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狐の面は月見て笑う  作者: 衣桜 ふゆ
零の仕事
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33/47

<零の仕事>1

お久しぶりです!

今回は零の話。なのでほとんどが零sideとなります。

最初の頃よりは真面目に書きましたよー←

楽しんで頂けたら幸いです。

「誰・・・?」


あの時見た、おびえたような顔を、俺は一生忘れない。

その顔を見て、俺が守ろうと、思ったんだーーーーーーーー



*狐の面は月見て笑う 零の仕事*



「・・・今日は新月か・・・」

零は顔を上げてつぶやいた。

朔さんの月だな、とか思って。・・・まぁこれは現実逃避だが。

「ちょっと零、ちゃんと仕事してよ」

向かいに座ってそう注意したのは氷美。

現実に引き戻され、零は眉を寄せる。

「わかってるよ・・・あーあ、飽きてきたなぁ」

「その気持ちも分からないわけじゃないけど」

氷美はそう言って、千円札を五枚ほどまとめて茶封筒に入れた。

「ほら、零も手を動かして」

「だぁぁぁ・・・ねみぃ・・・」


現代にいる義賊として、一番困るのが、戦利品を分け与えることだ。

最近の立派な警察の目はあるし、そもそも義賊の存在があまり知られていない。

そんな中で、零や氷美が属する義賊のグループ『月夜』は、なんとかしてちゃんと仕事をしようと、分け与える手段を考えた。

結果、茶封筒に手紙と戦利品をいれ、各家の郵便受けに夜中入れて回ることである。

最初こそいたずらかと思われないか心配したが、そんな心配をしたところでどうにもならない。他に手段がないからだ。

いたずらだと思うなら、好きに行動すればいい。警察にだって言えばいい。

ただ、悪いのは不正をして金を巻き上げる方だ。

それのおかげで不正な商売が警察にばれて悪が減ることもある。

まぁ、『月夜』のやっていることは銃刀法違反だとか、悪いこともあるけれど。

なぜだか知らないが、そんなわけで。

『月夜』は捕まる気配がしない。


「つーかさぁ、何で俺らがこれやってるの?」

零がそんな疑問を抱いた理由は、背後にある。

背後にあるのは、死んだように眠る萌黄と朔の姿であった。

「あの二人は寝てんのにさぁ・・・」

いびきをかいていたりするわけではないが、気配はあるわけで。

その安らかな気配がよけいいらいらを駆り立てるわけで。

乱暴な手つきで千円札と手紙を入れる零に、氷美は苦笑する。

「だって、あの二人は今日仕事に行ってきたじゃん」

この戦利品をとってきたのは、萌黄と朔だ。

朔が仕事にでるのは珍しく、零はラッキーと思っていたのだが。

「零はほとんど仕事に行っていたからわからないんだっけ」

氷美がそんなこと言って、外の仕事に行かなかった人の内職みたいな仕事を教えてくれた。

それが、これ。『封筒づくり』と呼ばれている。

「仕事やらないなんてずるいでしょ? だから外の仕事にでなかった人は代わりにこれをやるの。仕方ないじゃない」

氷美が手を休めずに苦笑しながらそんな話をする。

「くっそ〜・・・こんなことなら外の仕事の方がまだましだ・・・」

思わずぼそっとこぼすと、氷美が氷点下の視線でにらんできた。

「外 の 仕 事 は 危 険 が 伴 う ん だ け ど ?」

今にもブリザードが吹きそうな声に零は思わず顔がひきつる。

「待 っ て い る 人 が ど れ だ け 不 安 か わ か っ て い る の ?」

スタッカートがかかったようなしゃべり方がよけいに怖い。

「す、すみませんでした・・・」

目を泳がせて謝罪すると、氷美は一つため息をついて仕事を再開した。

氷美の顔色をうかがいながら、零は思う。

氷美はあの暴走事件があった後、あまり仕事にだされなくなった。

朔に理由を聞くと、「彼女の気持ちも分からない訳じゃない」と返された。

意味が分からなかったが、たぶんその「彼女」は氷美を表しているわけじゃないということだけわかった。麗音か、もしくはーーーーーー。

まぁとにかく、あまり氷美を危険な目に遭わせたくないらしい。

氷美もそれを自分なりにわかっているらしく、反発はしなかった。

何度かうなずいて、「わかりました」と、それだけ。

零も氷美を外の仕事に出すのは余りよく感じていなかった。昔のこともあるし。

それから氷美は、なにやら「待つ方の恐怖」を味わったらしく、零が外の仕事に行くときは不安そうな顔をするのだ。・・・・・・零に限らないが。

だから、外の仕事に行きたいとか言うと氷美は必ず怒る。

心配して怒ってくれているのがわかるから、零としては少し照れくさかった。

「しっかし、今日は多いなぁ」

零が話を逸らすように言うと、氷美は何事もなかったかのように同意した。

「そうね・・・何の仕事だったのかわかんないけど。こんなに巻き上げてるなんて・・・」

あ、終わった。氷美がそう続けてつぶやく。

封筒に金と手紙を入れるのが終わったようだった。

それに対し、零が入れるのはまだ終わらない。

さっきから手より口が動いているからだ。

「零、早くおわしちゃって」

氷美がため息混じりに言う。

「わかってるって・・・。てか、今日はどのあたりに届けるんだ?」

いつも同じ場所に届けていると、やっぱり金持ちと貧乏さんの差ができてしまう。

だから、『月夜』のメンバーは日によって場所を変えて届けている。

それをまだ聞いておらず氷美に問うと、あっち、と窓の向こうを指さされた。

「・・・・・・なぁ氷美」

「なによ」

「方角とか覚えた方がいいんじゃね?」

純粋にそう思って提案すると、氷美はかぁっと頬を赤くする。

「う、うるさいわね! 方角とかわかる訳ないでしょ!?」

逆ギレである。

「目的地がわかれば方角なんてどうでもいいのよ!」

つばを飛ばす勢いで氷美は叫ぶ。

零はその様子に少し笑った。

「・・・手伝ってあげるから、それ以上追求しないで」

情けない声で氷美が言う。

氷美は零の脇に置いてある茶封筒と千円札、手紙を半分ほど手に取り、零の仕事を手伝い始めた。

「おー、ありがと」

手伝ってくれるのは純粋に嬉しい。日がでる前に配達までしなくてはならないからだ。

まだ深夜に入ったばかりだが、氷美の案内では目的地までどれくらい時間がかかるかわからない。早めに終わらせた方がいいだろう。

そんなことをめんどくさそうに考えつつ、零は仕事にまじめに取り組むように努力した。



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