#63 Summre Song Story その20
『シャイニング・スター・ステージ』
最高のキラメキを放つ歌姫たちが頂点を目指して集い、競い合う舞台
だが、その真の目的は『人類を洗脳して統率する』
『統一思考世界』の実現
それを阻止するために奔走する者達
華やかな舞台の裏で交錯する、それぞれの想いと思想
「どうしたんだ?」
「何も映らなくなったぞ?」
世界各地で、映し出されるはずの星空のスクリーンには
ノイズだけが流れている
「・・・・歌わ・・・・ないのに・・・・」
時折、聞こえる声が夜空に響く
「一体、何が起こっているんだ?」
イベントを管理している大和重工の施設でさえ
状況を把握できていなかった
「あの子は、私の意識から生まれた」
ハルカを見つめ、呟くのは『トリニティ』
電子的な鼓動を刻む機械に囲まれて、私は横たわっていた
『ある一定の周波数を増幅し、相手の意識下に訴える』
その特質を持ってすれば、世界の意思はひとつになる
その被検体として私は、自らその身を捧げた
実験場に選ばれたのは『バベル』の一角
試作型の増幅装置との連動実験だった
偶然だったのだろうか?
あの日、その空域を通過していた一機の旅客機
増幅装置の異常起動によって起こされた事故
乗っていた乗客達の、たった一つの祈り『明日への希望』
当たり前のように日々を生き、当たり前のように明日を迎える『日常』
『その日常へ帰りたい』という意思が全ての始まりであった
暴走していく私の『歌』の力
自分でさえ抑えきれない
私は歌う
子守唄のように静かに歌は響き
やがて、機内は白い光に覆い尽くされていった
そして全ては『なかったもの』として消えてしまった
飛行機も、そこに乗っていた人たちも・・・
「あの事故によって私の意識から生み出された存在」
「それがあの子『ハルカ』よ・・・」
意外なほど私は冷静だった
「歌を歌うことをやめ、歌を歌うために全てを捨てた」
今回の計画に加担した私は、後戻りできない処まで踏み込んでいた
「彼女は、歌う事だけの為に存在している」
「そう、全てはプロジェクトを成功させるために」
淡々と語る
「アンタは、そんなことの為にアイツを利用したのか・・・?」
拳を握り締め押し殺すように尋ねる
「その通りよ」
キッパリと言う
「アイツは、アンタに憧れて此処まで来たんだぞ!?」
トリニティの肩を掴む手に力がこもる
「それも、意識下に組み込まれたことよ」
その表情は、あくまで事務的なものだった
「アンタも『SSS』の優勝者だろうが!」
さらに食い下がる
「だからこそ『あの子』に託したのよ」
ふと、表示が曇る
「託した・・・?」
「未来を、書き換えるために・・・」
振動が徐々に、大きくなっていく
「あの子に伝えて」
ゆっくりと歩き出す
「お、おい・・・」
『歌う事を、諦めないで』
その言葉が終わると同時に視界が激しく揺れて地面が崩れる
「あぶねぇ!!」
手を伸ばして叫ぶ
「サヨナラ」
タケルの伸ばした手を振り払い
笑顔のまま彼女は、奈落へと消えていった
「バカ野郎・・・」
伸ばした手を握り締め、落ちていく彼女を見送ることしか出来なかった




