女装娘ですが、なにか?(試01)
ちょっと前に思い付いて色々と設定を考えていたものの、結局まだやれてなかったのを気分転換も兼ねて試しにやってしまいました。
……とはいえ、話の導入部のみなので全然わけわからないですよね;
一応「女嫌いで女避けに女装している美女(男)と彼女(?)に恋するチビで絶壁で平凡顔の幼馴染み(女)の恋愛とか」って内容やら一部キャラクターの性格やらの設定は前述の通り考えてたりするんですけど……需用とかなさそうだよなぁって頭掻いてます。
どこにでもある最近ちょっとだけ拓けた町のちょっとだけ大きな駅の駅前広場。そこにある良くわからないオブジェの前に誰かを待っている美女がいた。スマートフォンを弄りながら待つ彼女はふわふわと緩く縦巻きにした明るい茶色い髪を僅かな風に揺らしている。薄い色合いのロング丈のワンピースに短めのベストを羽織り、細過ぎず太過ぎない体躯と綺麗な顔立ちで通りがかった人達が男女問わずついつい振り返ってしまっていた。
そう、誰が見ても申し分ない美女だったのだ。
「おっ姉っさん!良かったら俺らと遊びません? こいつそんなに話さないから別にお姉さん一人でも実質二人きりだし、嫌ならこいつ帰すしさ。なんならお友だち待って二対二で丁度いいし、遊びません?」
最早使い古され過ぎて定番な文句で彼女に声をかけてきたのは見るからに軽薄そうなヘラヘラと笑っている長髪の男と何が気に入らないのか不機嫌そうな角刈りの男だった。無駄な筋肉のない長髪の方も悪くはないのだが、ツレの角刈りがあまりに逞しいため、またその表情の差からどうにも軽薄さを増量させてしまっている。
声をかけられた女性は無視してスマートフォンを弄りっぱなしだが、それに構わず話しかけ続ける長髪の男とその後ろで相変わらずむすっとしている角刈りの男。明らかにナンパが成功するようには見えなかった。
流石に数分が過ぎて彼女の眉間に皺が寄りだすのを角刈りの男が気付いたが、長髪の方は気にする素振りも見せず続けようとするのを見かねて肩に手をかけて声をかけようとしたとき初めて彼女が口を開いた。
「っせぇっ! 俺は男になんか興味ねえんだよ。無視してスマホ弄ってんだから察しろよこのロン毛ハゲっ!」
一瞬広場全体が静まり返る。それだけ彼女の声は周りに響いた。暫く呆気に取られていた長髪の男が漸く声を上げる。
「……はぁっ? てめえ野郎かよ! 紛らわしい格好してんじゃねえよ。てかハゲじゃねえし」
「っせぇ。人がどんな格好してようがてめえには関係ねぇだろうが、ロ・ン・毛・ハ・ゲ」
「ああっ! てめえまた言いやがったな、このオカマ野――」
「オカマじゃねえよ。ただのハゲにすっぞ、てめえ!?」
女にしては低く、男にしては少し高い声の美人と先程までヘラヘラしていた長髪の男が言い合い、それを一歩離れたところで角刈りの男が口を開いたまま呆気に取られたままになっている。周囲からは先程とは違う意味で注目の的になっていた。
そう、誰が見ても申し分ない美女は誰もの期待を裏切り男だったのです。