#83 北へ・・・! その7
「オマエさ、委員長のコト・・・」
お互いに、肩まで湯に浸かりながらくつろぐ
「好きだぞ?」
あっさりと暴露した
「そうか・・・って、何!?」
予想外の応えが返ってきた
「じゃあ、お前ら・・・」
「言っとくけど、彼女と付き合うことは考えてないからな」
優が言おうとしたことを、キッパリと断る
「な、なんでだ!?」
お互いに想っているなら、付き合うほうが良いんじゃないのか?
「彼女には、やらなきゃいけない事があるからな」
彼女は、世界中にファンを持つアイドルユニット『フォーシーズン』のリーダである。
『フォーシーズン』は彼女にとって『絆』ともいえる
たくさんの人に愛され、たくさんの人を愛する事
それぞれにとっての繋がりを保つこと
それが一番良い事なのだと、タケルは思う
「それにもし、あの時の真実を知ってしまったら彼女は自分の事をきっと責め続ける」
言いながら、空に右手をかざす
「おまえ、その腕・・・!?」
一見、変哲もないその右腕
しかし、その腕はよくできた『義手』であった
「あの時にな・・・」
俺は、願ったんだ
彼女の為だったら、代わりに俺が全てを無くしても構わないと
光に包まれた後、俺はあの『バベル』の残骸の頂上に佇んでいた
俺の願いは届いた
その代償の結果が『右腕』だ
「安いもんだ」
口元が緩む
「彼女の、痛みに比べればな」
タケルもまた、いずれ来るであろう『自分のやるべきこと』を
おぼろげながらに感じ始めていた
「お前、カッコイイな・・・」
そんなタケルを見て、素直にそう思った
「だけど、お前は伝えなきゃダメだ」
優、いや優気に向けて諌める
「そうだな・・・」
オレは、恐れていた
その想いを、受け入れること
それは、今日までの日々が終わること
「このままでいても、ダメなのは解ってるさ」
誰かが喜ぶという事は、他の誰かが傷つくという事だ
「覚悟を決めろよ・・・!」
タケルの重い言葉
「誰も傷つけずに、誰かを好きになるなんてムシの良い話だしな」
自分を想ってくれている、みんなの気持ち
いくらオレでも、とっくに気付いている
そして、アイツの想いも・・・
「なんで、オレ達は出逢っちまったんだろうな・・・?」
ふと、空を眺めながら呟いていた
異国の空に、輝く月がいつもと同じように彼らの姿を照らし続けていた




