story.18
少女Rの思考回路
story.18
2時間目、現代文の授業。そうとうヒマだけれど、あたしがそこそこの点数をとれる数少ない教科でもある。
「ここの部分では、『私』の『友人A』に対する心情を、」
ぼんやりとした頭の中に流れ込んでくる先生の声。2時間目だと言うのに、周りの人間は欠伸をこらえていたり、既に机に突っ伏していたりと、様々だ。現代文の先生は性格もかなり緩いから、わざとこの退屈な講座を多く選択し、貴重な息抜きの時間として利用している生徒も少なくない。
そういえば、うーくんは無事発見されたのだろうか。プライドを犠牲にしたんだから、見つかってほしい。第一、あの、冥詞都に頼んだことが気になってしょうがない。あのクソ男、うーくんに迷惑をかけていないのだろうか。
(サボれば良かった・・・・。)
よくよく考えてみれば、無謀だ。この広い学内で、あの親友を見つけ出すことは。うーくんは目を放した隙にフラフラとどこかに行ってしまう。一度も面識が無く、ましてや彼女の性質も知らないのに探すなんて。
(使っちゃおうかなぁ。)
あたしのチカラはバリバリの討伐員に比べて全く派手なパフォーマンスはない。と言っても、使っている間は周りの声は聞こえなくなるし、『天界』のモニター室では、リアルタイムで誰がチカラを使っているのか、ポイントが減少していくのであたしが授業中に使っている事なんて一発でばれてしまう。
でも、自分のことより、うーくんのほうが心配だ。本当に。何かあったらどうしよう。冥詞なんかに任せないであたしが行けばあんなことは・・・・なんて事態になったらもうあたしはこの世で生きていけない。
「あぁあぁぁぁぁ!!!もぉおぉう!!」
気が付いた時には叫んでいて、先生含めこの教室にいる人間全員がコチラを向いていた。
「平気か、園・・守?」
「あぁぁー・・・・。ハイ。」
こわごわ尋ねてきた先生に曖昧な返事を返して机に突っ伏した。授業が再開される。嫌な予感がする、とても。もし、うーくんが無意識にチカラを使っていたら非常に危険だ。コントロールができていないのだから。
うーくんは自分のチカラに興味がない。そんなことより、あの子にとって難しい数式や、暗号のように並ぶ原子記号の方がよっぽど魅力的なのだ。チカラについて無知だから(うーくんの身内は知ってそうだけど)精神的なコントロールはできても実質チカラのコントロールは難しい。精神的なコントロールができていることは凄いのだが、それは本来のうーくんの性格からだろう。
何回か、見たことがあるうーくんのチカラ。二対の鎌。あれはナゾだ。どんな姿にも変形する事ができる。うーくんの気持ち次第らしいけど。それ故にコントロールするのは普通の前世をバックアップしている人間の何倍も大変だ、と言う事を、うーくんのお父様から昔聞いた事がある。
心配なのは、冥詞都もそうとう強いチカラを持っていることにある。もし、何かのはずみでアイツのチカラに感化されたら・・・・。
(もう、無理無理。耐えられない。)
能力を使うこと決定。異論は認めない。神経を集中させる。先生の声が聞こえなくなる。・・・・・よし。
「・・・?・・・・!!」
これは、この付近で、誰かが、いや冥詞が結界を張っている。ごく微量にポイントが減っているから、おそらく結界につかっているのだろう。
(え、嘘。じゃぁ、交戦中ってこと?じゃぁ、)
「っ!先生、気分、悪いんで保健室、行きます。」
「え?・・・あぁ、気をつけて。」
適当な言い分をつけて教室から出る。この近くにいるはずだ。『天界』の中で、学生でしかも非番の人間は原則能力は使わない、と言う決まりがあるが、うーくんのためなら迷わずフルに使わせてもらう。
「伝達係を、ナメないでよねっ!!」
冥詞の他に、もう1人ポイントが減っている人間がいる。今までとは全く違う、でもどこかで知っているような、
間違い無く、うーくんの。