#73 夏のおわりに その5
「あんたらは、この世界が現実だと思うか?」
『死神』を名乗る少女の突然の問い掛け
「どういう意味だ・・・?」
当然のように聞き返す
「この世界は、偽りの世界や」
「・・・・・」
意味が分からなかった
「少しでも、おかしいと感じなかったんか?」
優気と真由美の困惑を余所に、言葉を続ける
「今、起きているこの事態」
「それを現実として、受け入れているあんたら」
「まともに考えれば考えるほど、おかしなるわ」
両手をいっぱいに広げて更に問い掛ける
「だって、ありえへんやろ?」
「矛盾だらけや!?」
まくし立てるように、しゃべり通す
「矛盾?」
優気がつぶやく
「あの子は、どっから来たんや?」
再び優気に問い掛ける
「どっからってそりゃ・・・」
思い出そうと考え込む
「・・・・・・」
脳裏に浮かぶのは、彼女と初めて出逢ったときの事
『夢から覚めたら同じベットで眠ていた』
それが彼女との初めての出逢い
今まで、考えもしていなかったが
『彼女は既に其処に居た』
そして、それを受け入れていた
(紆余曲折はあったものの)
他のみんなもそれは同じだった
『いきなりクラスに現れて、そのままクラスに溶け込んでいた』
(確かにひと騒動はあったものの)
それを受け入れ、『彼女が其処に居る』という『結果』を疑問も抱かず
それが『当たり前のこと』として過ごしてきたのだ
根本的な疑問
『彼女は何者なのか?』という疑問に触れることなく、だ
『彼女は何処から来たのか?』
改めて、問われる質問の意味を考える
「どや?」
もう一度、優気に問う
考え始めたその疑問は、一気に大きな波のように
優気の思考を飲み込んでいく
「わからねぇ・・・」
重々しく、その言葉をつぶやく
『彼女が其処に居た事』ではない
『彼女は何者なのか』という事がである
「それについては、私も幾つか尋ねたいな」
不意に発せられた言葉
声のした場所に目をやると、そこにはひとりの女性の姿があった
医者などが着る『白衣』を身につけたその姿は
どことなく『科学者』である『先勝真理』に似た空気を持っている
「先日、彼女についてSSSに問い合せたのだがな」
一旦、言葉を区切る
「『答えられない』の一点張りでな」
握り拳が震えている
おそらく、その様子を思い返し
怒りが、ぶり返したのだろう
「直接、聞く事にした」
そのまま、優気と死神の間へと割って入る
「彼女は『実在する』のか?」
改めて、その言葉を口にする
「あの子は『嘘』なんや」
その疑問の答えは、最も知りたくはない事実を告げることになった




