#51 Summer Song Story その8
「この中にあるのね・・・?」
その姿は、明らかに異質
ゆっくりと鉄の扉に添えつけられたダイアルを回していく
『カキン』
かすかに何かの外れる音
「開いたんですの・・・?」
傍らにいた子柄の少女が尋ねる
「とっとと手に入れて、引き上げましょう」
彼女らの姿は異質
どう見てもこの舞台には不似合いな姿だ
「これは・・・?」
金庫の中から手に入れた一冊のファイルをめくってみる
表紙には
『PROJECT MOON』
「さっぱり解んない」
苦々しい顔でファイルを閉じる
「とりあえず、落ち合う場所に戻るとするよ」
さっさとその部屋をあとにした少女たちの後には
かすかな香料の香りが漂うだけだった。
「虫の良い願いだとは重々承知している・・・」
暗がりの中で彼女が言葉を綴る
「この時代にしがらみを持たない諸君らこそが、最後の希望なのかもしれないのだ」
私達は、言うならば『場違い』な存在だ。
詳しくは語れないが、『時間』と『運命』の輪から外れた存在
「頼む、彼女を救ってやってくれ」
依頼されたのは一人の少女を『救う』こと。
そしてそれは、今行われているこの『祭り』SSSを妨害することに等しい
この計画は『アイドルたちの頂上決定戦』という表向きの計画の他に、
特殊な資質を持つ者達から、『命の糧』すなわち『資質』そのものを奪うという非人道的な行いが行われようとしている。
私達が、協力の申し出を受けたのはそれが許せなかったこともあるが
この居場所に快く迎え入れてくれた『大切な友人達』を守るためだ。
そうこう考えているうちに、待ち合わせの場所に人影が現れた
「ご苦労様でした」
若い女性の声
「何者だい?アンタは!?」
見知らぬ人物の登場に身構える
「心配はいらんよ、彼女こそが本当の依頼主とも言える方だ」
取り繕うように間に割り込む
白衣に身を包んだ女性『先勝真理』
この人工島にある『学園』に在籍している教諭だ
教諭にして世界有数の科学者でもある彼女
まるで、事の全てを見透かすような態度には自信が溢れている
「申し遅れました、私は『大和撫子』と申します」
ゆっくりと微笑みながら言葉を続ける
「以後、お観知り置きを」
幾つもの思惑が絡み合う中、それぞれの想いが一つに集まる
その場所は『バベル』
惑星と宇宙を貫く楔
その全てを見下ろす場所で
歌姫たちが、その歌声を響かせる
希望と野望
二つの思惑が、全てを覆いつくそうとしていた。




