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1話 入学式

1週間たびに投稿する予定ですが…


作られた空の元にこれまた作られた爽やかな風が吹いていく。

それは暖かな日差しと極まって最高の天気と言えるだろう。

だが、作られた天気など、最高と言えるのか。

俺はいくら考えても答えの出ない無駄な疑問をいつも考えている。

今日もいつも通り無駄な疑問を持ちながら俺、ミツキは柔らかな芝生の上に座っていた。


「地上でも同じような天気なのかな」


「…それは分からないけど、少なくともここは暖かくて気持ちいいと思うよ?寝ちゃいそう」


俺が思わず言ってしまった独り言に答える少女がいた。

白い髪の毛を長く伸ばていて、透けているような白い肌。寝る直前かのように薄く赤い目を開けこちらを見ているアルビノの少女。


名前はアリス、俺の妹である。


「そうだね…じゃあ、行こうか」


俺がそう言いながら立ち上がると、アリスも無言で頷き、立ち上がった。


目的地は学校である。

今日は俺たちの入学式なのだ。


入学する学校の名前はシラエラ魔術学園。

魔術の専門学校のような場所である。

エリート校なので、ここを卒業すれば、魔術に関連する大抵の仕事に就くことは出来ると言われている。


まぁ、俺たちは一応、職を持っており、そんな卒業特典は要らないわけだが。


学園に向けて歩きはじめ、しばらくすると大きなとおりに出た。

周りには制服を着ている人が幾らかおり、彼らは一つの流れとなってある場所を目指していた。

もちろん今の俺たちも制服姿であり、その流れに則って歩いている。


アリスと雑談しながら歩き10分くらい経っただろうか

門と大きな学舎が見えてきた。


近づくにつれて詳細が見えるようになり、

門の横には入学式と書いてある看板があることが分かった。そこで写真を撮っている人もいる。 また、その奥には張り紙で「会場はこちら」と、矢印が付けられていた。


写真を撮っている生徒を横目で見ながら門を通り過ぎ、張り紙通りに進んでいくと、入学式会場である訓練場にたどり着いた。


訓練場は天井がなく、地面はむき出しとなっている。そこに均一に椅子が並べられており、まばらに人が座っているのが分かった。椅子が向いている方向には即席で作られたであろうステージがあり、その真ん中は話す人のためかマイクスタンドが置いてあった。


俺たちは適当に空いている椅子に座り、適当に喋っていたが、少しずつ人は増えていき、まばらだった生徒達が一杯になったタイミングで入学式が始まった。


それは恐らく普通のものであった。

学園長か誰か知らないオッサンが長々と話をしたり、理事長か誰か知らないオッサンが長々と話をしたりして、そして殆どの生徒がうつらうつらしてきた時だった。


一人の小柄な生徒がステージに上がると少しだけざわめきが広がった。


その小柄な生徒はしっかりとステージの真ん中に立つと話し始めた。


「どうも新入生の皆さんこんにちは。私はこのシラエラ魔術学園の生徒会、生徒会長を務めています、ミラ・マリーです。」


その名前が出た時、先程よりも大きなざわめきが広がっていく。

耳を傾けてみると、生徒達は口々に「天才だ」とか、「ミラー家の次期当主だ」とか、なんとか言っている。


そんなざわめきの中でもしっかりと演説を続けるミラをもう1度見るが俺の記憶にはそんな少女はいなかった。


「…誰?」


「あなたミラ・マリーを知らないの?」


思わず呟いてしまった言葉に反応したのはアリスではなく、その反対側の隣に座っている女子生徒だった。


「あぁ、うん。少し世間に疎くてね。もし良ければ教えてくれるかな?」


「世間に疎いって、どんな所に住んでたのよ…まぁいいわ。」


少しではなくとても呆れるようにため息をついた女子生徒は説明を始めた。


「ミラ・マリーって言うのは複合魔術を創り出したマリー家の次期当主と言われている人で、媒体を使わずに魔術を使う天才なの。それに、複合魔術に使う媒体をいくつも発見していて、頭脳的にも天才なのよ。」


「へぇ、なるほど、じゃあとても有名人なんだね?」


「ええ、もちろん。むしろ知らない人がいるなんてビックリするくらいよ」


「なるほど」


どうやら自分は一般常識が欠けているのかもしれない。


チラッとアリスの方をむき、視線で知っていたかと問いかけると無言で頷くアリス。


どうやら彼女も知っているらしい。

少し落ち込むな。


「…普段から新聞とかニュースとかに興味を示さないから悪い」


妹からの至極真っ当な追撃にさらに落ち込んでしまう。うん、これからはしっかりと新聞もニュースも見よう。


「ふふっ」


女子生徒が笑うのでギロりと睨みつけると、女子生徒は可笑しそうに笑いながら、


「あなた達って面白いのね。…えっと自己紹介がまだだったわね。私の名前はセレナ。あなた達は?」


「俺はミツキ」


「…アリス」


「そう、ミツキとアリスね。これから宜しくね」


「こちらこそよろしく」


普通の自己紹介をした。


「…以上で終わります。」


そんなふうに談笑をしていると、どうやらミラの演説は終わったらしい。


何だか最後の方にすごくこちらを見ていた気がしたが、まぁ気のせいだろう。俺やアリスのことを知っている奴なんてここには居ないのだから。


どうやらミラの演説が最後だったらしく、何かの教師であろう人が説明を始めた。


「これから電子端末型の生徒手帳を受付にて配布します。生徒達順番に並んでください」


どうやらそういうことらしい。

何やら他にも説明をしているので耳を傾けながら移動を始める。

俺とアリスが立つとセレナも一緒になって立った。

どうやら一緒に来るらしい。

まぁ、こちらとしては一向に構わないわけだが。


どうやら電子端末型生徒手帳というのはとても便利であるらしい。

大まかにいうと、


・この生徒手帳は通常の電子端末としても扱える。

・この生徒手帳があるだけでシラエラ魔術学園が身元を認めたという印になる。


などである。

他にも細かいところはあるがおおよそにはこれでいいだろう。しかし、無償でこれを提供できるのはすごいと思うな。


列に並びながらそんなことを考えていると、後ろから声をかけられる。


「おい、どけよ」


「はい?」


振り返るとそこには態度がでかい大柄の男とその両脇を固める中背中肉のあたかも取り巻きAと取り巻きBと言った感じの人がいた。呆然と見ていると、取り巻きAが周囲に唾をまき散らしながらさけぶ。


「おい!ダン様がどけと言っているんだ!いいからどけ!この平民風情が!」


そこでようやく思い至る、


あぁ貴族かと。



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