#82 北へ・・・! その6
「ふぃぃぃ~・・・」
お湯を、すくって顔を拭う
「やっぱ、風呂はイイねぇ!」
大きく腕を伸ばして、辺りを見回す
遠くは湯煙で覆われていて、よく見えないが
その広さは、かなりのものだ
「これで、誰かが一緒だったらもっとイイんだけどな・・・」
きっと向こう(女湯)は、想像を超える桃源郷が広がっているのかと想像を巡らすタケル
こっちは、たった独りで寂しい限りである
「せめて、こう・・・・」
「タケル、背中流してあげるわ」
「そうか?じゃあ、流しっこでもするかい?」
「いやん・・・恥ずかしい・・・!」
独りで、体をくねらせながら小芝居を繰り広げる
その光景は、どこか哀れさを誘う
「何してんだ、オマエ・・・?」
不意に、声を掛けられる
「何ってそりゃ、燃えたぎるリビドーをだな・・・」
尋ねられるままに応える
「んなコト、どうでもいい」
そこには、身体をバスタオルで包んだ優の姿
「って・・・・・・おわぁぁぁぁ!!?」
まさか本当に誰か(しかも女の子)が、入ってくるとは思いもしない
「ななな・・・何してんスかぁ!!?」
後ずさりながら、その乱入者に訊ねた
「いちいち騒ぐな、俺だよ・・・」
これまでの(女になってた)いきさつを説明してやる
「オマエも苦労してんな、相変わらず・・・」
相手が、『優気』であることに一安心する
「で、オマエに聴きたいんだけどよ?」
改めて、タケルに向きなおす
「・・・・・・」
無言で、こちらを凝視する
「な、なんだよ・・・?」
思わず、たじろぐ
「オマエ、さっきまで向こう(女湯)に居たんだよな・・・?」
おもむろに言い放つ
「あ、ああ?」
気圧される
「答えろ・・・!」
「な、何を・・・?」
真剣に向き合う
「誰のおっぱいが、一番デカかったんだ!?」
『見たんだよな?』と表情で訴える
「あ、アホか!!?」
言うに事欠いて、それか!?
「教えろ!!」
さらに言い寄る
「何言ってやがる!?」
言い寄るタケルから遠ざかる
「漢なら当然、知る権利がある!」
意味なく迫力の説得力
「・・・・・・・」
押し黙って固まる優
「・・・・・・・」
固唾を飲んで待つタケル
「~~~~~~」
顔を真っ赤にして、自分を指差した
一方こちらは『女湯』
「私の好きな人は・・・」
うつむいたままつぶやく真由美
「その前に、みんなはどうなのさ?」
真夏が、横槍を入れてきた
「みんな?」
蘭が首をかしげる
「そ、おまえら」
真由美たち4人を、指差していう
「いるよ」
意外にも、月乃が応えた
「わたしも、います」
意を決して、蘭も応える
「決まってるじゃない」
ゆうきが得意気に言う
「ぜひ、伺いたいですねぇ」
ほほに、手を当て美冬が微笑む
「私が好きなのは・・・」
4人の声が重なる
「アイツ(優気)」
「優ちゃん・・・」
「優気さんです」
「ビーフストロガノフ」
「って、ちょっと待てコラ!」
すかさず月乃に、突っ込む真夏
「イッツ・ロシアン・ジョーク」
真顔で言い放つ月乃
「では、改めてどうぞですぅ」
秋乘が促す
「私たちが好きなのは・・・」
再び重なる4人の声
「アイツ(優気)」
「優ちゃん・・・」
「優気さん」
「優気」
聴くまでもなかった応えだった




