13話 笑顔が素敵な美形は嫌いです。
遅れて申し訳ありません。
お願いします。
突然ですが飼い主とペットは似るって聞いたことがありますか?あれは飼い主が無意識に自分の顔に似た顔の犬を買ってしまうから似るらしいですよ。性格が似るかどうかは別問題なので触れませんが、ただこの飼い主は珍しいことに顔は似てないのにペットとやる事が似ているようです。
特にやることもなくだらだらすごしていた日のこと。いつも通り図書室で本を読もうと歩いていると、突然使用人に止められた。どうやら来客が来たようだ。お父さんはいないし、お母さんなんて存在してるのかすらわからないし、対応する人がいない。
追い返せばいいじゃん。公爵家が追い返したところで文句なんて言えるやつはおらんだろう。そう言うと使用人は顔色悪くして口篭る。…なるほど、追い返せないと。強盗かな?倒すだけならすぐやるよ?
ということで、ここは客室。使用人が丹精込めて掃除しているこの部屋はいつ見ても美しい。どこの部屋も埃一つ落ちていないが、この部屋はそういう次元じゃない。目が潰れそうなぐらいきらきらしてるの。そこの柔らかな肌触りのソファーに私とルクシオが座っている。
「ねえ…ルクシオ。これ、どういう状況だと思う?」
「わかりません…が良くない状況ですね」
「確実にね…」
バレないように耳打ちして前に座る人物を見る。彼はそれはそれは優雅に紅茶を飲み、私たちの視線に気づいてニコリと笑った。ゾッとする笑みだ。
「良くない状況、とはどういう事かな?」
「うわ、聞こえてた」
ぽろりと本音を漏らしてしまうと彼は先ほどと寸分違わない笑みで微笑む。相も変わらず目だけ笑ってませんね…ルークさん。威圧感が半端ねぇっす。
「言っておくけどこれは御忍びだからね。私はここに存在していないから楽に座るといいよ」
「ではお願いですからきちんと笑ってもらえませんかね。目がマジで怖いです。楽に座ろうとしたら射殺される錯覚がするんですよ」
「ふふ、それは無理」
無理なんですか。そうですか。ならこっち見ないでください。
つい数分前、私が客室に通されるとその後ルクシオがやって来た。二人して首を傾げていると突然ルークさんが来た。お父さんが何かやばいことでもしたのか。やべぇこりゃ大変だと焦ったがどうやらそうではないらしい。私とルクシオに話があると言った。
そして今、ルークさんを前に座っているんだが…御忍びってどういうことですか。あなたはどういう存在ですか。やっぱりうちのお父さんがヘマやらかしたんですか?
今度のは対応しきれるのかな…と頭を抱えていると、美人さんがくすくす笑う。上品ですね笑い方が。そうですか、反応が楽しいですか。…こいつ嫌いだ。
「セレス嬢、そんなに睨まないでくれないかな」
「申し訳ありません。元々こういう目つきなもんで」
「…機嫌が悪い、ですか?」
「そんな事ないよルクシオ。元々こういう性格なんだよ」
ただただ嫌いだから睨んじゃうんだよ。合わない人間って絶対いるからね。私、出来た大人じゃないんだ。うう…この人やだなぁ。苦手だ…。
とりあえず話を切り出す事にする。空気は重いし居心地は悪いし会話が怖い。その上この大人気ない大人が笑っている。もう恐ろしすぎる怖すぎる。早く話題振らないと何かされそうで嫌だ。
「…そうだ、何故お父さんがいないんですか?お父さん、ついてきそうなのに」
言外に『大人同士で話をつけろや子供に話を持ってくるな』と言うとルークさんはにこやかに応える。
「今回ばかりはエドウィンが邪魔だったからね。勝手についてくるのも困るよね」
「お父さんが、勝手に、ついてくる」
「最近のエドウィンは仕事中に抜け出す事が多いからね。前まではなかったんだけど、どうしたんだろうね?彼がいないと仕事が回らないから閉じ込めてきたよ」
「うちの親がご迷惑をおかけして申し訳ありません」
