EX1-書換-
ある、遠く離れた湿原地
桜井優紀はその中で佇んでいた。
「やっぱり誰か連れてくるべきだったかな?」
と言いながら溜息を吐く。
この数時間前に起こった出来事を回想してみる。
①ここ等に居る大きな反応の調査の依頼を受ける。
②出て行く時に優斗を発見し小言で言葉をかける。
③迷う。
「はぁ・・・・・・。」
どうしても溜息が出てしまう。
優紀は自分で方向音痴であることは自覚している。
それなのに亦一人で来てしまったのだ。
「反応は近いのにね。」
と誰かと話しているような雰囲気を一人でに出す。
そしてまた歩きだす。
歩きながらあるいてみると解る。
木の色が多様であることに気づく。
赤、黄、青、黒など現実世界では見られない色の木がならんでいるのが見える。
「何者かの罠に飯とはまったってことね・・・。」
と周囲を警戒する。
「こういう時は・・・・。死角か・・・」
「覚悟!!」
「地面の中ね。」
「なんと!!」
と、言うように戦闘が行われていた、結果
優紀の頭の上を宙返りてしている忍者の服装をしている男と
それを見て呆れ顔の優紀がそれぞれ向き合った。
「忍者なら死角がセオリーでしょ。ガッカリしたわ。」
「お主のような強者にそれが通じるかどうか・・・・
話しながら優紀の存在が消えることに気づく。
「絶対剣技・・次元裂羽斬」
男の後ろの景色が裂け次元空間が現れる。
「・・・・お主に剣の素質など・・・」
「そう、私に剣は触れない・・・・・けど、」
男が吸い込まれていく目の前にある物が現れる。
「木の枝なら触れるのよ・・・・。
絶対剣技とは物体を剣に変える剣技の素質もこうもありゃしないのよ。
あなたには次元の深くで消えてもらいましょうか。」
「・・・・不覚・・・・」
「そう言えば・・・・そこのあなた。」
緑色の木の下を指さす。
「隠れてないで出てきなさい。」
次元の裂け目が消えると同時に小さな女の子が現れる。
「おねえちゃん・・・・あたしを助けてくれる?」
「さあ?あなたの正体によるわね。
とりあえず、あなたの状態から察するに向こうから来たみたいだから・・・
おんぶしてあげるから話してみなさいな。」
と、少女に手を差し伸べる。
「うん!!」
少女は優紀の手を掴む。
「全く、何処の誰かに似てるんだから・・・・。」
「どうしたの?」
「いえ、独り言よ。」
桜井優紀とおんぶしてもらった少女は歩き始める。
「つまり・・・・」
歩いて3分後少女から聞いた話を要約してみる。
「私が探していた反応があなたで・・・
あなたは何処かしらの王様の血を無理矢理注入されたと、
それが嫌で逃げ出したと。
そのあなたの嫌な人は未来予知の能力を持ち、ここもすぐにばれると。」
「うん・・・。」
「じゃぁソイツをブッ飛ばしに行こうかな。」
「無理だって。お姉ちゃんが幾ら強くても未来予知には・・・・」
「大丈夫。」
優紀は少女を前に持ってきて抱きしめる。
「お姉ちゃんは究極だから・・・・。」
少女を地面に下ろす。
歩いていると、目的地に着いてしまったようだ。
鋼鉄の城のような建物が佇んでいる。
優紀はそこらにあった木を軽々と引き抜き建物に向かって構える。
「絶対剣技・・断罪波状斬・・・」
一本の木が剣に変わった瞬間建物が崩れ落ちる。
その、崩れた建物からある一人の女性が現れる。
「きたわね。七色の王の血を引く者・・・。こっちに来なさい。」
「・・・・・」
少女は優紀の裾を掴みながら震えているのが優紀には感じ取れる。
「あなた、こういうことしてどういうつもり・・・?」
「あら、そこに居るのは究極の少女、桜井優紀じゃない?
第五性の方は一緒じゃないの?」
優紀は第五性。つまり桜井優斗と桜井優佳のことは一切口に出していない。
「あなた、ただの未来予知の能力じゃないわね・・・。」
「ご察しの通り。私の能力は人生予知、自分の人生全てのことを知っているの。
もちろん、この戦闘であなたが私に負けることもね。」
「究極に勝てると思ったら大間違いね。滑稽だわ。」
と、優紀はカードを取り出し両胸の中央に翳す。
ultimate ready?
