#105 特別篇 クリスマスラブソング 9
「その嘘は、本当になる・・・?」
それは、わたしが望んだ世界
「好きなだけ笑えて、何処にでも行ける」
白い壁の牢獄で、空を眺めながら願った想い
「ここは、お前の望む世界じゃない」
真実を語った彼の言葉
「お前には、還る場所があるだろう?」
そこに、わたしの望む本当は無い
「もう、みんなの悲しそうな表情は見たくない」
だから、わたしは逃げ出した
「ここに居てはダメなの・・・?」
みんなが居て、みんなが笑ってくれる場所
「それは、望みじゃない」
悲しそうに言う
「それは、夢だ」
「全部、嘘で塗り固めた夢」
それでも、わたしは此処に縋りたかった
「ならば、それを事実に換えれば良い」
「私の知識ならば、それが可能だ」
女性が、ささやいた
「キミが、世界を創り出す鍵となる」
わたしは、それを受け入れた
「本当に、よろしいのですか?」
全ては、終わった筈だった
あの夏に、失敗した計画
『世界統一思考』
核であった彼女の自我の覚醒により
その役目は、失われてしまった
しかし、同時に新たな適合者を発見できた
彼女こそが、この『世界』の構築者
その『世界』は、来るべき絶望という『本当』を
塗り替える事すら可能なものだった
「それは、現実から目を逸らすこと・・・」
モニターを眺めながらつぶやいた
「それでも・・・・」
「それでも、人は勝ち取らなければならないんだ」
握りしめた拳から血が滲む
「黄昏の果ての滅びなど、認めるわけにはいかない」
「今、この世界から『悪』と呼ばれても・・・」
手にした端末に触れると、表示された数字が目まぐるしく変わり始めた
「すまないな、キミ達」
その場に居合わせた研究員たちに告げる
「我々は後に『救済者』と語られることは無いだろう」
「だが、今ここで行うことは紛れもなく我等に『未来』をもたらすことになる」
「誰かを犠牲にしての『未来』なんて認めるかよ!」
叫ぶように声が割り込んできた
「誰かが犠牲にならねばならんのだよ、大和武」
眼を合わせる事なくその名を呼ぶ
「みんなで、頑張ってこその『未来』だろ!?」
「そんな事など出来はしないよ・・・」
ようやく振り返りお互いの顔を合わせる
「あんたは、味方じゃなかったのかよ!?」
「・・・・・」
「あいつらや、俺だってそう思ってた・・・」
応えは返らない
「あの子もそうだ!!」
「あんたを信じたからこそ、別れを選んだんじゃないのか!?」
「応えろよ!先生!?」
12月24日 23:48
『クリスマスライブ』会場
「みんな!ハルカの為に、盛り上がろうぜ!」
真夏が、ファンに訴えると
それに呼応して歓声に包まれた会場の空気が震える
そんな中、空からはチラチラと雪が舞い降りてきた
「空も、盛り上げてくれていますね」
嬉しそうに空を見上げて、秋乘が言った
「ハルカ・・・負けないで!」
「どんな結末になっても・・・!」
美冬が祈るようにつぶやいた




