14話 ネタばらしは壮大にと言われましても困ります。 前
お願いします。
「あっちで一段落ついたら帰るから。いや、つかなくても絶対帰る」
「…行ってきます」
「ハイルロイドの使用人達。大変だろうと思うけど、これからもこの家を支えてやってね。永久の繁栄と幸福を君達に」
私とルクシオとルークさんの順番で使用人達に別れを告げる。
私はこれから面倒になりそうな予感がして表情がお通夜に。ルクシオはルークさんを警戒して、睨みながら低く唸り。ルークさんは何が楽しいのかにこやかにうちの使用人達に手を振って、ハイルロイド家の豪奢な馬車へ乗り込んだ。
それを見た使用人達はよくわからん事をもろもろ言って涙ぐみ、何処からともなく取り出したハンカチやら旗を振る。きゅーきゅー啼いて寂しがるぽちとたまに怯える馬を宥めながら、私達はハイルロイド邸を後にした。
…うちの使用人達は突然出ていく私達を不思議に思わないのだろうか。あれだけの人数に見送られているのに誰も止める人がいないなんて逆にすごい。流石父セレクトの使用人だ。
頭の中で子牛が市場に売られていく曲がエンドレスに流れながら、私は乾いた笑みを浮かべた。
「えーっと…ルークさん」
「なにかな?」
「どこ行くんですか? 山なんですけど」
馬車に乗って半刻、外を眺めれば緑 緑 緑…自然溢れる動物飛び出す森の中を走っていた。と言っても道があるからよく使われているルートなのだろう。馬車が走っても大丈夫なぐらいは開けている。
…このサイズの魔獣が通る道とかじゃないよね? うちの番犬を見ていたらそんな気がして怖い。ついでに方向的には王都方面を走っている。だが些か方向が直線過ぎやしないか? ちょっと道をずらしたら普通の道路があるのに何故森を突っ切ろうとするのか。急がば回れを全否定だ。
「もう少し行けばわかるよ。彼らも待ってるだろうしね」
「彼らって誰ですか?」
ルクシオの質問にくすりと笑う。その顔はいたずらっ子のような表情で、そんな顔も出来るのかと感心してしまった。けど、彼って誰だろう。お父さんか?
マジか、と外を眺めて誰がいるのか探すが誰も見当たらない。…あれ、目の前に何かあるぞ? ってあれは…。
「魔法陣…?!」
何故あんな所に?! え、何の魔法陣? てか誰がいつ書いたの、ねえ?!
あわあわしている間にも馬はその方向に向かっていく。あっという間に馬が魔法陣を跨ぎ、馬車が魔法陣を踏んだ瞬間、眩い光に包まれた。驚いた馬が嘶き、ガタンと動きを止める。
「っ…」
「ふふ、着いたよ二人共」
「え……着いた?」
目を閉じても眩しい光が徐々に消えていく。だが目を開けてもさっきの光で目がやられて全然見えない。ただ、おかしい事に立っていることだけはわかる。
さっきのは転移する魔法陣だったのか。何故あんなパフォーマンスが必要だったのか疑問だ。てかうちの馬車どこに行ったんだ。あれ超絶高いんだぞ。思わず目が飛び出て父の頭を叩いたぐらい高かったのに何してくれてんだ。壊れたら弁償しろよ金髪バカが!
どうでも良くないツッコミをして心を落ち着かせながら、早く目が慣れるように目の端を揉む。徐々に見えてきた瞳を瞬かせて。
「……え?」
そこに広がる光景に、落ち着き始めた心臓が止まりそうになった。
ぼやけた視界から見える景色は先程までの森ではなく、穏やかな川だった。澄んだそこには魚や鳥が優雅に泳いでおり、水が陽を浴びてキラキラと輝く。さらさら、と聞こえる川のせせらぎと時々可愛らしく鳴く鳥の声が、さっきの森ではないと真っ向否定してきた。
川のから見える街は逆にここと違い賑やかで、パッと見た感じは前に行ったハイルロイド領の街よりも大きい。
特徴的な白と赤で統一された美しい街並みが、微かに残る記憶を通り過ぎた。
この光景は見た事がある。ここでヒロインの……。
「って事はここは…」
「どうしたんですか?」
「…いや、なにもないよ」
「?」
…ここはヒロインの生まれた場所であり、我が国の。
「王都じゃないですか」
目の前にそびえ立つ純白の城を見上げながら、私は小さく呟いた。
「二人共、早くおいでよ。置いていくよ?」
ルークさんが白レンガの大橋の先にある大きな門へ歩いていく。待つ気なしかあの野郎…! 驚くのをわかっていながら置いていくとか本当に性格悪い! しかも無駄に足が長いから歩くの速いし!
