#81 北へ・・・! その5
「だれが好きなの?」
切っ掛けは、他愛のないおしゃべり
身も心も解放される場所
『温泉』
あれだけ激しかった吹雪もすっかり静まり
辺りはやわらかな湯けむりに覆われている
そんな中、ただ独り蚊帳の外で俺はその中にいた
お湯に口まで浸かりながら、ぶくぶくと泡立たせる
(どうして、女ってのはこういう話が好きなんだろうな・・・?)
自分に最も縁のないであろう話題から逃れるため
その場から抜け出そうと試みる
「春香ちゃんは好きな人いるの?」
真由美が、興味津々に訪ねた
「そりゃ、いるよな~」
ニヤニヤしながら真夏が言う
「なっ、何を急に・・・!?」
顔を真っ赤にしながら、真夏に食いかかる
「だって、あんなに派手に見せつけてたもんなぁ」
からかうように言葉を続ける
『思い出は、いくらでも創れる』
あの時の言葉を思い出す
『お前が、未来へ進む事を諦めないなら!』
その言葉が、私に勇気をくれた
あの時、全ての思い出が消えるとしても
私は、みんなと進みたかった
彼と一緒に、進みたかった
そして、思いは叶ったんだと思う
暖かい光に包まれながら
私は、みんなのいる場所へと帰ることができた
過去も、現在も、胸に抱いたまま
それはきっと『彼』のおかげだ
素直にそう思う
「あ、やっぱり春香ちゃん『タケル』ちゃんのことが・・・!?」
瞳を輝かせながら、その手を取る
「で、いつ告白するのかな?」
秋乘が、すかさず突っ込む
「そ、そんなこと・・・言われても・・・」
しどろもどろに、うろたえる
「早く、捕まえないと他の子に取られちゃうよ?」
真由美の心配そうな声
「・・・・・そうか?」
月乃が、つぶやく
「彼、何も覚えてないみたいだし・・・」
寂しそうに、春香がつぶやいた
「・・・・・?」
そんな春香の言葉に引っかかりを覚えた
「しかたねぇな・・・」
言いながらその場を抜け出した
「そ、そういうあなたはどうなのよ!?」
苦し紛れに、反撃する
「わたしは・・・いるよ・・・」
はにかみながらも、その言葉は真っ直ぐだ
そんなやり取りを、固唾を呑んで見守る
きっとこの先の言葉を告げるということは
何かを失うことになるかもしれない
それでも、言わなかったらきっと
先に進むことなんて出来ないと思う
「青春だねぇ・・・」
「そうですわねぇ」
そんな彼女たちの様子を肴に
すっかり出来上がっている『大人の女』二人




