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神様がいなくても世界は廻る  作者: おさとう
1.全反射の空模様
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story.4

不吉な程に綺麗なのは何かの前兆か


 story.4


「うぅぅぅくん!起きて!さぁがっこー行くよぉぉ!」

 布団の外でうるさいのはりんごちゃんだ。

 「・・・・りんごちゃん。」

 「ん?起きた?おっはよう!」

 「・・・・おはよう。集合時間は9時でしかも集合場所は病院の中庭じゃなかった?」

 時間が過ぎるのは速いってコトをようやく知った。『天界』に入るって事になってからは何もかもがあっという間だった。

 そして、今日。まぁ転校というか、編入のほうがあっているだろう(今までの学校には片手で数えるぐらいしか行ってないし)。

 「え?でもあたしうーくんに早く来て欲しくって!」

 ・・・昨日、『うーくん!?明日だってちゃんと分かってる!?とりあえず、9時に中庭で待ってるから!来てよね!』、なんて言う電話をいきなりよこして、いきなり切ったクセに。しかも今は7時。部屋に入ってきたことは長い付き合いだし何も言わないけど。限度ってモンがあるだろう。

 「・・・え。もしかしてめーわく?」

 「迷惑のほかになんて言うのかな。」

 「ゴメンナサイ。」

 「そーゆーコトじゃ、良いけど。」

 「ホント!?じゃぁ準備しよう!歯磨いて!顔洗って!」

 言われるがままに準備に入る。第一、いつも気になるけど、どうやって私の部屋に進入するんだろうか。謎である。

 「終わった?じゃぁ!着替え!」

 「制服は・・・ないんだけど。前の学校ので良いかなぁ。」

 「『天界』の生徒は基本指定されてないしね。『天界』が用意した中から選ぶか、それっぽいのに学園指定の校章バッジつければそれでいいみたい。」

 「ふぅん。ちゃんと榊さんの話聞けばよかったかな。」

 「いいよ!榊なんて!・・・うーくんはコレ!準備したから着て!」

 りんごちゃんは持ってきた紙袋から制服一式を出し始めた。なんでこんな準備してるんだろう。

 「って。りんごちゃん。」

 「ん?なぁに?」

 「これズボンじゃん。別にいいけどさぁ。」

 「うーくんこれ絶対格好良いよ!もちろんスカートのうーくんもモデルさんみたいで素敵だけど!」

 ・・・まさかコレ見たさで早く来たんじゃないよね?・・・そうなんだろうな。でもそんな眼差しを向けられたら断ることもできなく、

 「分かった。着る。」

 「うん!」

 まぁいっか。動きやすいし。反論はない。どっから持って来たかは知らないけど。

 「着替え終わったよ。」

 「!」

 鞄の中からしきりに携帯電話を探していたりんごちゃんに声をかけると、バッと顔を上げた。

 「うーくん!似合ってる!すてきだよぉぉ△★%&♪!!?$#@!!!」

 すてきだよ、とまでしか聞き取れなかったけど、ヘンではないみたいで良かった。ニコニコしながら写真撮ってるのは怖いけど。

 「うーくん。学校の名前、覚えてる?」

 「さすがにね。『九十九(つくも)学園』、寮生活の学校だよね?」

 「そうそ。まぁ寮って言っても要望があるなら自宅からの登校でも良いらしいし。でもあそこらヘン、学校の団地だし。住宅地ないからほとんど寮生活みたい。『天界』の生徒は寮って決まってるけどね!」

 「そっか。・・・気になってたんだけど、『天界』の生徒は0組に編入ってパンフレットに書いてあったんだけどアレって何?」

 「『天界』の生徒は、特待生扱いだからね。何があるかわかんないし。九十九はクラスもちゃんとあるけど授業は単位制だから、個人の自由に時間割が組めるんだよ。」

 「なんか、ややこし。それに高校の授業ってのも簡単でつまんなそうだし。」

 「またそーゆーコト言ってぇ。丸一日サボるとか、ダメだからね!」

 「ハイハイ。」

 九十九学園は幼等部から高等部まであり、大学も付属してるらしい。私みたいな途中からの編入は珍しいとか。

 「よし!良い?行くよ!朝ごはんは学校が用意した車にあるから!」

 「あ、待って。一般病棟から言ったほうが早いよ。」

 「おぉう!さっすがぁ!」

 「まぁね。一般の方には最近言ってないけど。」

 廊下を歩いているときも、りんごちゃんはハイテンションだった。楽しそうで何よりだから突っ込まないけど。

 「おわ。すご。」

 一般病棟の中に設置されている公園は、桜がちょうど満開だった。

 「ね!さっき来たときびっくりしたよ。」

 「全然知らなかった。」

 「そうなの?」

 「さっき言ったじゃんか。それに、特別病棟はこんなんじゃないし。」

 そう言えば、りんごちゃんはそうだね、と苦笑いをこぼした。私は病院も家みたいなものだから何も思わないが、りんごちゃんは思うところがあるのだろう。

 特別病棟はなんというか、殺伐とした雰囲気で一般病棟のような賑やかさはない。その雰囲気が、自分は普通じゃない、と言われているようだとりんごちゃんは昔言っていた。

 桜が、ヒラヒラと目の前に落ちてきた。

 桜は、私が幼い時に亡くなった母がとても好きだった。

 儚い、桜。


 それは、これから何かおこると示しているのか、不吉なほど、綺麗だった。


 

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