私は土下座する勢いで頭を下げる。父が『最近不慮の事故で記憶が吹き飛んだ私』の為に休んでいたのだとすれば私のせいだ。休暇届けが受理されない職場がおかしいと言ってしまえばそうなのだが、如何せん父親の職場を知らない私は何も言えない。少なくともブラック企業であることは今わかった。
すみませんルークさん。怒らないでください。休暇届け、受理してください。労働組合に訴えますよ。
そっとルークを窺う。私をちらりと見たルークさんはまた一口紅茶を飲んで視線を外した。それは…気にしてないってこと?それともお前に謝られても何も変わらないってこと?どっち?ねぇ、怖いんだけど。
ついでにルクシオは暇になってきたのか欠伸をしている。…ルクシオって何気に図太いよね。
「そういえば、この前の探索は楽しかったかい?」
不意にルークさんが聞いてきた。私とルクシオはお互いの顔を見合わせて、なんとも言えない顔で口篭る。正直言って楽しくなかった。何してたんだろうね…私達。
てかあんなに他人事っぽい反応を見せていたのに結果は気になるのか。よくよく考えれば行けって言ったのはこの人だから気になるんだろう。
「楽しくはなかったです。ただ、色々勉強になりました」
囲まれても迷子になる、とか。結構簡単に人間の腕が折れる、とか。真っ直ぐしか走れない人間がいる、とか。知ってました?人間って衝撃的な場面を見続けていたら耐性がついて予測できるようになるんですよ。人殺ししたと勘違いして泣いたけど、目の前で普通に皆殺ししてたら衝撃で全部吹き飛びますからね。
と言うと、満足そうに頷かれた。それならもういいよね、と聞いてくる。え、何が?逮捕してもいいかって?
「えっと…何がでしょうか?」
「忘れたのかい?以前言っていた君を引き抜こうって話だよ」
「あー…それ、断りましたよね?私には荷が重いので遠慮します」
「……そうか。なら仕方が無いね」
お、今回は引きが速い。そのまま帰ってくれるのか?
「では、ルクシオを連れて帰るよ」
「なんで?!」
立ち上がって帰る支度をし始めるルークさんを思わずガン見する。何故ルクシオを持ち帰ろうとする。おかしいだろ!逮捕か?逮捕なのか?!いやいやいや、自己防衛だよ!ちょっと待って何故そうなったのか過程を教えてほしい!
ルクシオを抱きしめて出来る限りルークさんから遠ざかる。こわい、この大人こわい。ルクシオも低く唸って警戒しているようだ。臨戦態勢に入っている。
するとルークさんがにっこり笑った。珍しくちゃんとした笑顔で。そして酷く楽しそうに私とルクシオを見ながら言った。
「彼は帝国の人間らしいじゃないか。で、この前帝国の人間に襲われたのだろう?もしかしてあの暗殺者たちは君を後始末に来たのかなぁ?…この国の情報を盗むはずの間者が使えないからってね」
「な…!」
「エドウィンが騙されると思えないが、子供相手に絆されたと考えてもおかしくない。そうじゃなくとも、ここ最近仕事を抜け出すのが君を警戒してのことなら納得がいく」
「ルクシオはそんな子じゃない!ただの犬…じゃなくてあれだ、いい子ですよ!この子がそんな事出来るようなタマに見えますか?!」
「あんた…馬鹿にしてるんですか?」
「ちょ、ごめん。フォローしたつもりなんだけど本音が…」
「本音…?怒ってもいいですか?…とにかく俺は行かない」
「君たちの意思は関係ないよ。…我らが王は先祖返りが大好きでね、彼らを集めているんだ。ルクシオは先祖返りだそうだね?他国の人間だとしても連れて行かなければならない」
「え?!いや、でも…」
「セレス嬢、君は王に逆らうのかい?それがどれほどの大罪か気づいているのかい?」
くすくす笑いながら私たちに近づく。ルクシオの唸り声がより一層強くなった。だが彼は気にせずに屈んで私達を覗き込む。
「ルクシオ、君は彼女に迷惑をかける気かい?」
「…っ」
「大丈夫だよ。狼の先祖返りは貴重だから、王も君を悪くは扱わないだろう。迷惑がかかる前にこちらに来た方が賢明だと思うけど」
―――だからこちらに来なさい。
ルークさんがルクシオに手を差し出した。
ダメだ。目が本気だ。これは本当に連れて行かれる。…くそ、どうすればいい?
