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異世界コンニビ1号店  作者: 音音
第1部 世界は飢えている

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5/5

痺れ芋 ③

 

 毒を売ったのかと聞くべきなのか、触れずにいた方がいいのかミサキが悩んでいると、その沈黙を誤解したのかヤーモが話し出した。

「女神様は、この痺れ芋が粉になるのが不思議なんですよね」


(ん? なんでそんなふうに思った?)


「きれいに洗って土を落とした後に、皮をむいて薄く切って天日でからからに干した後、手で砕きながらウッスで細かい粉にひくんです。村にあるウッスは街で見たウッスを見よう見まねでおれがつくったものなので、細かくひけたのとひけてないのが混ざって出てくるのが難点なんです。ぴったりと石がーー」

「ヤーモ、女神様が困ってる」

 毒というよりも、ウッスのことを話したかったであろうヤーモをピーが止める。


(ウッスというのは石臼みたいなものかな? っていうか、これ絶対に毒を売ったことあるよね!)

 ひくりとミサキの口元が思わず引きつった。


 はっきりと毒を売ったことがあるのか聞くべきなのかともミサキは考えたが、答えによって二人に食料を渡すか決めるわけではなく、これからの自分の対応が変わることがないのなら聞かなくてもいいか。という結論にミサキが至ったとき、ミサキの引きつった口元を見たヤーモが再びミサキに対して土下座した。


「女神さま、毒を売ったことを裁かれるというなら、おれが全部背負います。だから、ピーや村の皆を助けてください。命をつなぐ食べ物をください」

 ヤーモは頭を下げる前の視線の先で刈り残してる稲をしっかり見ていたし。嗅覚は見えない場所に実っている果物を捉えている。

 女神が毒を売るという不道徳な行為に嫌悪感を示して食べ物をもらえなくなる可能性を思いついたヤーモは地面に額をこすりつけて懇願する。


 毒を売るような人と交流するのは怖いだとか、毒を使われた人のことを考えれば親切にすることも嫌だという意見もあるだろう。

 ミサキだって元の世界であれば同様の意見を持っただろうが、ここは異世界である。

 彼らの暮らしや常識を知るわけではないのだから、毒を売ったことで二人を自分が責めるのは違うのかなぁとミサキは考えた。

 何が正しいかなんてミサキにはわからない。

 それでも、ミサキが一つだけはっきりわかっているのは、以前売ったことがあったとしても、今回はピーとヤーモは売ろうとはしなかったということだけである。


(……悪い人たちではないと思うんだよね。少し話をしただけだけど村単位で助け合って生きてるのがわかるし)


「ヤーモ! 痺れ芋の毒だってカメキチが最初に言い出したことだろ。ヤーモが罰を受けるならおれも一緒に受ける」

ピーもヤーモの隣に膝をつく。

「いや、ウッスを使いたくて、カメキチに賛成したおれが悪い」

(カメキチも気になるけど、たんにヤーモはウッスを使いたかっただけなんじゃ……)

 出てきた名前とヤーモの言葉に困惑するミサキを置いて、二人のかばい合いは続く。


「作ったのも売りに行ったのも、俺だ」

「それだって、村の皆で決めたことだろ。売りに行った先だって領主さまの所だ」


「ストーップ」

 ミサキは二人のやりとりを止める。こういうのはどちらかが諦めるか、第三者が介入しないと終わらない。

 もっとも、二人がミサキを女神だと認識している以上、最終的に判断を委ねられるのはミサキである。


(買い取ったのが裏組織的なところより、領主ってほうがヤバさを感じるのは気のせい?)


「べつに毒を売ったこと責めてないから」

 二人はミサキの言葉に胸をなで下ろす。

「前に売ったことがあるなら、なんで今回は売ろうと思わなかったの?」

 ミサキの問いにヤーモが口を開く。

「今回は毒を売ったお金で食べ物を買うのは違うんじゃないかって、二人で話し合って決めました。

 前に作って売ったときは、医者を呼ぶのにお金が必要だったんです。」

「医者?」

「女神様。出稼ぎの船を下りたあと、穏やかだったやつが怒りっぽくなったり、歩けなくなるやつが出るのは知ってますか?」

 ピーがミサキに問いかけたが、ミサキの答えを待つことなく話を続ける。

「おれの種族のやつばかりです。歩けなくなったら、ただ死ぬのを待つような状況でした」

(ピーの種族ってことは鳥系ってこと? トシおじちゃんのとこで鶏飼ってたな。似たような話を聞いたことあったかなぁ?)

 ミサキは自分の知っている鶏の病気に似たようなものがないか考えてーー慌ててピーは家畜ではないと、その考え方を振り払った。


「街の医者を呼びたくても金がなくて呼べない。その年はさらに多くて、前の年から寝込んでる奴も多かった。そこでカメキチが痺れ芋の毒を売った金で医者を呼ぼうと提案したんです」

「医者は呼べたけれど、結局何の病気なのかはわからなかったですけど。毒を売ったお金で医者を呼んだから罰が当たったのかもしれないです」

 ピーは寂しそうに言う。

「そんなんじゃない。医者も言ってただろ。港町でたまに見かける原因不明の病だって」

 ヤーモの言葉に、ミサキは何か引っかかりを感じた。


(なんだろ? 今…… なんかーー どこかで聞いたことがあるような言葉だった)

 ミサキはどこで聞いたのだろうと考える。

 どこで聞いたのかを思い出して、ミサキはパチリと手を合わせた。

 小学生の頃。おばあちゃんと一緒に見ていた世界を旅するクイズ番組で取り上げられていたのを思い出した。




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