#97 特別篇 クリスマスラブソング 1
空を見上げる
空は、分厚い雲に覆われていた
チラチラと、雪が降り注ぐ
『諦めるなよ』
あの日に交わした約束
あの雪の日に手にした、小さなキラメキ
それは、大きなキラメキとなって世界を覆う
再び、空へと視線を移す
そこには、遥か天に聳え立つ一本の槍
その槍は大地と天を穿ち、繋ぎ止めている
「待ってろよ・・・」
意を決して一歩を踏み出す
その眼前に広がるは、かつて共に過ごした者達
「ここより先、一歩足りとも行かせません」
鋭い眼光で俺を見据える
「大和武、押し通る!」
それは、起こるべくして起こった『もう一つの結末』
あの雪の日に、始まった物語の結末
これから語るは
全てを投げ捨て、想いを遂げる者
己を捨てて、誓いを守る者
そんな二人の
『もう一つの結末』への物語
黄昏の果てへの序曲
-ある冬の日に-
「はい、そこまでよ!」
パンと、手を叩きながら告げる
「今の振り付け、どうだった?」
新曲の為に創られた、振り付けのキメを確認する
「まぁまぁ、かな?」
心地よい汗をぬぐいながら、真夏が応えた
「あと二週間、か・・・」
その場に座り込んでつぶやいた
「ん?なに?」
今更ながらに、秋乘が訊いてきた
「クリスマスよ、ク・リ・ス・マ・ス!」
少しふてくされたように応える
「今年は、どうなの?」
美冬が何やら含み有り気に尋ねる
「どうって、なにが?」
特に予定はないはずだ
もっとも毎年恒例の『クリスマスライブ』は、やるんだろうけど
「いやぁねぇ?春香ちゃん、とぼけちゃって」
クスクスと笑う
「あいつと過ごすんだろ?」
にやけながら、真夏がツッコんだ
「あぁタケルさん、ですね?」
目を輝かせて、秋乘がうなづく
「ちょ、なんで彼がここで出てくるのよ!?」
確かに今、脳裏に彼の顔が浮かんだけど
「したんでしょ?」
美冬が、顔を寄せる
「コ・ク・ハ・ク・♡」
ほっぺを、つついてきた
「な、な、な、なんで・・・!?」
『何で知ってるの!?』思わず、そう答えそうになる
そう、あの日
短い旅行から帰った私達
私は、自分の気持ちに気付いた
『私は、彼が好き』
そう思ったらもう、止まらなかった
みんなと別れた後、偶然にも二人だけがそこに残された
私を見つめる彼は、あの日と同じ優しい瞳だった
そして、あふれ出た思いのまま私は彼に告げたのだ
『私は、貴方の傍に居たい』
でも、彼は応えてくれなかった
それから私たちは顔を合わせていない
それは、偶然なのか
それとも、避けられているのか・・・
そんな思いの中、今回の『クリスマスライブ』の開催日が決められた
私は、わからなかった
自分にとって、何が望むべきことなのか
自分にとって、何を求めるべきなのか
そして、その機会を失おうとしていることが・・・