本に書いていたように先祖返りは人間を凌駕する力を持っている。勿論ルクシオも例外ではない。子供でありながら大人を圧倒出来るほどの戦闘能力を持っている。
その能力を王が求める、となればルクシオのその後が簡単に想像出来る。ひたすら戦場に送り込まれて、使えなくなったら人体実験。非人道的な末路が脳裏に過ぎる。『悪くは扱わない』という事は『良くも扱わない』って事だろう?んな所に連れて行かせるわけにはいかない!
だがどうやって止めさせる?王命は絶対だ。私が公爵家の人間と言えども王には逆らえない。…いっその事ルクシオと逃げるか?どこに?
うう、と唸りながら悩んでいると不意にルークさんの『金色の目』と目が合った。会った時から変わらない冷たい目が私を射抜く。
「ふふ、悩んでいるね、セレス嬢。ルクシオのことが気になるかい?」
「そりゃ気になりますよ」
何かあったら逃げようってぐらいにね。家は知らぬ。
「なら君も来ればいい。君がルクシオを守ればいいよ」
「……は?」
ルークさんの軽い一言に目を見開く。あまりに簡単にいうので先程の覚悟がするりと抜け落ちた。えと、なんて言ったこの人。
固まる私にルークさんが笑みを深める。そしてゆっくりと、毒を染み込ませるように、再度私に囁いた。
「君が、ルクシオを守るんだ」
「ど、どうやって…?」
「ふふ、それは自分で考えなよ」
―――さあ、君はどうする?
笑顔が素敵な美形は目を細めて微笑んだ。
私を覗き込む縦に伸びた金の瞳孔が、じわりと毒を流し込む。それは体にゆっくりと回り、正常な頭を鈍らせていく。『ルクシオを守る』。果たしてそんな事が出来るのだろうか。
ルクシオを見ると、不安に揺れる赤と目が合った。だが彼は私から害を遠ざけようと、低く唸って私を隠す。ルークさんに立ち塞がる彼があの日の彼を思い出して息を呑む。
このままだときっと彼はルークさんについて行くだろう。領内探索の時と同じ、私を守るためだけに。彼は自分の事を顧みない。どんな時でも私を守るために自分を犠牲にする。
だからそれは私が決めるのに充分な決定打で、気が付いたら頷いていた。
「いいよ、やってやるよ。私がルクシオを守る。…どうせそれしか道はないんでしょ?」
「ふふ、それはどうだろう。私は英断だと思うよ。さあ、共に行こうか」
ルークさんがくすりと笑って立ち上がる。ちょっと待って。ルークさんを止めると紫の瞳を細めて首を傾げた。
「…ルークさん、行く前に少し時間を貰えませんか?」
「何故?」
「今すぐには行けないので準備をさせてください」
「ふーん…。まあいいよ」
どうせ逃げても捕まえられるし、と黒い笑みを浮かべながら客室から出ていった。
「~~~!!! もうあの人やだ!」
閉まった扉に向けてクッションを投げつける。それだけでは飽き足らず、投げたクッションを氷の刃で切り刻み燃やし尽くした。チリチリ、と音を立てて白い灰に変わる。それを眺めながら手を開いたり閉じたりを繰り返した。
もうイライラが止まらない。何なのあの男! 突然来るわルクシオを疑うわその上連れていくって? 死んで詫びろあの野郎! 二度と来んな!
