼめてあんずが言う。
「さっさと朝食食べようぜ。」
「そういえば、昨日は北の四帝定例会だったんだっけ。お疲れ。はじめて他の四帝に会ったんでしょ?どうだった?」
「どうもねーよ。みんな上から目線でやんなっちゃうぜ。」
「そりゃそうだよ。雅樹君は最年少の四帝なんだから。すごいなぁ。」
「すごくはねーよ。兄さんの方がなったの若かったし。」
「雅人さんは別格じゃん!12歳にして無所属で四帝に選ばれて、18歳でdebrisの創始者になって、今じゃ北の四帝序列一位でしょ!すごすぎるからあの人!」
「まーそうだな、兄さんには到底追いつけねーよ。それでも、今回の国取り戦でなんとか結果出してやるさ。」
「あと1週間か…不安と期待で最近やばいよ。」
「まーそう緊張しなさんなって!ピンチの時はこのあんず様がなんとかしてあげっからさ!」
「言ってろ。」
食堂に着くといつも通り賑わっていた。朝はいつもそうだ。仕事のある大人達は急いで朝食を食べ、言うことの聞かない子供達はそこら辺を走り回ってる。朝から元気で何よりだ。俺たちも早く朝食食べないと講義に遅れてしまう。俺たち4人は急いで朝食を食べ、その足で1限の講義に向かった。
「今日は来週から行はれる国取り戦の説明を改めてします。」
そんなの小さいからから聞いてるって。もう聞き飽きたわ。あんずは寝てるし。まー聞いとかないと廣瀬先生もかわいそうだから聞いとくか。
「えーまず、この国の防衛について復習していきます。この国の防衛は6つの護衛部隊によって担われており、それぞれ規模の大きさから順にイブ、エンド、凛翔会、フェアリーテール、テンペスト、debrisとなっています。それぞれの部隊は生活を共同で行なっており、一種のコミュニティとなっていて、18歳になるまでそれぞれの部隊の学校で護衛の術と一般教養を学びます。そして18歳になった者は正式に国に雇われ国の護衛をすることになるのです。しかし、護衛といっても様々で、戦闘部だけでなく、研究部、政治部、警備部、医療部などがあり自分に合った職業を選ぶことができます。そして、18歳になりそれぞれの部隊の学校卒業に合わせて国取り戦が開催されるのです。この国取り戦の結果次第でこれからどの職業に就くかを優先的に決めることができる権利を得ることができるという仕組みです。また、この戦いでの功績は各部隊の信頼を得ることにつながるため、規模の拡大に役立ちます。現在、規模では最下位の私たちはなんとしても今年は優勝してもらいたいのです。わかりました?みなさん!」
そう。この国取り戦は部隊の名誉をかけた戦い。そして、debrisは兄さんの世代が成し遂げた準優勝以来、万年最下位だ。そろそろ優勝しないと兄さんや先輩達に申し訳がない。今年は必ず優勝する。できる。俺たちはその実力がある。ほかの部隊の連中に知らしめてやるぜ。
「それでは、国取り戦のルールを確認しますね。場所は旧王都全域をつかって行われます。大体20キロ四方のこの領域を6つの部隊で分割します。このエリア内にはいたるところに基地があり相手の基地の所有権を手に入れることで自陣を増やしていきます。このやり方は簡単で相手の基地にあるフラッグを自分たちのフラッグに差し替えれば所有権がうつるようになっています。そして、12月から2月までの3ヶ月間で最も多くのエリアを自陣にした部隊が優勝するというのが大まかなルールになります。」
この戦いに全てをかけてきた。絶対優勝してやる。そして俺たちは兄さんの世代を超えるんだ。
「まーもう先生から教えることはなくなったので、あと1週間、各自で調整してしっかり臨んでください。」
て言われてもな。もう調整は終わってるし、この1週間が一番退屈なんだよな。早くやっちゃいたいぜ。