story.13
依存しているのはだぁれ
story.13
また榊さんとりんごちゃんが言い合っている。いや、言い合ってるのではなく、りんごちゃんが一方的に言い倒しているのか。まぁどちらにせよちゃんとした会話は成り立っていないのが目に見えて分かる。
「榊さん来たよって言ったのに。」
ココ最近、りんごちゃんは考え込むことが多い。私も人のハナシを真面目にいつも聞いている時なんてあまりないから人のことは言えないのだが。
「悪いな。こんなに大勢の大人が君を見に来て。落ち着かなかったら、上と相談して後日報告という形にしてもらえるよう、交渉するんだが。」
早々にりんごちゃんとの言い合い(?)をきりあげた榊さんが私のほうに向き直って言った。確かに、さっきよりも人口密度が凄い気がする。
「そんなの当たり前でしょ!!最初から配慮してよ!うーくんがストレスで死んじゃったらぶっ殺すから!!」
死なない。死なないから。ぶっ殺すとは物騒な。
「あぁー・・・良いです。別に。」
「そうか?遠慮しなくても、」
「うーくん?良いの?」
さえぎるな、と榊さんがりんごちゃんを睨んだ。
「うん。いいよ。りんごちゃんがいてくれれば安心だし。」
「うっうーくん!あたし!ジャマじゃない!?」
「もちろん。」
邪魔だったらこんなに一緒にはいないだろう。りんごちゃんの機嫌が直ったのなら良いんだけど。
「そろそろ、いいかな。」
話していると係りの人が来て、私を別室に行くように指示した。榊さんの話では、この検査をすることである程度、どんな力を持っているのか分かるらしいのだが、私はその例外中の例外というやつで。お察しの通り、どんな力なのかははっきりしないだろう。
「期待するなってコトだよね。してないけど。」
別に本音をぶちまけてしまえばどーでもいいのだ。いままでなんとなく、いや、身内の話からでも自分が『普通』ではないことぐらいは分かっていたことだし。それ以上のことを知りたいとも思わなかった。不思議と。そんなことを不思議がっていたり、奇跡だと騒ぐのであれば、自分がこうして生きている事も相当、異常だ。
「園守は、待機。」
当然の様に私と一緒に部屋へ入ろうとしたりんごちゃんが止められる。
「そんなぁ!!だって私は、」
「良いから。ほら、検査できない。」
無理やり、りんごちゃんは外へ追いやられた。正直、この検査の結果よりも、さっきりんごちゃんが言いかけた「だって私は、」の続きのほうが気になる。そうだ。私とりんごちゃんは元はと言えばどんな関係だったんだろうか。
「力、抜いて。そう、だんだん音が聞こえなくなるから。」
係りのひとの声が遠くで聞こえる。そんなことはどうでもいい。どんな関係?家族、ではないか。血は繋がってないし。友達、親友?なにか軽すぎる気もするし考えようでは重過ぎる気がする。
もっと昔から、小さいときから、いや、そんなんではない。もっと、あぁ頭がぐるぐるしてきた。たまになる。ぐるぐるぐるぐるぐる。
・・・・と・・・を聞かせて
私は・・・外に出られないから
・・・・話が・・・楽しみ・・・の
あ。と思ったときには意識が完全に戻ってきていた。当たり前か。それより、視界が赤い。警鐘なのか、サイレンが鳴り、ランプが点灯している。これ、あれだわ。ヤバイヤツじゃない?
なんて冷静に(?)思考を巡らしていると、あの子のほぼ泣き声にしか聞こえないカタチで、自分の名前を呼ぶ声がした。
あの子のこの声は好きではないのに。