私とルクシオは先に行ってしまうルークさんを走って追いかける。うう、走りにくい。なんでこの世界の女の靴ってヒールがついてるのよ…。高そうな靴だけど折っちゃおうかな。
この世界のお嬢様はみんな揃ってヒールだ。前と比べるのが烏滸がましいぐらいぼんきゅっぼんの長身女子が多いのに、これ以上身長を伸ばしてどうすると思うのだが、男も高いので丁度いいのだとか。えっとセレスティナは…はは、大丈夫、あれはまだ十七歳だ。伸びるさきっと。伸びないから厚底ピンヒールを履いていた…とかじゃないよね? ただのファッションだよね?
自分の絶望的な身長事情で走り方が更によたよたになる。すると不意に体が浮いた。あら、楽だ。
「…ってルクシオ?! 大丈夫だよ、降ろして!」
ルクシオが私をお姫様抱っこして走っていた。私を持って走っているとは思えない程軽やかに走っているえ、ちょ、なんで?! 恥ずかしいから止めてほしい! 抱きついてくるのとお姫様抱っこは色々違うでしょうが!
「アンタが走るより俺が抱いて走った方が速いですよ。ほら、ちゃんと手を首に回して」
「え、や、待って」
走るのが速すぎて思わずルクシオの首に抱き着く。それと同時にいつものルクシオの爽やかな香りが鼻を擽る。
「っ、恥ずかしいな…」
「そのまま抱き着いていてくださいね」
うわぁぁん! こんな恥ずい時に耳元で囁くなぁぁぁ!! なんでこんな時だけイケボなんだよ常にそれでいろよかっこいいなじゃなくてうわ何考えてたかわからなくなってきたぁぁぁ!!!
二人の門番が大剣を交差させて私達を止める。やっと降ろしてもらえる、と思ったが降ろしてもらえない。何故だ!
「ちょ、」
「ここはエルライン城ですが、何用でしょうか」
降ろして、と言おうとするが門番に遮られる。てかルクシオに顔を押さえ込まれた。酷い。ダメって何だよ、おい。
そこで眉をひそめて苛付きを見せたのはルークさんだった。私の態度が気に入らないのではなく門番の態度が気に入らないらしく、彼らに近づいて睨みつける。
身長高いな。門番の顔一つ分高いわこの人。
「君達、それ本気で言ってるのかい? ふーん……。君達の上司は誰だったかな? ベルドラン? エドウィン? それともジガルデかな? こんな馬鹿を野放しにするなんて我が国も堕ちたものだね」
「え……」
ルークさんお得意の威圧感たっぷりの笑みで門番の顔が固まる。それから面白い速さで顔が青くなっていき、その場で土下座をし始めた。え、やだ面白い。
「も、申し訳ありません!」
「君達が謝った所で私の機嫌は直らないよ。良いから早く退けなさい」
じゃないと…殺すよ?
「ひっ!」
ルークさんの不吉な言葉に凄い勢いで飛び退き、大門の両端に走っていく。大声で開門、かいもーんと叫びながら何処かへ消えていった。
「さあ、行こうか」
ルークさん…。あんたマジで何者ですか?
「ふふ、今のでわからなかったのかい? セレス嬢は呑気だね」
ルークさんの有り難くない評価を受け取った後、私とルクシオは彼と別れた。何やら用事があるのかなんとかで、メイドに道を案内してもらっている。
「…だからさ、ルクシオ。そろそろ降ろしてよ」
「ダメです」
そして、さっきから降ろせ降ろせと説得を続けている。すごく恥ずかしいから早く降ろしてほしい。抱き着かれたり匂われたりは耐性があるから良いのだが…って良くないが、お姫様抱っこはされた事がないからヤバい。こんなに恥ずかしいとは思わなかった。
その上、隣のメイドさんに見られているので更に恥ずかしい。すみません、そんな目で見ないでください。彼と私は清廉潔白な仲なんです。血は繋がってませんが姉弟なんです。疑わないでください。
ひょえー、と顔を背けているとルクシオが言った。
「アンタ、足怪我してますよね? 血の匂いがします」
「え、そうなの…?」
そういえば足痛いな…。あの変な走りで靴擦れしたのか?
