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異世界コンニビ1号店  作者: 音音
第1部 世界は飢えている

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3/5

痺れ芋①

 


「どうすんのよこれ……」


 目の前に広がる黄金色の光景に思わず言葉が出る。

 最近独り言が増えてる気がするけど仕方ない。

 こっちに来てから、普段話す人間が居ない。


 対面して話したのは1週間前に来た、ワンゾウとワンタの2人だけ。

 リヤカーを返しに来てくれた時に、持って行ってもらえるようにと色々作っていたが、トマトを収穫しに行こうと玄関でたらリヤカーが突然現れた……。


 思わず、引きつったような悲鳴をあげたが、聞く人間もいないのが救いである。


 ーーー 救いなのかな?


 まぁ、そんなの見たらワンゾウとワンタはもうここに来れないんだな。となんとなく分かって、彼らのために作り置きするのをやめた。


 で、目の前の光景である。

 昨日、茄子を取りにきたときは奥へと続く森の端だった場所。

 木が生い茂っていたその場所は、元から水田があったかのように実りに(こうべ)を垂れた黄金色(こがねいろ)に輝く稲穂がそよ風に揺れていた。

 森も少しは小さくなったでしょ。絶対。と思うぐらいに遠くまで田んぼになって稲穂が揺れているのである。


 その景色をみた瞬間、ゾワッとして身体を震えた。


 昨日ここで、米が足りないな。と、思ったのである。


 店の棚にお米が補充されない。

 時化や台風が続くと物流が止まる。

 米が補充されないのはその影響なのだろうと、物流が止まると不足する野菜を棚に置けばすぐに無くなった。

 おばあちゃんが近所の人に分けてるんだと思って、多めに茄子を収穫している時に、米もあればおばあちゃんも近所の人も喜ぶんだろうな。と思ったのである。


 稲刈りをしたことはないが、テレビのニュースや番組でしてるのを見たことはある。

 きっと収穫時期。


 うん。黄金の稲穂。

 収穫時期。


 どうやって??


 いやいや、鎌で根本から切れば手作業でできるのもなんとなくわかるよ? できるかは別として。


 え? これを一人で? 手作業で??


 無理でしょ……

 時間をかければいつかは終わるかもね。

 でも、その先は?

 稲刈りしたとしても保存する袋もない。

 時代劇に出てくるような米俵を藁で作るとか?

 どうやって? 作り方なんて知らないし、知っていたとしても作れるとは思えない。


 お米だって、稲刈りしたからって食べれるわけじゃない。

 それくらい知ってる。

 稲からお米っていうか、 (もみ)を取らなきゃだし、取ったところで籾殻をどう取るの??


 テレビのバラエティ番組で見たように、瓶に入れて棒で突いて籾を取る??


 この量を??


 島内にもコイン精米機はあるが、玄米を精米するものであって籾殻がついたままでは利用できない。


 もしかすると農協に相談すれば何とかなるかもだけれど……

 世界が違うのだから無理だし、おばあちゃん経由でお願いしたとしても、何処から持ってきたの? という状況が生まれる。


「稲刈りしたところで、どうするって問題だよなぁ……」


 稲刈り完了〜 米俵になーれ。なーんて魔法でも使えれば良いけどさ。

 おふざけ半分、ヤケ半分。稲に向かって指をくるり。

 その際、なんとなく刈った稲って乾燥させるんだよね、そんなのもぜーんぶまとめて仕上げて米俵になっちゃえば良いのに。とは思った。


 思ったけどさ……


 ドサッドサッと響いた音の方に顔を向けると、 米俵が積み重なっていた。


 さっきまで目にしていた稲穂が揺れていた場所は稲が刈り取らた跡があり、籾殻が小さな山を作っていた。

 その横には、米俵を作るのに余ったであろう刈り取った後の藁が丁寧にまとめられて積み重ねられている。


 人間、諦めと図太さって必要である。


 うん。

 稲刈りと入れ物の問題が解決したと前向きに考えよう。まだ奥で揺れている稲刈りも心配も無くなったってことで。

 まだ玄米で精米されていないので、完全に問題が解決したとは言えないが、食べられる状態にはなったのだから良しとしよう。



「米俵よ浮き上がれ!」

 ピクリとも動かない。


「米俵よお店の中へ!」

 何も変わらない。


「米俵よ軽くなーれ!」

 重いままである。


 米俵になったのは良いけどさ、運べない……


 これ何キロ?

 絶対三十キロ以上あるでしょ。リヤカーに載せるのも無理な気がする。


 よし。

 とりあえず残りの稲を米俵にしちゃおう。


 現実逃避ではない。できることからやるだけである。

 外に置きっぱなしになるけど、どのみち一つも運べないのだから米俵が何個になっても一緒である。

 雨とかが心配?

 のーぷろぶれむ!

 私が願わなきゃ雨は降らない。

 きっと。

 たぶん。

 おそらく…… 大丈夫な気がする。うん。



 有効範囲を確認しつつ米俵にすること十分。

 1回にできる量はだいたい縦横百メートルの範囲。1ヘクタールといったところである。

 それを十回はもう米俵にしてる。

 その場で米俵になるので、十カ所に米俵が点在。親切設計で最初のところに纏めてくれないかな。と切に思うが、どっちみち重くて運べないのだから、どこに米俵が出ようが意味はない。


 たぶん、これで最後だろうというとき、ふと思いついた。

 三十キロはギリ運べるが、長い距離は無理。

 十五キロならいけるけど、どれくらいの重さなのか想像がつかないが、中身を空とした米俵自体の重さも考えるなら、運びやすいのは十キロだろうか。

 それに、コイン精米機も十キロごとに料金が上がる。



「天と地の恵みよ。ミサキの名で命じる。乾燥して、十キロの米俵になーれ」


 ヤケで可愛いだろうと思ったポーズに呪文もどきまでつけて、腕をくるりと指先は稲に向けて回す。


 ドサドサと十キロサイズであろう米俵が積み上がる音。十キロと指定したせいか、あと1回で終わると思ったのに奥に残った稲穂。

 そしてーー


「女神様だ」


 知らない誰かの声。


 なんで、このタイミングかな。


 恥ずかしさのあまり、私は地面に手をついた。


 なんで、私、最後の最後でポーズまで取っちゃったかなぁ。


 恥ずかしいからといつまでも地面とお友達しているわけにはいかないので身体を起こすと……


 平伏している……鳥っぽい人間と爬虫類ぽい人間がいた。


 え? 人間で良いんだよね??


 形は人間。

 鳥っぽい人間の襟足は羽根で覆われ、腕は鳥だと主張するように翼で内側の先っちょに手。

 爬虫類っぽい人間の服に隠れていない皮膚の部分は鱗のようになっている。

 但し、どちらも頭は髪の毛。

 顔は土下座されてるため見えない。


 捕食者と非食者の関係じゃないよね?

 鳶が蛇を咥えて飛んでいた光景をなぜか思い出した。

 でも、大きさ一緒だし逆も??





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