<零の仕事>1
お久しぶりです!
今回は零の話。なのでほとんどが零sideとなります。
最初の頃よりは真面目に書きましたよー←
楽しんで頂けたら幸いです。
「誰・・・?」
あの時見た、おびえたような顔を、俺は一生忘れない。
その顔を見て、俺が守ろうと、思ったんだーーーーーーーー
*狐の面は月見て笑う 零の仕事*
「・・・今日は新月か・・・」
零は顔を上げてつぶやいた。
朔さんの月だな、とか思って。・・・まぁこれは現実逃避だが。
「ちょっと零、ちゃんと仕事してよ」
向かいに座ってそう注意したのは氷美。
現実に引き戻され、零は眉を寄せる。
「わかってるよ・・・あーあ、飽きてきたなぁ」
「その気持ちも分からないわけじゃないけど」
氷美はそう言って、千円札を五枚ほどまとめて茶封筒に入れた。
「ほら、零も手を動かして」
「だぁぁぁ・・・ねみぃ・・・」
現代にいる義賊として、一番困るのが、戦利品を分け与えることだ。
最近の立派な警察の目はあるし、そもそも義賊の存在があまり知られていない。
そんな中で、零や氷美が属する義賊のグループ『月夜』は、なんとかしてちゃんと仕事をしようと、分け与える手段を考えた。
結果、茶封筒に手紙と戦利品をいれ、各家の郵便受けに夜中入れて回ることである。
最初こそいたずらかと思われないか心配したが、そんな心配をしたところでどうにもならない。他に手段がないからだ。
いたずらだと思うなら、好きに行動すればいい。警察にだって言えばいい。
ただ、悪いのは不正をして金を巻き上げる方だ。
それのおかげで不正な商売が警察にばれて悪が減ることもある。
まぁ、『月夜』のやっていることは銃刀法違反だとか、悪いこともあるけれど。
なぜだか知らないが、そんなわけで。
『月夜』は捕まる気配がしない。
「つーかさぁ、何で俺らがこれやってるの?」
零がそんな疑問を抱いた理由は、背後にある。
背後にあるのは、死んだように眠る萌黄と朔の姿であった。
「あの二人は寝てんのにさぁ・・・」
いびきをかいていたりするわけではないが、気配はあるわけで。
その安らかな気配がよけいいらいらを駆り立てるわけで。
乱暴な手つきで千円札と手紙を入れる零に、氷美は苦笑する。
「だって、あの二人は今日仕事に行ってきたじゃん」
この戦利品をとってきたのは、萌黄と朔だ。
朔が仕事にでるのは珍しく、零はラッキーと思っていたのだが。
「零はほとんど仕事に行っていたからわからないんだっけ」
氷美がそんなこと言って、外の仕事に行かなかった人の内職みたいな仕事を教えてくれた。
それが、これ。『封筒づくり』と呼ばれている。
「仕事やらないなんてずるいでしょ? だから外の仕事にでなかった人は代わりにこれをやるの。仕方ないじゃない」
氷美が手を休めずに苦笑しながらそんな話をする。
「くっそ〜・・・こんなことなら外の仕事の方がまだましだ・・・」
思わずぼそっとこぼすと、氷美が氷点下の視線でにらんできた。
「外 の 仕 事 は 危 険 が 伴 う ん だ け ど ?」
今にもブリザードが吹きそうな声に零は思わず顔がひきつる。
「待 っ て い る 人 が ど れ だ け 不 安 か わ か っ て い る の ?」
スタッカートがかかったようなしゃべり方がよけいに怖い。
「す、すみませんでした・・・」
目を泳がせて謝罪すると、氷美は一つため息をついて仕事を再開した。
氷美の顔色をうかがいながら、零は思う。
氷美はあの暴走事件があった後、あまり仕事にだされなくなった。
朔に理由を聞くと、「彼女の気持ちも分からない訳じゃない」と返された。
意味が分からなかったが、たぶんその「彼女」は氷美を表しているわけじゃないということだけわかった。麗音か、もしくはーーーーーー。
まぁとにかく、あまり氷美を危険な目に遭わせたくないらしい。
氷美もそれを自分なりにわかっているらしく、反発はしなかった。
何度かうなずいて、「わかりました」と、それだけ。
零も氷美を外の仕事に出すのは余りよく感じていなかった。昔のこともあるし。
それから氷美は、なにやら「待つ方の恐怖」を味わったらしく、零が外の仕事に行くときは不安そうな顔をするのだ。・・・・・・零に限らないが。
だから、外の仕事に行きたいとか言うと氷美は必ず怒る。
心配して怒ってくれているのがわかるから、零としては少し照れくさかった。
「しっかし、今日は多いなぁ」
零が話を逸らすように言うと、氷美は何事もなかったかのように同意した。
「そうね・・・何の仕事だったのかわかんないけど。こんなに巻き上げてるなんて・・・」
あ、終わった。氷美がそう続けてつぶやく。
封筒に金と手紙を入れるのが終わったようだった。
それに対し、零が入れるのはまだ終わらない。
さっきから手より口が動いているからだ。
「零、早くおわしちゃって」
氷美がため息混じりに言う。
「わかってるって・・・。てか、今日はどのあたりに届けるんだ?」
いつも同じ場所に届けていると、やっぱり金持ちと貧乏さんの差ができてしまう。
だから、『月夜』のメンバーは日によって場所を変えて届けている。
それをまだ聞いておらず氷美に問うと、あっち、と窓の向こうを指さされた。
「・・・・・・なぁ氷美」
「なによ」
「方角とか覚えた方がいいんじゃね?」
純粋にそう思って提案すると、氷美はかぁっと頬を赤くする。
「う、うるさいわね! 方角とかわかる訳ないでしょ!?」
逆ギレである。
「目的地がわかれば方角なんてどうでもいいのよ!」
つばを飛ばす勢いで氷美は叫ぶ。
零はその様子に少し笑った。
「・・・手伝ってあげるから、それ以上追求しないで」
情けない声で氷美が言う。
氷美は零の脇に置いてある茶封筒と千円札、手紙を半分ほど手に取り、零の仕事を手伝い始めた。
「おー、ありがと」
手伝ってくれるのは純粋に嬉しい。日がでる前に配達までしなくてはならないからだ。
まだ深夜に入ったばかりだが、氷美の案内では目的地までどれくらい時間がかかるかわからない。早めに終わらせた方がいいだろう。
そんなことをめんどくさそうに考えつつ、零は仕事にまじめに取り組むように努力した。




