#107 特別篇 クリスマスラブソング 11
12月25日 深夜
街は闇に呑まれた
全ての輝きは消え
雪だけが、しんしんと降り続けている
その闇の中
天に向かいその身を仰ぐ『バベル』
闇にあって尚、その身を暗く染めている
「人類にとって『敗北』の世界など必要ない」
彼女は、全てを知ってしまった
「君は『タイム・パラドックス』という言葉を知っているか?」
彼女が、タケルに問う
「時間を遡り、過去に介入する」
「そして、介入によって未来を改変するというものだ」
いつものように口上を伸べていく
「未来から来たっていうのか・・・?」
引き込まれるようにつぶやいた
「私が観た未来は、人類にとって許しがたいものだ」
一瞬、その表情に怒りがこもる
「月の消失、それによる異常な環境変化」
「更には、権力を持つ者たちの愚かなる決断」
彼女の観た未来は『絶望と失望』
何らかの事象によって、失われた『月』
それによって引き起こされた、環境変化による人口の激減
やがてそれは『地球の放棄』という決断を迎えることになった
勿論、その放棄の立案者たちは『全てを置き去りにして』逃げ出した
「認められるはずがないだろう!!」
再び、銃口を向ける
「全てを、引き起こした者達だけが救われるなど!!」
怒りを込めて叫ぶ
「私は、託されたのだ」
「人類の、存亡を・・・!」
言い返せなかった
彼女が観たという未来
その結末は『終焉』
確かに、受け入れることなど出来はしないだろう
しかし、その行為は正しい事なのか?
「何も教えずに、済ませることが出来たのなら良かったのだがな」
「・・・・・・」
「想像が付くだろう?」
「誰の手によって『絶望』が生み出されるのか・・・」
「オヤジ・・・なのか?」
「・・・・・・」
静かに首を振る
「ちがう・・・?」
「まさか!彼女なのか!!?」
思い浮かべたのは、あの笑顔
俺だけでなく、いろんな人をキラメキで勇気づけてきた彼女
「これ以上は、知らなくてもいい事だ」
モニターを促す
モニターには、彼女の姿
「これで、役者は揃ったというわけだな」
これが、未来を救う・・・?
彼女を犠牲にして
おかしいじゃないか?
彼女がやりたいこと
彼女のすべきこと
『キラメキを届ける』
ただ、それが望みだというのに
なぜそれが、いけないことなのか?
「やらせねぇ・・・」
ぽつりとつぶやく
「そんなことやらせるもんかよ!!」
感情のままに叫んだ
「諦めねぇ!」
真理に言い放つ
「未来なんかより、今を変えてやる!!」
きっと、お前は知るだろう
その選択が『悪』であっても選ばなければならないことを―
オヤジが言っていた言葉が
聴こえた気がした