「何故気づかないんですか。もういいです、このまま行くので抵抗しないでください。…動いたら舐めますよ?」
「…魔法で治すのは」
「いけませんセレス嬢。城内は魔法使用許可が無いと使えない規則となっております」
メイドは至極真面目に申し訳ありません、と頭を下げる。ならその笑った顔を隠しきってくれよ! 微妙にわかる感じが恥ずかしいわ!
散々ニヤニヤされて心が折れそうになった所でメイドさんが扉の前に止まる。そして三度ノックして言った。
「エドウィン様、ベルドラン様。セレスティナ様とルクシオ様を連れて参りました」
「入れ」
失礼します、と頭を下げながら入室する。
そこにはいつもの青い服ではなく、赤い騎士服を身に纏う父が立っていた。その隣には白の、父と同じデザインの騎士服を身に纏う赤髪のイケメンが立っている。
「もういい」
「失礼しました」
父が一言言うとメイドが頭を下げて扉を閉めた。冷たい表情がいつもの父と重ならず酷くもやもやする。
そして父がルクシオと私に近付き…。
「セレス、どうしたんだ?! 怪我したのか?」
叫んだー! やっだー、全然お父さんじゃないか!
「エドウィン?! 急にどうした!」
父の絶叫に隣の…誰だっけ? 赤髪さんが目を剥く。え、驚きすぎだろ。
「ルクシオ、セレスは大丈夫なのか?!」
「靴擦れです。大事です」
「治癒師ぃぃい!!!」
「大事じゃない! 自分で治せるから大丈夫だよ!」
「陛下ぁぁぁ!!!! 許可を―――」
「うるさいな!」
思いっきり頭を叩いて五月蝿い口を塞ぐ。その行動を見た赤髪さんが更に目を剥いた。
「エドウィンを叩いた…? どうなってるんだ…?!」
「あ、こんな所から申し訳ありません。私はハイルロイド公爵令嬢のセレスティナと申します。彼はルクシオ、私の義弟です」
「どうも」
「え…あ、どうも」
お姫様抱っこからですみません、と頭を下げると彼も頭を下げてくれた。すごい、まともな人だ。こんな人間がいるなんて驚きだ。この世界に話が通じる人間がいるのか…!ちょっと感動。
「ってエドウィンの子供?! 結婚してたっけ…いや、エドウィンって結婚できるの?!もしかして陛下が言っていた…」
「そうだ。うちの子供達も漸く参戦だ」
うりうりー、と私とルクシオの頭を撫でながら赤髪さんに見せびらかす。お父さん、あの人さらっと結婚出来ないだろって言ってるよ。訂正しなくていいの?
赤髪さんは考え込むように首を捻る。目線がお父さんに移って、私に移って、ルクシオに移る。そしてもう一度お父さんに移って…。
「あれ…本当に結婚してたっけ?いや、式に入ったような記憶もあるような…。この子も見覚えあるぞ…?」
現実を認識出来ないようだ。
「なあ、この前うちの子供の年齢聞いたよな? お前の子供は何歳?」
「七歳と八歳だが」
「小さくないか?うちは代々そっち寄りだからまだしも、お前の方は文官寄りだろ?本当にいいのか?今なら回せるぞ」
「何故そんなことを言う。陛下が望まれたのだ、その希望を叶えるのが俺達の役目だぞ?」
「それはそうなんだが…」
聞いちゃいけない会話が聞こえてしまった。うち、文官寄りの家系らしい。それ大丈夫?死なない?いや、気にする所はそこじゃない。
父と赤髪さんは確定で騎士だ。ごっつい剣をぶら下げてるし。…まあ普段からそれっぽい服を着ていたからそこはいい。そこはいいとして、問題はその赤と白の騎士服だ。この国のカラーは言わずもがな赤と白だ。うちの家、城下町、城内を見てわかるように赤と白を基調としたデザインが多い。国旗も緑地の上に赤竜と白い翼が描かれたかっこいいデザインだ。
この国には三種の騎士がいる。
一つ目が緑の騎士。先程の門番のような仕事や城下町の見回りなどをする普通の騎士だ。殆どがここに属する。
二つ目が白い騎士。攻撃特化が集まる脳筋部隊だ。緑の騎士と比べて数が少ない。
