#41 番外編 雪月華 その3
「寒くないか?」
冬の冷たい風が、二人の間を吹き抜けていく
どんよりとした雲が、空を覆う。
きっと今夜は雪になるだろう
「だ、大丈夫・・・です」
白い息が言葉と一緒に漂う
俺たちの目指す場所は
まだまだ遠い。
出来ることなら日が暮れる前には辿り着きたい
最高の景色を思い出にして欲しいから
冷たい風が、吹き抜けていく
彼女の手を引き寄せて
風を遮るように、身体を寄せた
少し照れくさかったが
彼女の笑顔が嬉しかった
その笑顔が見られるのなら
どんなことだってしてやりたい
いつの間にかそんな感情が俺の中に刻まれていた
「被検体が失踪した!?」
白衣を着た男が叫んだ
何もない真っ白な部屋
そこにあるはずのものがない
「すぐに探し出せ!」
「どんな手段でも構わん!」
物騒なことを喚いている
「最悪、被検体の身体だけでも確保せねば・・・」
手にした小型端末に、何かを打ち込む
「主任」
気配を感じさせず、そこに居た
「十六夜か・・・」
振り向かずに言葉を続ける
「若様にも困ったものだ・・・」
「何も知らず、子供のままでいればいいものを」
手にしているものは一冊のファイル
その表紙には『PROJECT MOON』
開かれたページの中に刻まれているのは
『大和 武』の名
それに連なる数人の名前の中には
彼の親友たちの名前も刻まれていた。
「ワタクシが、若様と被検体を連れ戻します」
その言葉を残し、彼女は気配を消した。
「若様と、ね」
ファイルを閉じて空を眺める
「いずれにしろ、ハッピーエンドは迎えられないがね」
言葉とともに白い息が漂い消えていく
「既に計画は始まっているんだから・・・」
どんよりとした雲が、空を覆う。
きっと今夜は雪になるだろう