あの男は本当に嫌いだ。抵抗しても結局は掌で踊らされて、自分の良いように持っていく。…あの威圧が、あの冷たい目が憎い。そしてそれに負ける私自身も憎い。
「あの…落ち着いて下さい」
ルクシオが心配そうに言った。彼は私が本気で怒っているのを見たことが無かったのか、ぽかんと扉を見つめている。
自分でも絶対鬼の形相になってるんだろうなー…と思う。室内で魔法乱発とかしちゃったし。クッション焼滅したし。けどね、こんなにイライラするの久し振りだから止め方がわからないんだよ。扉を見ながら唸るルクシオの頭を撫でる。
「ごめんごめん、もう落ち着いたから。ルクシオも唸らなくていいよ」
…と言いながらも苛付きが止まらない。あいつの顔を一発殴りたい。あの綺麗な顔をボッコボコにしたい。思わずルクシオを撫でる手に力が入る。サラサラの毛をぎゅっと握ってしまい、きゅう…と悲鳴が上がった。
「セ、セレスティナ」
「何故君は冷静なの? 君は連れていかれるんだよ?お父さんの飼い主とはいえ何をされるかわかったもんじゃないのに。君は怖くないの?」
「怖い…かどうかはわかりません。けど俺はあんたと離れるのは怖いです」
彼はぎゅうぎゅうと握る私の手をそっと撫でる。擽ったさに弱まった手をやんわりと髪から外し、ルクシオの背中に持っていった。必然的に体勢が彼に凭れる形になる。
そしてルクシオは離れないように私の背中に手を回して、肩に顎を置いた。彼の柔らかな髪が頬にかかる。
「俺はあんたと一緒ならどこでもいいです」
「ルクシオ…」
ルクシオが私を抱き締めて頭を撫でてくる。そして小さく、俺のせいですみません、と囁いた。
ルクシオ、君……あざといな。そして可愛い。まさにあざと可愛い。可愛らしさが爆発している。
てか密着しすぎじゃない? どうやってこの体勢にした。サラッとやったから気付かなかったよ。この年齢でこんな事をサラリとするなんて…プロだ。耳も擽ったい、囁くな。
離せー、と背中を叩く。私の必死の抵抗は無視されて、逆に益々強く抱き締めてきた。
「ル…ルクシオ、苦しい。ちょっ、息できない」
「抜け出そうとするからですよ。抵抗しないでください」
「理不尽!」
潰れる、べしゃってなる。必死に叩いたら漸く離してもらえた。さっきの髪の毛を鷲掴みした仕返しだろうか。マジでごめんなさい。
「大丈夫ですか?何か変わったことは?」
「え、もうちょっと力を弱めてほしかった」
「そういうことじゃないんですけど」
「え、じゃあ何よ?」
「…いえ、流石です」
何故頭をポンポンする。さっきからなんなんだ。
とりあえず、ルークさんから少しの時間を貰った。この時間の間に準備をしなければならない。
正直、何故今から行かなければならないのかと思う。来てほしいなら一週間ぐらい待てよ。準備させろよ。女は持っていく物が多いんだよ。それよりも親の意見を聞けよ。…既に聞いていたのか?
荷物を纏めようとクローゼットを開けると中身が減っていた。あれ、と横を向くとキャビィさんが既に纏めてくれていた。目の前にどん、と置いてニコリと笑う。本当にそういうところは動きが速い。客人は待たせたくないってか。キャビィさんは私を引き止める気がないらしい…。
やる事がなくなったのでベッドに寝そべる。例のゲームメモを見ながらため息をついた。
『ルーク』…ねぇ。名前見つからないや。ルから始まる人はルクシオしかいない。て事は一般人? けどあの美形加減はおかしい、輝いてる。
うちの父も私の親なだけあって見た目だけは素敵だ。中身さえまともだったら惚れる。性格と行動が良かったら最良物件なのに。…ルークさんまさかの子持ちなのか? いやー、あの性格で子持ち…は無いな。除外除外。
じゃあルークさんって何者なんだろう。騎士…ではないよな。剣なんて持ったことありませんって顔してるし。魔術師…って割には私の異常性を指摘しないよね。魔術師なら私を研究させろって言ってきそう。宝石電池も突っ込んでくるよね?
そもそもお父さんの上司だよね? どこの? 何処かの砦の警備隊…ではなさそう。何もかもが綺麗すぎる。だからと言って平民なオーラではない。
じゃあ、王宮に仕える文官…とか? ありそうだなー。だけど、文官ってよりかは宰相だ。血も涙もない鉄血宰相。で、その部下は文官のお父さ…あれ、想像出来ない。おかしいな…。個人的に交友してるのか?
あー、もうちょっと真面目に見ときゃ良かった。戦闘シーンなんて糞食らえだ! もっとストーリーを大切にしろと過去の私に言いたい! 目覚めよ、過去の私!