そして三つ目が赤い騎士。魔法、物理とそつなくこなすオールラウンダーだ。赤と同じく緑の騎士と比べて数が少ない。
白と赤は立場的には緑の上だ。この時点で父と赤髪さんは一般的ではない特殊野郎。そして、その白と赤を纏め上げる人物こそが…。
「白騎士団団長 ベルドラン・オートフェルトと…」
「赤騎士団団長のエドウィン・ハイルロイドだ」
赤髪さんが苦笑しながら、お父さんが何事もなく、私達に告げた。で、そのお父さんの上司である彼は自動的に…。
「漸くわかったんだね。ふふ、よく今まで生きてたよね」
くすくす笑うあの声が背後から聞こえる。後ろを向くとあのいけ好かない金髪美人が立っていた。
「私はルキアノス、メルニア王国の王だよ」
確かに目の前の金髪美形がそう言った。いつも通りくすくす笑って威圧して、私が驚いているのを楽しんでいる。信じたくない、こんな王が実在するなんて…。こんなに自由勝手気ままの鬼畜野郎が王様とかこの国ヤバくないか? ていう事はこの人がヒロインの親? ありえない。
てか何故結婚出来るんだ? 顔か? それとも権力か? ヤバい、凄くヒロインに会いたくない。こんな親の子供とか絶対ヤバい。ヒロイン踏んで高笑いとか無理。悪役として虐める前に殺される。こりゃ乙女ゲームにはありえない最強鬼畜系ヒロインの爆誕だ。
顔が青くなって引き攣るのがわかる。人間、絶望すると鏡を見なくとも自分の顔がどうなってるのかわかるらしい。黒に金の刺繍が施された優雅な衣装に身を包んだ彼は、赤白の騎士がひかえる豪奢な机の椅子に座って私達に微笑んだ。
「どうしたんだい? そんなに固まって。もしかして君はこの国の王の名を知らない馬鹿なのかな?」
「いや、存じておりますが…!」
「それはどうだか。将軍の名すら知らなかったじゃないか」
顔が黒い。え、何。気づかなかったのがそんなに気に食わなかったのか?私はルクシオに降ろすように腕を叩くと、彼は渋々といった感じで降ろしてくれた。よかった。
「陛下。お許し頂けるなら一つ、言い訳してもよろしいでしょうか?」
「ふーん…何?」
「不快になられる内容かもしれませんが…」
「いいよ、言ってごらん?」
「ありがとうございます」
ちょっとシワっとなったドレスを整えて、大人衆三人に向き合う。おお、壮絶な美形揃いで目の保養だ。ルクシオも美形だしこの部屋はイケメンしかいない。淑女の皆様に見た目に騙されるなと叫びたいな。
ってそういう事を言いたいんじゃなくて。
「私はこの国の名の将軍も、陛下の名前も存じ上げております。しかし、申し訳ありませんが顔は知らなかったのです」
「けど俺、小さい頃にお嬢ちゃんと会った事あるぞ?」
「そうだったのですか? 申し訳ありません。私はこの数ヶ月前に記憶を失ってしまい…」
「え、エドウィン。それ本当か?」
「ああ、記憶喪失だ。お前や陛下の事は覚えてなかったな」
「セレスティナ…記憶喪失だったのですか?」
「え、あ、うん。そうなの」
記憶喪失以前に違う人格なんだけどね…。もう記憶喪失でいいかな、言ったらややこしくなりそうで面倒臭い。
「で? それが言いたい訳じゃないだろう?」
「はい」
紫の瞳が早く言えと急かす。これを言って不敬罪…とかならないよね?
私は一つ深呼吸して、ゆっくり言った。
「まずお父さん」
「ああ、なんだ?」
「正直お父さんが赤の将軍とかありえないと思った。あんないい加減な事してるのに将軍とか本当にこの国を憂う。本でエドウィンの文字を見た時、お父さんと同じ名前の人が将軍なんだって思ったよ。それと同時にうちのお父さんとは大違いだなと思った」
「……」
「セレスティナ…流石にそれは酷いと思います」
「普通の親は娘に番犬を嗾けたり、暗殺者と戦わせたりしないと思うの。どんどん理想の『エドウィン様』とかけ離れていくよね」
「エドウィン…! こんな小さな女の子に何やってるんだ!」
「…後悔はしていない」
犯罪者かてめぇ。満足そうに笑うななんか怖いわ!
