プロローグ
眩い光に包まれながら夢乃は無限に続く真下へ落ちて行った。
上に戻りたくとも、掴む物も無し。手を伸ばしても意味は無し。
この状況を何と言えばよいのだろうか。
真っ暗闇の中に自分だけが光っており、しかも自身は真下へと落下中だ。
夢乃は恐怖や不安と言う感情に身を任せ、顔を強張らせた。
遂には何をしても無駄だと悟り、夢乃は目を強く瞑った。
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夢乃の通う高校には、大きくて静かな図書室が設置されている。
この図書室に憧れて青泉高校へやってきた生徒も少なくはない。
勿論夢乃もその中の一人だ。
しかし現実は厳しい。青泉高校の図書室は確かに広くて静か。
だが全体的に古臭い。他の学校の様な洒落た図書室ではなく、昭和テイストな図書室なのだ。床にはダサい絨毯。窓は汚くカーテンも埃まみれ。
壁も傷んでおり、手で押すと軋む音が響き渡る。
そういう具合なもので、図書室に通う生徒は少人数である。
けれども夢乃は気にせず、毎日毎日図書室へ通っていた。
今日も夢乃は廊下を小走りし、図書室のドアを開ける。
「あ、松下さん。こんにちは」
「こんにちは。本返しに来たのと、本借りに来ました」
カウンターに本を一冊置き、別の本を探し出した。
「あ、そうだわ松下さん。これとか先生のお勧めなんだけど……」
「これですか?えっと……」
少し古びた本の表表紙には、「遠い遠い昔の話」と書かれている。
絵は外国の街並みが描かれていた
「これね、中世のヨーロッパ時代のメイドさんのお話なのよ」
「そうなんですね。読んでみるので貸してください」
「どうぞー。これ先生のだから読み終わったら返してくれるだけでいいわ」
夢乃は有難うございます、と礼を言って図書室を出た。
時間は放課後。帰るだけだ
鞄を持ち校門を出た夢乃は家に直行。
ただいまーと言いながら靴を脱ぎ、自室へ入った。
女の子らしいベットに寝転び早速借りた本を取り出した
本を開くと、夢乃はもう何事にも反応しない。
本に憑りつかれた様な風に、夢乃は本に熱中した