story.7
まるで漫画のような
story.7
「あ、ココ、中等部に行くための渡り廊下。ココが一番近道だから覚えとけよ。」
目の前に広がる、長い廊下。
霧島教頭に一つ一つ案内されたが、どれも大きい。学園に入って一時間と30分。そろそろ慣れてきた。それに比例してお腹も減ってきた。持ってきた鞄の中から新しいお菓子を出し、封を切った。
「ここから、中等部。」
「まぁ、他にもいけるところはたくさんあるけど遠回りだからな。『天界』に入ったら、頻繁に使うだろ。」
使うのか。面倒くさい。でも行動範囲が広がるところに関しては嬉しいから文句は言えない。
「・・・教室は腐る程あるからな・・。どーせ覚えらんないだろうから、園守に聞いてやれ。」
「・・・覚えようと思えば、覚えますよ?」
ハッタリでも、嘘でも、冗談でもない。本当のこと。
「さすがだな。でも、園守の立場がねぇからな。そろそろ『天界』の案内をする。」
霧島教頭は別に驚いた様子もなく笑った。予想だが、榊さんは普通に驚く気がする。実際、たいていの、病院にいた大人達は天才だの、鬼才だのと騒ぎ立てた。
「あ、の、」
「なんだ?」
「教頭は、何か前世のバックアップがあるんですか?」
「っあはは!ないよ。あるわけないだろ!・・・それに。」
「それに?」
「『天界』の人間が言ってたけど、誰にだって前世はある。ただ、」
「・・・・?」
「普通の前世ならば、現世になんら影響がない。けど、お前らみたいに前世がもの凄い力の持ち主だと、影響が出るってわけだ。」
「その、もの凄い力の持ち主の代表的な例が神様とか、ってコトですか?」
「おお。キレが良いな。そーゆーコトだな。まぁ、お前は例外だと思うけど。」
「・・・何か分かってませんし、なんで私がそんな前世だったってわかるのか・・・」
「それはな、最初からそんなふうに独学で力を制御できることがすごいんだよ。普通、0組の生徒は制御できなくてココに来るってパターンが一番多いんだ。園守もそうだしな。知ってんだろ?」
りんごちゃんのことは、知っていた。最初は溶け込めなくて苦労したとかなんとか(本人ではなく、周りが)。
「お前は賢いから大丈夫だと親御さんから聞いている。賢そうだしな!顔が!」
「顔?」
「自覚ないなら良いや。ほら、ココが0組。」
北校舎6階の廊下の奥。明らかに他の空気と違うものがある。
『高等部 第一学年 0組』と、プレートに書いてある。中に入れば、そこは机が並べられているワケでもなく、会議室のような造りだった。
「あんまり、生徒達は使ってないみたいだな。教室なのに。ほぼ、『天界』のロビーとかを使ってるらしいし。」
教室の置くにはさらに扉があった。霧島教頭の後をおって扉の置くに進めば、階段とエレベーターらしきものが設置してある。
「・・・遊間?どうかしたか?」
「いや、漫画みたいだと思って。」
「・・・楽しそうで何より。っつか、あっという間にお前の当たり前になるよ。」
エレベーターを利用して、地下まで下りると、視界に明るい光りが差し込んだ。『北口‐1 入り口』と大きな自動扉に書かれている。
「ん。ついたぞ。」
中は、よくテレビでみる科学センターみたいだと思った。たくさんのひとがひっきりなしに歩き、話している。
「んあぁ!新入り?ってか救世主?かっわいー!」
おねーさんがいきなり飛びついてきた。何がなんだか。何か言おうとした瞬間、霧島教頭がおねーさんに鉄拳をお見舞いしていた。
「持ち場に戻れ!持ち場に!」
コッチ来い!と腕を引っ張られ、先に進む。後ろから「教頭センセこわーい」と声が聞こえ、霧島教頭がチッと舌打ちをかます。怖い。
「教頭。」
「ん?」
「そういえば、敵ってなんですか?」
「は。」
「敵。」
「お前・・・分かってないのか。」
「りんごちゃんが知らなくて良いって。」
「園守の言う事を真に受けるな。・・・あいつ、何を思ってそう言ったんだ・・・。」
少しの沈黙の後、霧島教頭は口を開いた。
「・・・前世の力を、『天界』みたいに良いことに利用しようって考えるヤツもいるってコトは、悪いことに利用しようと考えるヤツもいるってことだ。」
霧島教頭は話しながらも私の腕を引っ張って奥へ歩いていく。
「その悪いことに利用しようと考えている奴らはどうも無限にいて、」
『モニター室』と書かれている部屋に入る。
そこで見たのは、
「奴らは、次元を喰らう。」
漫画に出てくるような怪物だった。