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神様がいなくても世界は廻る  作者: おさとう
1.全反射の空模様
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story.11

まだまだ、こども


 story.11


 随分美形。園守ちゃんと並ぶと本気で絵になるなぁ。

 私、梶那詩南(かじなしなん)22歳はぼんやり2人を見つめていた。

 「お疲れさま。」

 霧島先生が扉の前で上から見守っていた私に声をかけた。

 「気付いてたんですか。」

 「大体ココにいると思ったから。」

 モニター室はもう一つ、上の階がある。明るいモニター室だけど、みんな二階もありますって言うまであまり気が付かない。

 「てか、先生どっか行くの?2人まだいますけど。」

 「あぁ、授業。このあと5コマも入ってる。」

 先生が疲れた顔を見せる。先生のほうがお疲れさまだ。

 「んじゃ、もし2人が聞いてきたら言っといて。」

 「りょーかいです。」

 先生はヒラヒラ手を振って外へ出て行った。

 「真剣に!」

 園守ちゃんの声が奥のほうから聞こえてくる。隣の美形ちゃんはぼんやりモニターを見つめていた。

 「キモすわってるなぁ。」

 私がココに来たのは13歳のときだった。不安で不安で仕方なかったことは覚えている。ソレに比べ、美形ちゃんはどうでもいいんですけどってかんじだ。

 でもいい子そうだなぁ・・・友達になれるかなぁ。相当凄い子ってコトは聞いてる。私みたいなの興味ないかな。ちょっと前、園守ちゃんが「面白いことには興味しめすよ!」といっていた気がする。・・・・私面白いトコなんてないんだけど。

 私も一応、前世持ち。記憶の女神、ムネモシュネという神様。まぁ運動能力なんてものは持ち合わせていないし、討伐なんてできたもんじゃない。

 私にできることは、皆のポイントや体調、状態を日々チェックし、覚えてまとめること。したがって此処、モニター室が私の本拠地だ。

 「詩南さん!先生は?」

 元気な園守ちゃんの声。見下ろすと園守ちゃんがみえる。だけど彼女の体の向きは私と逆方向。ドコにいるか分かってないだろ。

 「こっち。園守ちゃん。」

 「!こっちか!」

 園守ちゃんがくるりとこちらを向く。隣で美形ちゃんが「二階あるんだ」と驚いている。

 「先生、授業あるから戻るってさ。」

 「そうなの?あ!うーくん!」

 うーくん、と呼ばれた美形ちゃんは何。と園守ちゃんに近づく。

 「詩南さん!ココの室長さんだよ。これからもかなりお世話になるから。」

 「しなん、さん。よろしくお願いします。遊間宴と申します。」

 彼女が深く頭を下げたので慌てて自分も椅子から立ち上がり、頭を下げる。

 「梶那指南です!こちらこそっ」

 頭を上げればふわっと笑った顔が見える。ふぉぉぉぉぉ!いい子だ!笑顔で分かる!いい子だ!

 「えっと、遊間ちゃんって呼んでもいいかな。」

 隅の階段を下りながら聞いてみる。大抵の子は良いって言うんだけど、ヤダって言う子もいるからなぁ・・・。

 「なんでもいいですよ。りんごちゃんなんかうーくんだし。」

 「えっ!うーくんって呼ぶのもしかしてダメだった?でももう何年も前からこう呼んでるし、」

 「いいって。ダメっていってないよ。」

 「っ!うーくん!!!」

 園守ちゃんが遊間ちゃんに盛大に抱きつく。微笑ましいなぁ。

 「っと。なんかお腹すいた・・・。」

 「いつもでしょ!まだやる事あんだから我慢!」

 「まだあるの?もういいよ・・・・。」

 遊間ちゃんはもうげんなりってかんじだ。おそらく、園守ちゃんにお菓子を取り上げられた時点でブルーになってしまったのだろう。最初に来ていたときは先生も何も言わないし、いきなり自分が出てきてもアレかなぁ、と思い、注意する事ができなかったのだけれど。

 「食べるの、好きなんだ?」

 思い切って聞いてみると、園守ちゃんが勢い良くこちらを向く。

 「よく食べるどころじゃない!うーくんホントに食べるの好きだよね!」

 「うん。おいしいものは、みんなすき。」

 「そうなの?じゃぁ、これ。」

 ポッケに入っていた棒付きキャンディーを手渡す。

 「・・・っ!」

 ぱぁぁっと遊間ちゃんの顔が輝く!あげてよかった!ココ飲食禁止だけども!天使!天使がいますよ!みなさん!

 「ありがとうございますっ」

 「外!でてから!」

 袋を取ろうとした遊間ちゃんの手を園守ちゃんが制す。遊間ちゃんもヘンに対抗するわけではなく黙って手を下げる。伊達に長く親友やってないなぁと、しみじみ感じてしまう。

 「じゃ、うーくんそろそろいこっか?」

 「うん。そーだね。」

 「詩南さん、ありがとうございました。」

 「いえいえ。またきてくれると嬉しいな。」

 きっと彼女は戦闘員として働くからそうそう会えないかもだけど。もう少しおしゃべりしていたかったな。

 「いくよ!」

 園守ちゃんが元気よく出て行く。

 「これからお世話になります。あ、あと」

 「うん?何?」

 「私よくお菓子とか食べてるんですけど、」

 「そうみたいだね。」

 ウィィーンと静かな電子音をたて、自動ドアが開く。

 「飲食可能にしてくれたら嬉しいです。」

 「え?」

 「よく来ると思うんで。」

 「へ、あ!」

 その言葉の意味を理解してもう一度声をかけようとした時には、遊間ちゃんはもう扉の向こうだった。


 仲良く、なれたと認識していいのだろうか。もともと大事な機材とかに食べ物や飲み物がかかったら困るってことで禁止にしていたのだけれど。二階だけなら、彼女なら良いんじゃないかと思う自分がいた。


 でも、要望を通そうとするあたり、こどもだなぁ。


 (人を引き寄せる力があるのかも。)




 


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