story.10
さすがです
story.10
いきなり飛び込んできたりんごちゃんにお菓子を取り上げられてしまった。どうやらこの部屋は緊急時意外飲食禁止のようだ。
「もぉぉぉ・・・説明したかった。」
りんごちゃんが恨めしそうに霧島教頭を睨んだ。
「そう睨むなよ。まだ肝心なとこは話していない。」
肝心なこと?まだ肝心なことがあるのか。もう今までのことだけで十分肝心だと思うのだけれど。
「まー・・・それなら良いかなぁってハァ?」
「園守、意味が分からない。いつもか。」
いつもなんだよ、わかんないのは、先生。心の中で先生に呼びかけると本当に先生と目が合って思わず笑った。
「ソコ何笑ってんの?ってそうじゃない!そうじゃなくて!」
「りんごちゃん?意味分かんないよ?・・・いつもか。」
ブッと先生が吹き出し、声を殺して笑っている。りんごちゃんは「2人して!」と大きい独り言をつぶやきながらモニターを指差した。
「こんなD級レベルに何てこずってるって話!」
D級。よく分からないけど低いレベルみたいだ。
「そうなの?」
「そうだよ!っあ、説明するね!」
りんごちゃんは私の手を引っ張って奥の方へ進んでゆく。奥の方にも大きなモニターがあって無機質な電子音がたびたび聞こえてくる。
「ココ、ポイントってあるでしょ?」
指を指されたところを見ると、『討伐者のポイント』と綴られている。
「ゲームみたい。」
「真剣に!」
真剣にゲームみたいだと思ったのに!まぁこれ以上言う必要もないからりんごちゃんが続きを言うのを待った。
「この『ポイント』って言うのはね、私達のなんていうかなぁ、総合ポイントなの!」
「総合、ポイント?」
「そ。体力とか、その人の身体能力とか、全部まとめてポイント化してるわけ。」
「へーぇ。すご。じゃぁ高いほうが良いってこと?」
「そうそう!それにプラスして私達前世持ちはポイントが加点されるんだよ。前世の力だって無限にあるわけじゃないからね。」
「そうなの?てっきりずっと使えるモンなのかと思ってた。」
「まぁ、あくまで前世だしね。その前世がどれだけの力を持ってたかにかなり左右されるかな。それに、戦い続ければポイントは必ず減るから、考えて戦うことも必要になるね。」
「ゲームみたい。」
「真剣に!!!」
「ゴメンナサイ。」
「いいけど・・・。」
「あのさ?気になってたんだけど、ポイント0になったらどうなんの?」
目の前に写る『ポイント』とやらも、少しずつ減少しているのが分かる。
「瀕死状態になるか、最悪死亡って聞かされた。なったことないから分かんないけどね。」
「え・・・死ぬの?まじ?」
マジか。死ぬのか。ゲームどころの話じゃなくない?リプレイとかないよね?いいの?
「だから!ポイントが50を切ったら、『強制回避』になるんだよ。」
「なにそれ。」
「皆は『エスケイプ』って呼んでるんだけどね。ココ、『天界』本部に強制的に返されるの。まぁ、無線とかで自分がどんな状態にあるか分かるからその前に帰還するのが基本かな。」
「帰還?ココに?」
「次元空間で討伐してるから何でもありなんじゃない?」
「なげやりだね。」
「言わないで。」
自覚があったのか、驚き。
「普段は結界張ったり、警戒区域とかでやるから問題ないけど、一般に危害を与えないのが第一ね!」
「おぉ・・了解。」
エヘンとりんごちゃんが胸を張る。さすがは世界を守るヒーロー。