#66 Summre Song Story その23
突然、私の目の前に現れた人
その人の笑顔は、どこか懐かしい
「なんで、あなたがこんなところに!?」
だけど、私の知っている彼は違う
軽薄でいい加減
その上、周りに流されやすい『ヘタレな問題児』
少なくても、私の目にはそう映っていた
「約束したからな」
信じられないくらい凛々しい表情で言う
「わたしが、あなたと約束・・・?」
いつもの彼の事を思うと、信じられない
「お前の夢を応援するってな」
わたしの中にある何かに触れる感覚
「歌ってくれるか?」
微笑みながら問いかけてくる
「・・・・・・」
簡単に言ってくれる
今のわたしには怯えしかない
どんどん消えていく記憶
これまで、何度も繰り返した損失感
「歌ったからって、どうなるって言うの」
自分の肩を抱えて搾り出すように言った
「奇跡でも起こせって言うの!?」
感情が溢れ出す
「わたしなんかに、そんな価値なんてない!!」
みっともなく叫び散らす
「歌う事しか出来ない私に!」
彼の顔を見れない
「そんな私に・・・」
これ以上言葉が出ない
「それで良いんだ」
真っ直ぐな瞳
「お前が歌う姿をみんな待ってる」
優しく諭す
「忘れたくないよ・・・」
「もうこれ以上、大事な思い出を無くしたくない!!」
所詮、彼にわたしの苦しみなんて解るはずもない
「聴こえないか・・・・?」
天を仰いで彼が呟く
「お前を知ってる仲間の声」
視線の先には『フォーシーズン』のメンバー
『真夏』『秋乘』『美冬』
みんながわたしの名前を呼んでいる
「お前の歌を聴いてくれる、たくさんの人達」
会場の外に避難していた観客達
「お前の歌を、好きになってくれた人達」
ノイズだらけの空のモニターを見守る世界中の人達
「みんながお前を、お前の歌を忘れない」
見守る人たちは口々に彼女の名前を呼んで、待ち焦がれている
その声は全て、これからの未来への希望
「思い出は、いくらでも創れる」
真っ直ぐに私を見つめる
「お前が、未来へ進む事を諦めないなら!」
私はその瞳を知っている気がする
いや、私は知っている
その瞳で見つめてくれるなら
わたしは立ち上がれる
わたしが、思い出を全部無くしても
新しい、思い出が生まれる限り
わたしはきっと、手に入れる
どんなに、こぼれ落ちようとも
この手にわずかに残る、かけがえのない『キラメキ』を




