2、初戦
「さっきからうるせえ!!昼寝くらいさせろ!」
なんだ、こいつは?
いきなり出てきて、状況わかってんのか?
パッと見は普通の奴だが、3年なのか?
そんな口きいて大丈夫な立場の奴なのか?
「おい、『バカダン』じゃねえか…。」
「なんでこの時間から屋上いんだよ…。」
「どうする?めんどくせえなあ…。」
どうやら、大丈夫な立場のようだ。
しかしあまり歓迎はされてないみたいだ。
「う、うるせえのはてめえだろ!関係ないのにしゃしゃりでんじゃねえ!」
リーダー格っぽい一人が叫ぶと、回りが明らかにざわついた。
そんなにやばい奴なのか?
見た目はガタイは多少いいが、普通な感じだが。
「人の安眠妨害して関係ないだと?言うじゃねえか。」
そう言うやいなや、いきなり身体ごと飛んできた。
「どわああ!」
「ぐええ!」
3、4人を下敷きにフライングボディアタックを繰り出しやがった。
確かに普通じゃねえ。
むくりと何事もなかったように起き上がる。
回りを完全に囲まれてるのに、なんだこの落ち着きようは。
「まったくいい歳して、こんな大勢で恥ずかしくないのか?」
!
まさか俺を助けるつもりか?
そんな奴が、現実にいるっていうか?
「て、てめえ…!」
「この人数相手にどうにかなると思ってんのか!」
「いい気になって格好つけるとどうなるか、教えてやる!」
全員が男に一気に襲いかかる。
「わ、ちょっと待て、痛て、いい加減にしろ、ぶっ!」
男は何発くらってもよろつきもしなかったが、一人の拳が顔面の中央に入った。
「…このクソどもが!」
鼻血を出しながら、そう叫ぶと倒れてる俺の両足を掴んだ。
えっ、俺の?
そう思った途端、身体ごと持ち上がり、遠心力を頭に感じた。
「わ、危ねえ!がっ!」
何者かに俺の肘が当たり、次に頭に固いものが当たった。
「いでえ!」
ガンガン何かに当たりまくり、気が遠くなりかけたら、どこかに背中を叩きつけられ激痛と共に意識が戻る。
「が、かかっ…。」
「まったくいい歳して、たった一人に恥ずかしくないのか!?」
男は勝ち誇った表情で言い放った。
「そ、その一人に対して、お前は何してるんだ!?」
「そいつを助けにきたんじゃねえのか!」
「え?誰を?」
「そいつだよ、お前がジャイアントスイングして、柵に叩きつけたそいつ!」
「ん?仲間じゃないの?」
「見たらわかるだろ!だいたいそいつを俺らがしめてるから、割ってきたんじゃねえのか!?」
「俺はいい歳して、みんなでわいわい屋上でサボってる事を言ったんだ!サボるなら静かにサボれ!」
「何言ってやがる、こいつ…。」
「付き合ってられねえ…。」
10人近くいた三年が、呆れてそのまま引き下がろうとする。
「え、あの!もう終わりですか!?」
顔近づけ野郎が止めようとした。
「いいだろ、もう。白けちまったし。」
「関わるだけ面倒くせえしな。」
「…ちっ!結城、このままで終わると思うなよ、てめえ。」
言い返そうとしたが、背中の激痛で声が出なかった。
この男のおかげで、フクロにされるのは免れたが、この男のせいで、フクロにされた方がましだったかもしれない状態にされた。
そんな事を思いながら、意識が遠くなった。