#65 Summre Song Story その22
『彼女の記憶は、ひと時のキラメキ』
寂しげな面持ちで彼女【トリニティ】は言った
『彼女は皆に、希望を与える代わりに過去を失う』
彼女が使命を果たす時、全ては変わる
新たなる世界『統一思考世界の誕生と共に
消えていく・・・
私の中に刻まれたたくさんの『キラメキ』
たくさんの『出逢い』『笑顔』そして『絆』
無くしたくない!
今まで何度も味わってきた『損失感』
今までのどれよりも大きな『キラメキ』
「歌えない・・・」
その場にかがみこんで、つぶやいた
「どしたの、ハルカ・・・?」
心配そうに問い掛ける秋乘
「これ以上、歌えないよ・・・」
肩を震わせて、言葉をつぐむ
「みんな、待ってるんだぜ?」
真夏が、囁きかける
「ダメなんだよ!!」
思わず叫ぶ
「忘れたくないよ・・・」
「ハルカ、お前知ってたのか・・・」
彼女の記憶が消える
私達『フォーシーズン』が結成された時、それは覚悟の上だった
数年の周期で、彼女の記憶は失われてしまう
それまでの間に、私たちは目的を果たさなければならなかった
『全ての人の記憶に、その歌を刻む』
フォーシーズンを結成した時に
あのマネージャー『Mr.T』の示した条件
思い返せば『世界統一思考』の為の条件なのだろうけど
私たちがその事実を知るのは、ずっと後の事だった
それでも、私たちは歌いたかった
誰の為でもない、私たち自身の『キラメキ』の為に
「歌わなきゃダメだ・・・」
ハルカの肩を掴んで言い聞かせる
「でも・・・」
その顔には溢れる涙
「歌わなきゃ、絶対後悔するよ!」
真っ直ぐにハルカを見つめる
瞬間、激しい振動がその場を襲う
いくつもの瓦礫が降り注ぐ中、たくさんの悲鳴が響く
「バベルが、バベルが倒壊します!」
オペレーターの悲痛な声
「・・・何も出来ないというのか!?」
壁に拳を打ち付けながら、真里が吐き捨てる
「歌うんだ!!」
ステージに響く声
「誰・・・・?」
ハルカの視線の先に映る影
「・・・・!」
彼女の足元が崩れ出す
「ハルカぁぁぁ!!」
手を伸ばして叫ぶ真夏
爆発のような黒煙が辺りを覆う
「ハルカちゃん!!?」
「ハルカ!!」
秋乘と美冬の声
「返事しろ!ハルカ!!」
奈落のように暗い、地面に向かい叫ぶ
「大丈夫、無事だ!」
帰ってきたのは男の声
ハルカの身を庇うように彼は居た
「歌わなきゃな、みんなが待ってる」
優しい眼差しで囁くのはタケル
地上から、一気に遥か上空へと放り出された彼
決死の帆走によって、やっと目的地であるハルカの元へとたどり着いたのだ
「笑って、みんなで帰ろうぜ!」
眩しいくらい、満面の笑顔で言い放った




