story.5
お姫さまはいつだって勝者だと思わせましょう
story.5
「えぇっと・・・最初に職員室に・・・」
うーくんと車に乗って、ご飯食べて。まぁうーくんは食べ続けてるけど。持ってきたメモ帳と学校のパンフレットを交互に睨む。改めて確認すると、ややこしい学校だ。うーくんがげんなりするのも分かる気がする。
「りんごちゃん、何してんの?」
「うーくんは手続きって言うか、挨拶しなきゃでしょ?っていうかいつまで食べるつもり!?」
「え?うーん?まだ。」
うーくんは何が可笑しいのか、という顔で首をかしげた。身長の割りに、華奢な体格。食べ物は一体、どこに消えていくんだろう。
「てゆーか、学校、おっきいねぇ。」
間延びした、うーくんの声。感心しているのか、あきれているのか。
「うん。幼等部からあるし。ホラ、今は白い壁でしょ?」
「うん。」
「そこは中等部なの。青い壁になったら、私達が通う高等部。」
「お。青になった。・・・・入学式とかしないんだねー。パンフに載ってなかったし。そっちのほうが楽でいいや。」
真っ白だった壁が真っ青にかわった。・・・そういえば、入学式なんてのは中等部の時もなかった気がする。エスカレーター式だし、そんなモンかもしれない。
いや、0組だから・・・
「それとも、0組はかんけーナイってことかもね?」
心を、うーくんに読まれた気がした。不意打ちすぎて、えぁ、うん、なんて言葉にもなっていない言葉しか出ない。
「?どうしたの?」
「・・・なんでわかったの?」
「うん?何が?」
「わかってないならイイケド・・・。」
心臓がびくびくしてるのがよくわかる。心臓に悪い。まったく!
「とりあえず、東校舎からが一番職員室に近いのかな?」
なんでそんなことまで、と思い隣を見ると、あたしが持ってきたメモ帳を眺めていた。
「そっそう!」
「わかった。わざわざ調べてくれたんだ?ありがとう。」
あぁ、しあわせ。そうやって昔からどんなことでも気付いてくれる。そんなうーくんとこれから毎日一緒だ!親友としてとても嬉しい!それをこなえだ榊に言ってみたら、「宴君の気持ちは無視か」と、冷めた目で見られた。言わなきゃ良かった(しかもうーくんを名前で呼ぶとか!)。
うーくんが迷惑であたしなんていらない、って思っていたら間違いなくあたしは死を選ぶ。断言できる。榊め、恐ろしいコトを。気持ちを無視してるとかじゃない。あたしが嬉しいの、わかってくれるよね。うーくん。
「・・・え。まさかの無視?りんごちゃん。」
「!えぇ!?何!?無視じゃない!!!」
自分の世界に浸っていたら、うーくんが怪訝な目でこっちを見ていた。そんな目も好きだけど。
「・・・うーくん、」
「何?」
「正直に言ってね?」
「え?うん。」
「もしかして、迷惑?」
うーくんは目を少し見開いた。
「いや?りんごちゃんが嬉しそうだし、平気だけど。」
いたって普通のテンションで返ってきた。
「ちょ。何ニヤニヤしてんの?」
「べっつにぃー?」
やっぱり、私の親友である。
ほれ、みたことか。榊。
私の勝ち!
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何を言い出すかと思えば。思わず食べることをやめてしまった。
いつも通りの答えをだせばニヤニヤしだした。何を考えてるのだろうか。