#141 番外編 MOON-ほしへ- ⑨
「お前の好きな食い物って何だ?」
弁当のハンバーグをかじりながら優気が尋ねてきた
「ビーフストロガノフ?」
ママの得意料理だ
「びー・・・?」
聴きなれない言葉に首をかしげる
「ロシアの名物料理」
だったはずだ
「てか、なんで疑問形なんだよ」
最近の二人の会話は
こんな調子だ
それでも、最初の頃に比べれば
会話として成り立っているほうなのだが
「今度、食べてみるといい」
「ふ~ん・・・」
結局、彼は相も変わらず私の居るこの場所に来ては
他愛もない会話を交わして過ごしている
「優ちゃん!また、サボってる!?」
そんな二人の間に割り込む声
彼の幼馴染『向井真由美』
誰が見ても判りやすいくらいに、彼に好意を寄せる女の子だ
「いつもゴメンねぇ~、月乃ちゃん」
言いながら彼を引っ張って去っていった
「ま、またな~」
そして彼も、お約束の言葉を残し去っていった
「あれ?ここにも居ない・・・」
彼らと入れ違いに誰かが現れた
彼女には見覚えがある
まだ幼さが残るその姿は
危うささえある
「・・・誰か探してる?」
そんな彼女に声を掛ける
こちらを見上げる姿が愛らしい
「月真ならさっき、連れてかれた。」
「はえ??」
事態が解らないようだ
「きっとまた、痴話喧嘩だね」
「ち、ちわ・・・!?」
「気になる?」
「はわはわはわ」
コロコロと表情が変わって可愛い
「アイツに用?」
ふと、懐かしさを覚える
「あの、その・・・」
「たぶん、すぐ戻るよ」
彼女もまた、彼に心惹かれた者の一人なのだろう
「あ、あの、あの・・・」
一生懸命に何かを伝えようとしている
「わたしと、お友だちになってください!!」
その瞬間、私の中の記憶が弾けた気がした
マーシャ・・・
あの子が再び現れたように思えた
あの子と同じ、はにかんだ視線
あの子と同じ、一生懸命な想い
「いいよ」
あの時と同じように
あの子を包み込むように
こうして私は大事な人と、また出会えた