自分のおバカ加減で絶望したのでルクシオに癒してもらおう思いまして、今ルクシオの部屋にいる。さあ、私を癒して! 存分に抱きつけ! 出来れば狼で!
…なのに。
「何故俺の部屋にいるんですか。自分の部屋に行ってください」
勝手に入ってくんなよオーラを漂わせながらルクシオが言った。あれだけべたべたしておいてこれはダメなのか? 意味がわからない。
「こっちは終わったんだもん。残りの用事はルクシオだからこっちに来ました」
「俺…ですか?」
ルクシオがバッグを閉めて私を見る。干し肉らしきものを隙間に突っ込んでこっちに来た。何故干し肉を持っているの? どこに行くつもりなの? サバイバル?
…まあ気にしたら駄目だ。自分の仕事をしよう。
「前にあげたカフ、今持ってる?」
「はい、付けてます」
ルクシオが耳から蒼いカフを取る。それを借りて、見えない薄さで宝石の中に円を書いた。ルクシオが不思議そうに首を傾げる。
「何してるんですか?」
「ルクシオって魔法より物理特化だからねー」
ルクシオは狼だからか、ゲームでトップクラスの戦闘能力を持っているからか、幼いながらも動きが速いし力も強い。
だからと言って最強ってわけじゃない。なのでお守り程度に能力が特化されたらいいなー…と思って刻印してみた。宝石電池ではなくなったが、これで常に強化状態だ。意識しない限りはそんなに効力が発揮されない安心仕様です。
「…うん、これでいいかな」
濃い蒼の中に殆ど見えない薄さで円と文字が書かれている。目を凝らさないと何が刻まれているか読めない。
「あまり変わりませんね」
「そうだね、目立たなくてよかったよ」
よかった、と笑いながらルクシオの耳に付ける。指先が耳に触れた拍子に彼がビクッと身を震わせた。…ん? 気のせいかな。
青いカフをつけた耳を見ていると、自然と綺麗な首に目が移る。ルクシオって首とか腕とか綺麗だよね…とそっと触ると一瞬目を見開いて、すごい勢いで遠くに行ってしまった。なんと素早い。彼はベッドの端から赤い顔を覗かせている。
「…ルクシオ、どうしたの? 顔赤いよ。やっぱり首が急所なの?」
「いえ、あんたがこの部屋にいるってのにこの状況は…」
「ごめん、よく聞こえない」
「慰めるからとはいえ無意識に彼女に抱きつくなんて…あれ、けどいつも抱きついてるし…なんでこんな、」
「…?」
…や、まあいつも通りか。きっと何かが大丈夫なんだろう。私は可愛らしく頬を染めるルクシオを凝視しながら意味も無く頷いた。
首といえばこの前変態暗殺者に首輪つけたな…。あれは似合ってなかった。何プレイですか、Мですか、本場の人ですかってなった。ルクシオ…は似合うのだろうか。狼だったら絶対似合うんだけどな。the 犬って感じがして。けど人間だったら変態臭いかな。
じっと見つめるとルクシオが再度身を震わせて更に逃げた。うーん、わからん。首が見たいんだけどなぁ…。
「ルクシオ、こっちにおいで」
「…やです」
「首見せて。てか首だけでいいから見せて」
「断固拒否」
「そ、そんなに?!」
すっごい拒否られた! そんなに頭振らなくてもいいじゃん!まあ、どうせまた忘れた頃に抱きついてくるだろう。犬だし。その時に確認しよう。
楽しそうに(?)頭を振りながら後退するルクシオ笑みを浮かべる。元気いっぱいで私は嬉しいよ。悲鳴をあげる彼を眺めていると、コンコンと扉を叩く音がした。そろそろ時間のようだ。さあ、私達の平穏のために、いっちょ頑張りますか!
ルークは子供相手でも容赦はしません。平気で脅して言質を取ってきます。気づいたのはルクシオだけでしたが。
ルクシオはルクシオで怯えたのかと慰めましたが違いました。主人公はただ怒っているだけです。彼女の心はガラスではなく鋼のハートでした。
なんとなく不憫だね、犬。残念だね、犬。
次回はルークとエドウィンがネタばらしして遊びます。
ありがとうございました。