「変形・・アルティメット・・・」
カードを中に浮かばせ両手を広げる。
そうすると優紀に光が纏われ変形が完了する
基盤となる服に紫色の装甲がなされている。
そして構える。
「さあ、究極が破れる姿を垣間見れるわよ。」
優紀はそんなことを聞きながら超速移動する。
そこからの一撃はヒットすると思ったが・・・。
「右肩へのパンチ。」
言葉と同時に受け止められる。
「左右のコンビネーション、動脈血への手套
足払いから頭への踵落とし・・・・。」
言葉に発せられる言葉はコンマ一秒前に優紀が起こした行動である。
「正に、人生予知。私の攻撃は予知されるのね・・・。」
女は笑い
「もちろん、あなたの守備行動もね・・・。」
女は単純に突進してくる。
そこから放たれるパンチを受け止めようとするが
右足をモロに喰らう。
少しよろけるが次の左足はフェイントと読み無視するが
それがフェイントではないのでこれも当たる。
守備行動が読まれている優紀には攻撃を喰らうしかない。
〔どうすれば・・・・・・。〕
と、考えていると腹部に蹴りがヒットし地面に叩き付けられる。
起き上がろうとすると四股に拘束が掛る。
女は降り立ち、
「究極を破りし者。このアルテール・シュバルツが究極ね・・。」
「書換・・・・」
そういって優紀はボロボロの身体を起き上がらせる。
先ほどの拘束は優紀の能力書換で無かったことになっている。
「アルテールかアンテナかなんだか知らないけど、私が書換を
使ったからにはあなたの存在は消えることになるわよ。」
「その書換も私に通用するかどうか・・・・。」
優紀はそこらにある木の枝を拾い構える
「究極剣技・・・・」
「「次元・・・・・・・裂羽斬!!」」
剣筋からアルテールの後ろに放たれた次元の重力にとらわれる前に避ける。
「・・・・・・・!!!」
「あなたもこれで詰みね。得意の書換も通用しない。どうする?」
アルテールは左手を後ろにして構える。
光が濃縮してどんどん大きくなっていく。
「・・・これは優斗の裁きの豪炎と同じ状況・・・・。」
「人生破壊撃!!」
特大の放射が放たれる。
それに対し優紀は構え
「書き換えるべき罪!!」
右手から生物の牙が剥き出し現れる。
正面の放射を書き換え、無かったことにしようとするが・・・
「・・・・・!!」
優紀は背中に何かがヒットするのを感じその衝撃で崩れ人生破壊撃も喰らってしまう。
「書き換えるべき罪は正面に対し劇的な効果を発揮するけど
術者は使用中は行動不可。それが弱点ね・・・。」
アルテールは倒れている優紀に向かって、
「究極はそこでは倒れない。そうでしょう?」
その言葉通りに優紀は立ち上がる。
「あなた・・・強いわね。此処までとはね。正直驚いたわ。」
アルテールは笑い
「やっぱり、究極は私のものね・・・・・。」
「第一段階の話ではね・・・・・。」
「第一段階?」
「今までの書換は全て第一段階の話ってこと。」
アルテールは動揺し
「そ・・・そんな!。書換にその上があるなんて・・・
予知では書き換えの定めを私破られてあなたは死ぬのに!!」
「そりゃそうよ。だって、今から作るんだもん。」
優紀は右手を天に掲げ・・・・・
「書換再生・・・。」
天が歪み、そこから特大の放射がアルテールに迫る。
「嘘!!こんなの・・・こんなのあり得ない!」
「そりゃ、私が書き換えた。つまり存在が消えたものを再び存在させたのよ。
しかも、それは愛する弟達の裁きの豪炎。
あなたに受ける術は無い・・・・。」
「いやああああああああああああ!!」
アルテールは裁きの豪炎の直撃を受け倒れる。
先ほどの立場を逆転した優紀は
「そう簡単に究極を名乗らないことね。」
「く・・・・くそっ・・・。」
「終焉よ。出てきなさい・・・ゼロ・・・・」
優紀から現れた暗黒の心の潜在能力はアルテールを喰いつくした。
後処理を終えた優紀は少女に振り向き・・・
「究極は負けないのよ・・・。」
「おねえちゃん!!」
少女は優紀に向って走り出し抱きつく。
「七色の王とか、言ってたわね。あなたのこと・・・。
七色・・・虹・・・・・・。」
優紀は考える。
「あなた、これから-レイカ-〔虹の架け橋〕と名乗りなさい。」
「ありがとう!!
レイカね。優紀お姉ちゃんみたいに強くなりたいんです。
お姉ちゃんの世界を色々見てみたいんです。」
「何時の間にあなた、敬語になってるの?」
「わたしも桜井性をあなたの家族の一人になってもいいですか?」
「・・・・・・・・・。」
「だ、駄目ですか?」
と言うと、優紀はレイカの頭を撫で
「私にも愛すべき家族が一人増えるなんてね・・・・。
私を目指すのは良いけどあなたのタイプだったら優斗を目標にしたほうが良いかもね。」
「はい!桜井レイカ。頑張ります!!」
優紀はレイカとしっかり手を繋ぎ
「新しい家族も出来たことだし帰りましょうか。」
「うん。」
優斗の状態を知らない優紀とレイカはその場を離れ帰っていった。
そして
「究極・・・・面白そうね・・・。」
ここにもある一つの言葉が流れた。