「次にベルドランさん」
「え、俺にも何かあるの?」
「思った以上に若くて吃驚しました。もっとごついおっさんかと思っていました。名前がごついのに本人細身イケメンとか衝撃的」
「……」
「セレスティナ…名前で判断しちゃダメですよ」
「ごめんね。思った以上にイメージとかけ離れてて」
赤髪さんが何とも言えない表情におなりになった。ごめん。
「最後に陛下」
「なんだい?」
「まさか陛下があの適当すぎるパーティに参加されるとは思いませんでした。予算削減とはいえ山で狩ってきた動物が貴方様の口に入るなんて、父の首を差し出しても償いきれません。申し訳ありませんでした」
「ちょっと待てセレス。何故俺が殺されるんだ」
「ちょっと待てエドウィン。この前陛下がいなくなったのってお前のせいなのか?」
「そもそも陛下が床に転がって寝るとは思いもよりませんでした。しかし国王陛下とあらば私のような小娘が考えつかないような高尚なお考えがあったのでしょう。よくわかりませんが流石です」
「……」
「セレスティナ、いい感じに嫌味入ってますね」
「エドウィンお前! 陛下に部屋も案内しなかったのか?!」
「このまま寝たいと仰ったんだ。その願いを叶えるのが俺達の仕事だろう?」
「そこは叶えるな! 無理矢理にでも部屋に押し込め!」
本当の事をぶっちゃけたら白と赤が喧嘩し始めた。てかベルドランさん、お父さんと陛下の扱い雑じゃね? もしかして私と同じポジションの人か? バカと鬼畜…この二人を纏めるのはキツいなぁ。不憫だ。
可哀想な目でベルドランさんを見ていると、不意にルークさんが下を向いて震え始めた。お、怒ったのか…?
「ふふ、あはは! 本当に…君は何も変わらないね!」
ルークさんが声を上げて笑う。毒も威圧も何も無い純粋な笑いに、ポカンとしてしまった。こんなに笑うの初めて見た。
「流石エドウィンの子供達だ。私が国王だとわかっても怯えやしない。君さ、初めて会った時から威圧してたの気づいていたかい?」
「まあ、はい。気づいておりました」
「怖かった?」
「キモかったです」
「ルクシオに至っては私を警戒していただろう? 私と戦闘する気かい?」
「彼女に害が及ぶなら」
「ふふ、呆れちゃうな」
笑いすぎたのか指で目を拭っているがまだ笑いが止まらない。口を隠しながらくつくつ笑っている。そんなルークさんを見て、私はルクシオと顔を合わせた。揃って首を傾げる。こいつ誰だ。
「ふふ、ねえエドウィン。やっぱりこの子達がほしい。こんな図太い子供そうそういないよ」
「陛下がそう仰るのなら喜んで。どうぞ、有効活用してやってください」
「ありがとうエドウィン。君達、今日からここで働いてもらうからね」
「うっそだろお前…あ、そうだ! 陛下、ルクシオをどうするつもりですか?!」
衝撃的な事実が多すぎて忘れてたけど、連れてこられた理由がルクシオ云々だった。そしてルークさん本人が陛下は先祖返りが大好きって言っていた。何するんだ? 鬼畜な事だったら抵抗しまくってやる。
使用人達
『お嬢様お坊ちゃま行ってしまわれるのですね寂しいですぅぅ!!!』
『お嬢様! 頑張りすぎないで下さいませぇぇ!!!』
『陛下ぁぁ!! お嬢様とお坊ちゃまを宜しくお願い致しますぅぅう!!!』
『お坊ちゃま、ハンカチは持ちましたか? 干し肉抜いておきましたからね! ちゃんと部屋で寝てくださいね!!』
『陛下! 当主にたまには帰るように仕向けてください! 最近重要な書類が溜まってきました!!』
…使用人超元気。ついでにこの後、馬車の回収に行きました。
ありがとうございました。




