story.8
そちらと、こちらと、どちらが敵か
story.8
混乱、するよなぁ。
隣で幼い子供のようにモニターを覗き込んでいる編入生で、特待生で、もしかしたら救世主になるかもしれない学園の新しい生徒、遊間宴を見ながらのんきに思ってしまった。
私もさすがに、はじめて見たときは本気で驚いたし信じられなかった。連れてきてくれた0組の生徒の前で教頭にあるまじき混乱ぶりを晒してしまったのを覚えている。
「きょ、うとう!かっこいいですね!まんがみたい。」
小学生か。お前は。
混乱すると思いきや目が輝いている。小学生か。
「驚かないとは、余裕だな?救世主候補。」
「いや?前世のバックアップだなんて馬鹿げたモンが実際にあるのにコレが信じられないとか可笑しいでしょう?」
あはは。と乾いた声で彼女は笑った。救世主候補のネタに触れないところを見ると興味はさほどないのだろう。
「・・・次元を食らうってなんですかね?」
ひとしきり見て満足したのか、いや、飽きたのかもしれない。モニターから視線をはずし、許可もなくモニター室を物色し始めた彼女はポツリとつぶやいた。
「こっちの世界とは違うところから奴らはくるらしい。違う次元からな。遊間、カンの良いお前のことだから分かると思うが、」
「その理由は不明。んでも危害があるのは確かってところですか?ってゆーかそのゴーグル?なんですか?」
「今気付いたのか。んでやっぱりカンが良いな。ゴーグルつけてんのはお前らと違って見えないからだよ。」
「違って、見えない?」
「お前らと違ってな。だから、一般人にも見えない、分からない、知らないってことだ。」
「なるほど。それをつければ一般の方々も見えると。」
「そう。それに、肉眼でそいつらを見ることができるってコトが前世の力を引き継いでいるって言う、何よりの証拠だな。」
「んー・・・めんどくさいですね。めんどい。」
「園守に騒がれるぞ。」
「やめてください。ホントになる。」
ヒラヒラと片手をフリ、少し困った顔をした。だが、本当に困っているようには心底見えない。
「つかみ所がないってな。」
その声は聞こえなかったのか、彼女は気にせずお菓子を食べ始めた。飲食禁止の張り紙は見ていないのか。
「あっやっぱいたぁ!うーくん!ココ飲食禁止なの!」
けたたましくドアを開けて入ってきたのは、遊間宴のお目付け役ともいえようか、園守りんごだった。
ビクリと肩を揺らした遊間宴はコチラを見て、
「ホラ、センセイが言ったから。」
まるで悪戯がばれてしまった子供のように笑った。