#101 特別篇 クリスマスラブソング 5
最近、ふと夢を見る
それは、世界が終わる夢
はっきりとしないけど
全てが、白い闇に消えていく
そして、残されたのは私だけ
そんな世界で、私は唄う
たった一人で、いくつもの夜を越えて
そんな日に限って、私は思い出す
『私は、何処から来たのだろう?』
歌を唄い始めて、6年余り
それ以前の事は、まだ思い出せない
いや、思い出すことを避けていた
なぜなら
全てを思い出したとき
これまでに手にした大切なものを、失くしてしまう気がしたから
あの夏の日、私は知った
自分の過去よりも、守りたい未来があると
これから創られていく思い出があるという事を
一緒に過ごしてきた仲間たちと
あの人が、教えてくれた
『諦めるな』と・・・
「状況は?」
特殊な装置の上に、横たわる彼女を眺めて問う
「意識そのものはまだ、固定されているようです」
パネルに映し出される数式を、指でスライドさせながら応えた
「ただ、深層意識にあるモノが曖昧になってきています」
映し出されたのは、彼女の精神グラフ
日を追うごとに、下降の一途をたどっている
ここの所、何かを思い詰めているようだった
個人の感情なので、口を出すわけにはいかないが
問題は『あるモノ』の状況だ
「消えてしまうというのか?」
背中越しに、パネルをのぞき込む
「解かりません、ただ・・・」
なぜか口ごもる
「ただ?」
「このままいけば、彼女の記憶は・・・」
目を伏せてつぶやく
「回避は可能なのか?」
「それも解かりません」
しばらくの沈黙
「わかった、あの素体の覚醒を急げ」
意を決して言った
「あれを、ですか・・・?」
戸惑いが隠せない
「最悪の場合に備えて、だ」
まさか、あれが必要になろうとは・・・
「このことは口外するな」
厳しい口調で言う
「・・・・・本人にも、ですか?」
「当然だ、このことを知れば彼女は自我を保てなくなるだろう」
それほどに、危険なものだという事だ
「その前に、彼女がもつか・・・」
ゆっくりと、寝息をたてて眠る彼女
彼女に残された時間は、既に無いのかもしれない
その前にせめて、為すべきことを成さねばならないだろう
「キラメキを、みんなに・・・か」
12月23日 17時25分
きらびやかに光を放ち、それはそこにあった
『バベル』
倒壊したはずの、空と大地の楔
それは再び、天を目指しその手を伸ばす
その真意は、未だ判らず
その存在は、未だ消えず
その場所は、未だ輝く
彼女たちの最大の舞台
『クリスマスステージ』
それはただ、人々にキラメキを与えるための場所なのか
それとも、再び混沌を呼び覚ます場所なのか
今はただ、人々をきらびやかに照らし出す




