story.16
それを『出会い』と呼べるのか
story.16
高等部の校舎はあまり慣れていない。と言うか、来る用事もそんなにないからだ。自分は中等部の生徒であって高等部の生徒ではない。なのに、だ。
「意味分かんねぇ。」
この言葉がでてきたってしょうがない。きっと。手に持っていた書類の上に桜の花びらが一枚落ちてきた。
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今日は午前中に授業がないから、いつも通り訓練室に行っていた。最初のプログラムが終わったところで、そもそもの元凶に鉢合わせしたのだった。
元凶、自分が毛嫌いしている人物でもある園守りんごは突然やってきて書類を押し付けてきた。
「うーくん、じゃなくて最近来た編入生、午前中に探しといて。暇なんでしょ?午前中。言っとくけど、好きでアンタに頼んでるんじゃないからね。詩南さんが言ってたんだから。」
「はぁ?暇じゃねぇよ。つうかいきなりやって来て何なんだよブス女。」
「ブっ!?アンタねぇ後輩のクセに・・・・って時間!良い!?うーくんに迷惑かけんじゃないわよ!後、絶対失礼な態度とかすんな!カス!!」
それだけ言うと園守は走り去っていった。
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モニター室の室長が書いたメモはそんなに役に立たない気がする。まず、写真がないから顔が分からない。それに、
<とくちょう>
・美形!!!!天使!!!
・オーラで分かる。
「・・・・・。」
どうしようもない苛立ちが湧き上がってくるのが分かった。どうすんだ。本当に。授業が終わる前に済ませたいのに。人が集まっていると0組だ、なんだと騒ぎ立てられる。特に女子。更にココは高等部で見慣れない自分がいたらもっと騒がれるのだろう。
気が付いたら、校舎裏の、裏庭にいた。中庭と違い、授業中は本当にひとがいない。気配もなく、そう、気配もないのに、
「んだ、これ。」
立ちくらみと言うのか、頭が痛い。ココから離れなきゃいけないのにいなくてはいけない感じ。最近よく見る夢のフラッシュバックが脳裏に映る。
「って!オイ、」
やばいと思った瞬間、現実に引き戻された。目の前には四人の男子生徒。高等部の生徒だろうかネクタイの色が中等部と違う。
「何ぶつかってんだよ。いってえな。」
「おい、黙ってんじゃねぇよ。」
「つうか、お前0組じゃんか。0組の冥詞。」
「うぉ。ホンモノ。」
ベラベラとしゃべり続けている四人の会話がぼんやり聞こえる。上級生にぶつかったことなど、もうどうでも良かった。
「めんどくせぇな。授業あんじゃねぇの?」
敬語なんてものは使わなくてもいいだろう。こんなの相手に。『天界』の上級生に敬語を使う事も滅多にないし。
「あぁ?お前何て、」
1人がこちらににじり寄ったときだった。後ろにあるベンチにアメが空から落ちてきた。
厳密に言えば、空からではなく隣にある木からだったが。空からでも、木からでもオカシイことには変わりない。
「うぇ?あ、やっばぃ!?」
ヘンな声がしたと思うと、今度は木から人が落ちてきた。
「は?」
自分も含めその場にいた五人はただ呆気にとられていた。落ちてきたのだ。人間が。その人物は上手く受身をとると、体をさすりながらこちらを見た。
「え?あ、いじめ?」
半分寝ぼけた顔をで首を傾げる。中世的な顔立ちの美形だった。ジャージを履いているが、多分女だろう。
「あ?関係無いヤツは首突っ込むな。」
上級生の1人が低い声で凄む。
「首突っ込むなって・・・・。君らの声のせいで起きちゃったのに。」
そう、ブツブツ言いながら彼女は木の下にあった鞄から国語辞典を取り出した。
「なんだよそれ。俺らとやろうってか?」
また1人が彼女に歩み寄る。オイ、とさすがに声をかけようとした時、
「りんごちゃんが護身用とか言って昨日くれたんだけどねぇ。うける。まぁ、役に立ったから後でお礼言わないと。」
それだけ言うと彼女は国語辞典で上級生の頭をぶん殴った。