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トラブルメイカー -To Love Maker-  作者: TAMA-RUN
96/167

#96 番外編 SKY-そらへ- ⑨

「オマエ、なんでピンピンしてんの?」

タケルの第一声がそれだった


「丈夫だからな」

正直まだ、体中が痛いのだがこれ以上

みんなに心配はかけたくない


「で、蘭は?」

一番心配させたくないやつの存在を確かめる


「まだ、来てないな?」

タケルが周りを見渡す


あれから三日、すでに夏休みも終わり

新学期に入っている


「蘭ちゃん、来るかな・・・?」

真由美が心配そうにつぶやく


「大丈夫・・・!」

月乃が力強く言う


「そうだな・・・」

椅子に、もたれ掛かってつぶやいた


-放課後、屋上にて-


「オマエも寂しいのか?」

しきりに鳴く声の主に問いかける


夏休みに、蘭が拾ってきた雛鳥だ

今ではもう、自力で羽を羽ばたかせることもできるくらい元気になった


「早く帰ってくるといいな・・・」

軽く、頭を撫でてやる


-同時刻、蘭の自宅にて-


「蘭、お前に渡すものがある」

おとうさんが、何かを手渡す


「これは・・・?」

恐る恐る受け取る


それは、一通の手紙だった

差出人は『南雲 鈴』

わたしのお姉ちゃんだ


ずいぶんと古ぼけているように見えるそれは

痛々しくこびりついた、血の跡だった


「あの時のものよ・・・」

おかあさんがつぶやく


そう、あの時

喧嘩したまま、止まってしまっていた

あの事故の日のものだ


家族の誰もが、現実を認めたくなくて

引き出しの奥に、封じてしまったもの


でも、もうそれを恐れることはない


わたしには、大事な人たちがいる

一緒に、過ごしてくれる人たちがいる


何よりも、私に勇気をくれた大好きな人がいる


だから今なら、それを直視できる


ゆっくりと封を開いていく


懐かしい香りがした

お姉ちゃんの好きだった花の匂い


あれから随分と経つのに

その香りはあの時からずっと変わっていない


おたんじょうび

 おめでとう


 そして

 ごめんね

 

 だいすきな、らんへ


あの時、わたしが伝えたかった言葉と同じ言葉がつづられていた


涙があふれて、視界がゆがんでいく


「おねぇちゃん・・・」


わたしはすべてを思い出した


あの時、わたしが無事だったわけ

あの時、お姉ちゃんがわたしを抱き寄せて庇ってくれたんだ


そしてまた、あの時も

屋上から、飛び降りた時も


お姉ちゃんが、わたしに尋ねてきた


『あなたは、悲しいの?』

それに答えたのは、彼だった


『こいつには、俺達がいる!』

彼の言葉が、全てを救ってくれた


『あなたは、幸せ者ね』

最後に、お姉ちゃんが残した言葉


きっと、お姉ちゃんは許してくれたんだろう

そして、託してくれたんだと思う


わたしを想う、大事な人たちに・・・


「わたし・・・強くなるよ・・・」

その手紙を抱きしめて、力強くつぶやいた





「優気さん、準備できました!」

彼に振り返りながら言う


「そんじゃ、始めるか!」

その手には、鳥かご


わたしたちは、屋上にいた

あの夏に拾った、雛鳥を空へと放つために


「おいで・・・」

開かれた鳥かごに、そっと手を入れる


ぴぃ・・・


ひと鳴きした後、人差し指に乗ってきた


ゆっくり手を、空へとかざす

ひろい、ひろい大空へ


「こわくないよ、だから・・・」


ゆっくりと翼を広げていく

瞬間、ふわりと羽が舞い散った


「おお!?」

思わず歓喜の声を上げていた


「がんばれ・・・!」

その様子を見守る


ゆっくりと、そして高く

その姿は、大空へと吸い込まれていく


力強く、その翼を羽ばたかせて

雛鳥は飛んでいく


その姿に、お姉ちゃんの面影が重なる


「さよなら」

大空に、両手を広げてつぶやいた


そのつぶやきに応えるように

雛鳥は、大きく鳴いて羽ばたいていった


-空を飛びたいのなら、夢を見ればいい

夢の中なら、自由なんだから-


彼が言った言葉が、心の中で聴こえた気がした





SKY-そらへ-   FIN



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