#106 特別篇 クリスマスラブソング 10
12月25日 0:08
「見て、見て!雪だよ!雪!」
両手を広げ、嬉しそうに空を仰ぐ
聖夜の夜にふさわしい
その光景を、二人で満喫している
あの別れの日から、ちょうど1年
それぞれの道を歩き出した俺達
『誰かの背中を、後押ししたい』
『迷いの中に居る者を助けたい』
それが彼女達の見つけた未来
『大事な人の笑顔を護りたい』
俺にそう言ってくれた彼女―
俺は、俺で要ること
そうすることで、彼女の笑顔を得られるのなら
俺は、前へ進んでいける
「お前は、見つけられたのか・・・?」
彼女と同じように空を仰ぐ
みんなも、同じ空を眺めているのだろうか
同時刻
『クリスマスライブ』会場―
その熱気は、更に空気を震わせる
彼女達『フォーシーズン』
彼女達のファン達
「みんな!ラスト1時間、駆け抜けるぜ!!」
真夏らしい言葉で、盛り上げる
「最後まで、よろしくね~っ!」
秋乘も、両手を振ってステージを駆ける
「でも、風邪引いちゃダメですよ」
美冬は、あくまでマイペースだった
次の一瞬、辺りの風景が一転した
あれだけの輝きを放っていた『バベル』が『ライブ会場』が
街の全てが、闇に落ちた
「なに?」
「なんなの?」
困惑の声だけが響く
「大丈夫だ・・・」
彼女の手を握り締めて言う
闇の中、観えるのは
白い輝きを放つ雪だけだった
12月25日 0:35
『バベル制御室』
「何を始めるつもりなんだ・・・?」
非常灯で辺りが紅く染まる中、お互いに睨み合う
「未来を、創り変えるんだよ」
モニターには、数字が描かれている
その数字は、どんどん減少していく
「時が満ちる時、彼女の嘘が真実となる」
シリンダーの中で眠る彼女を、仰ぎ見て言う
「そんな未来を、あいつらは覆したんだろ!?」
怒りのまま叫ぶ
「アンタもそれを望んだはずだろうに!」
そんな彼女の表情は、変わらない
「私は、探していた・・・」
ゆっくりと椅子に腰かける
「私が観た『未来』」
「それは、あまりにも許しがたいものだった」
その言葉に、何か引っかかりをおぼえる
「アンタが観た・・・未来?」
彼女は何を言っている?
その物言いは、普通に考えてあり得ない
「おかしいと思うか?」
「・・・・・・・・・」
自傷する様に笑う
「私はかつて、一人の青年に導かれた」
「親とはぐれ、泣いていた私に彼らは優しく手を伸べてくれた」
その表情は、いつもの彼女の笑み
「夜の遊園地花火が鳴り響く中、私は自分の帰る場所へ帰れた」
「しかし、そこは『何も無い』ところだった」
朽ち果てた塔の下で、たった独りたたずむ
一緒に居た筈の両親たちも、そこには居ない
時を刻む、機械だけが私を見下ろしていた
「私は、自分のやるべきことを知ったんだ」
再び、タケルを見据える
「全てを、失ってでも未来を覆す!」
その手には、銃
小柄な彼女が持つには、いささか大げさで
子供のおもちゃのように映る
「それでも、俺はアンタを止める・・・!」




