#99 特別篇 クリスマスラブソング 3
『大和重工』
世界屈指の大財閥
もちろん所有する土地も、建築物も庶民の及ぶことのできない壮大なものだ
『大和武』彼の友人である『月真優気』に連れられて訪れたその場所の広さは
『所有地』というにはあまりにも広大なものだった
私たちの住んでいる『人工島』の、約3分の2は彼ら『大和重工』の屋敷のものだった
その、広大な敷地の中央に位置する
これまた広大な屋敷
この屋敷すら、彼らの所有する建物の一つに過ぎないのだとか
そんな圧倒的な、富の差を見せつけられながらも
私達は、彼の居るであろう建物の一室へと通された
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
その広大な屋敷の中にあって、その部屋は意外なものだった
「意外に、普通なのね・・・?」
通された部屋は、どこにでもありそうな普通の一室
ベットがあって、勉強机があり
普通にテレビが置いてある
私達にとっては、いたって普通の部屋だ
どちらかと言えば広い方だとは思うけど、それは意外にも物が少ないからであろう
とりあえず『普通』で安心した
「・・・・・・」
が、彼(優気)は少しばかり困惑しているようだった
「珍しいな?お前たちが俺のところにまで訪ねてくるなんて」
いつものように、とぼけたような佇まいで彼『大和武』は現れた
「おい・・・」
それまで閉じられていた、優気の口が開く
「落ち着くだろ?」
自慢気に言うタケル
「意外だわ、もっととんでもなく豪華な部屋に居るものだと思ってた」
ある意味、偏見とも言えそうな感想が出てしまった
「俺としては、ココが一番気楽になれるんだ」
言葉の通り、リラックスした様子でその場にあぐらをかいて座り込む
「おまえ・・・」
おもむろにタケルの正面に立つ
「なんで、俺の部屋なんだよ!!?」
怒るというよりも、恥ずかしいといった様子で叫ぶ
「俺の知ってる場所で一番落ち着くからな、再現した」
当たり前のように言う
「あとな、優気・・・」
突然、ひそひそ声で耳打ちする
「あんなところに隠してたら、すぐ見つかっちまうぞ?」
ニヤリと笑う
「なんで、そんなところまで再現してんだよ!!?」
「てか、なぜ知ってる!!?」
言うも恥ずかしい、男子の秘密事情である
「ぬかりはない」
握り拳で、応えるタケル
「いったい、いつ探ったんだよ!!?」
かなり、うろたえる優気
「・・・・・・?」
イマイチ事情が呑み込めない春香であった
「わたくしたちの調査は、完璧ですわ」
控えていたらしい、十六夜が小さくガッツポーズをとる
「しかし優気様、ああいうのがお好みですのね・・・?」
含み有り気に、ほほ笑む十六夜
「ぎゃ~っ!?」
慌てて、十六夜に詰め寄る優気
「ご心配なさらずとも、それが健康な殿方ですわ」
クスクスと笑う
「やめてくれ~っ!」
かなり恥ずかしそうな優気
「で?」
「いったい何しに来たんだ?」
そんな彼を尻目に、用意されたお茶をすする
「えっと・・・?」
考えてみたら、いきなり連れてこられたから特に思いつかない
「お前に逢いに来てやったんだよ!」
叫ぶように言う
「今度、クリスマスイブにライブすることになったのよ」
とりあえず、会話をつなぐ
「お?今年もやるんだな」
さすが、会員No.0000001番だ
「それで、もし良かったらと思って・・・」
パンフレットをカバンから取り出す
「そうだな、観に行かせてもらうぜ!」
嬉しそうにパンフレットを受け取る
この間の返事からすると意外な反応であった




