story.3
自分の意見が一番なのです
story.3
「うぅぅくんあぁあ恥ずかしいやめてぇぇぇぇえぇ?うーくん!どうしたの?起きて!寝ないで!」
どうしてかと言えばお前のせいだ。目の前で遊間宴を揺さぶる園守を睨んだ。そうすれば気付いたのか、何、と明らか通常の声でない様子で今度はコッチが睨まれた。
「・・・席を、はずしてくれないか。」
「イヤ。何で榊の言うコト聞かなきゃいけないの?うっっっっざ。」
ああ言えば、こう言う。はじめて会った時から相変わらずの上から目線的態度。最初は何故彼女にこんなぞんざいな態度をとられるのか理解ができなく、先輩に相談したところ、
『仕方ない。あの子は。』
と、だけ言われ、今に至る。後から聞けば天性の男嫌いだそうだ。男だったら『天界』の先輩だろうが上司だろうが、果ては学校の教員の方々にもそんな態度で、美少女と呼ばれる外見とは裏腹にかなりの毒舌。高圧的な態度も重なって『天界』では『マリーアントワネット』と言う異名まである、と聞いた。
園守りんご。彼女も『天界』の一員であり、前世の能力がバックアップされている。彼女の前世もやや複雑で全ての始まりである『エデンの園』の管理人だった人物である。
管理人から受け継いだ能力は、簡単に言うならば、『能力を管理する力』で、主にサポートにまわってもらっている。とどのつまり伝達係である。
「榊!うーくん来るの?うーくん濁して教えてくんない!」
それもそのはず。まだ遊間宴からは承諾を貰っていない。
「うぅーん・・・なんかピンとこないんだよなぁ」
どうしようかなぁと彼女は首をかしげている。かなりシビアな問題だろう。死ぬ、なんて事態は起こさせないが可能性がゼロとは限らない。ましてや前世の記憶もないのだから。そして断言できるが今までのような生活は送れないだろう。
・・・・もう一度本部に戻って出直したほうが最善かもしれない。
「まぁいっか。」
あっさりとした答えに思わず持ちかけていたノートパソコンを落としそうになる。
「え!良いの!うーくん!やったぁぁあたし嬉しい!」
園守はそこらじゅうを飛び回っているが、これがどういうことなのか理解しているのだろうか。
「・・・いいのか?今のような生活はできないぞ。」
「まぁ15年間この生活だったんでもう良いです。なんか飽きてきたし。まともに学校なんか行ったことなかったから興味もあるし。りんごちゃんも前から誘ってくれてたし。」
「うんうん!あたしもいるし!」
「そうか・・こちら側もとても嬉しいし歓迎する。君には今年の4月、高等部1年からはいってもらおう。」
『天界』の子供達は特定の学園に通ってもらうことになる。今は2月下旬だが、それなりの手続きになるので時間が必要だ。
「分かりました。えっと・・榊さん?」
「あぁ、頼む。・・なんと呼べば良いかな。」
「宴。宴で良いですよ。」
「わかった。また後日改めてうかがうよ、宴君。」
「はぁ?名前呼びぃ?榊のくせにぃ・・・・・」
「良いんだよりんごちゃん。」
「えぇー・・・うーくんが言うなら・・・うー・・・」
「・・・園守。いい加減にしてくれないか」
「うっさい榊!」
「りんごちゃん・・・・。」
ひとまず、一件落着か。そう思い安堵の息を吐くと少女、いや宴君は始めて俺の前で笑った。