#113 特別篇 クリスマスラブソング 17
全ては絶望の中にあった
天と地を繋ぐ『バベル』
それは、人が神になる為に月を目指し建てられた
しかし、それを拒絶し
それを断ち切ろうとする者の手によって、均衡は覆された
その代償は『月の半壊』
それに伴う『大地の豹変』
人が、神になろうという愚かな行為に与えられた『罰』
大地は海に飲み込まれ
空は厚い雲に覆われ
陽の輝は隠された
それでも彼等は争う
惑星の守護者は、答を出した
人類を惑星を護る為
全てを『消し去る』事を・・・
唄が聴こえる
遥か空の向こうから
光が世界を巡った時、全ては変わったのかもしれない
「なにが起こったというのだ!?」
真理が端末を操作しながら叫ぶ
「街が・・・街の灯りが、復旧しています!」
街だけではない、この施設の電力も回復していた
「何をしやがった!?」
タケルが、モニターに映る人物に問う
「彼女は、自ら決めたんだ」
表情を変えず、淡々と応える
「この世界を、護るという事を」
彼の傍らには、彼女の姿
「ごめんなさい・・・私・・・」
何かを口ごもり、うつむく
「教諭!彼女の方にも異変が!?」
スタッフの一人が叫ぶ
「被検体が・・・消えていく・・・!?」
シリンダーの中に居る少女の姿が、ゆっくりと薄れていく
「どういうことだ!」
タケルが、スタッフに掴みかかり問う
「この世界が、彼女のモノじゃなくなったからだ」
答えたのは『蒼樹大地』
『ブルー』と呼ばれた青年だった
「この世界を繋ぎ止める為、彼女は必要だった」
ゆっくりとシリンダーをなでる
「だが、新たな現実が生まれた」
彼の視線には、ハルカが映る
「この現実から、解放されたんだよ」
元々、この世界は『彼女の嘘』で作られてきた
だが不安定で、か細い世界は
いつ消えてもおかしくないまでに弱っていた
それを維持するために『彼女』を、眠らせたままでいる必要があった
かつて『彼女』は、自らの決意で
この世界からの別離を選んだ
結果、彼女は自らの居る『現実』で目覚めるはずだった
そして、この『現実』は消失するはずだった
「しかし、それは我々にとって受け入れ難い『未来』なんだよ」
再び真理が、言葉を紡ぐ
「だから『彼女』を、眠らせたままでいた」
「彼女を、彼女の夢を救う為に・・・!」
『彼女』の見る夢は、この世界での『現実』
そして、いずれ来るだろう未来を変えることが出来る『希望』でもあった
「だが、それでは駄目だという事に気付いているのだろう?」
大和建造、タケルの父が問う
「我々は、自らの手で『現実』を進まねばならない」
「・・・・・・」
「たとえそれが『悪』だとしても、だ」
誰もが言葉を返せなかった
「これ以上は、抗うな」
その声は、一つの重しとなる
「これは、新たなる『未来』を手に入れる為の行為だ」
その声を残し、モニターの映像が消えた
「そんなの・・・そんなもんしるかよ!!」
タケルが叫ぶ
「若様!?」
その声に気圧される様に、十六夜が我に返る
「オレは、約束したんだよ!」
おもむろに走り出す
「アイツが、笑って唄える応援をするってよ!!」
「オマエ、何する気だ!?」
ブルーが手を伸ばす
「決まってんだろ!」
振り向くことなく叫ぶ
「惚れたオンナを、取り返すんだよ!!」
初めて、自分の本音を叫んだ
世界が、塗り替わろうとしていた




