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狐の面は月見て笑う  作者: 衣桜 ふゆ
『氷』たちの紅
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Ⅲ.仲間割れ?④

外に出た氷美は、空を見上げた。

日が昇っている。

いろいろありすぎて忘れていたが、今は朝なのだ。

仕事の時間が夜だから、時間感覚がずれる。

平和的なことを考えつつ、氷美は歩き出した。

出て行ってやるとは言ったものの、行く所なんてない。

ただ、いつもは狐の面をかぶっているから、義賊であるという正体がばれなくて良かったと思う。

服は気がついたら若草色に鞠かなんかを描いた可愛らしい着物に替わっていた。

萌黄が着替えさせてくれたのかもしれない。

通りすがりの人、私が持っているのは着物だけなのです、理解してください。

ちなみに、若草色や黄色の着物は仕事のときには使えない。

血の色が目立たないように、紅の着物じゃないと氷美は仕事ができなくなってしまうのだ。

だからこそ、紅じゃない着物を着ているときは少し気分が吹っ切れる。

プライベート、と思える。

まぁ…今は気分が気分だけど。

「……」

氷美は一度、月夜の隠れ家を振り返った。

口を、微かに震えながら動かす。


『さよなら』


動かすだけで声にしなかった理由とは…

正直、氷美にもわからなかった。


きゃはははは、という声が聞こえた。

昼下がりの公園。

氷美は木陰のベンチに座り、ぼんやりと子供達が遊んでいるのを眺めていた。

追いかけっこ、影踏み鬼、色鬼…

いろんな遊びを知っている。

なんでだろう、と思った。

氷美の過去はあんな感じだったし、遊んだ記憶などさっぱりない。

それなのに、知っているのだ。

なんでだっただろうか。


『――――俺らは、鬼だからな――――』

『君が日本刀を持ったとたん、鬼と呼ばれるよ。その覚悟はあるのかい?氷美』

『鬼?あら、氷美をそのように呼ぶのなら、私はそう言った人間を殺しに行くわ。教えなさい、氷美。』


懐かしい、声がした。

零、朔、萌黄、そして…


『そなたが鬼だと呼ばれたからといって、何も関係はあるまい。我はそなたとずっと共にいるからの…』


雪鶴。

ずっと共にいるなんて。

いつの話?今、こうやって別れてしまったのに。

雪鶴は、氷美のパートナーだった。

大切な、大切な―――

さっきの、ちょっとした喧嘩を思い出す。

おかしい。雪鶴は間違ったことは言っていなかった。

間違えたのは…逃げたのは…氷美一人だけ。

見放された気分で、一人で拗ねた感じで、出て行ってやるって、逃げて。

馬鹿なんじゃないの、って自分でも思った。

そして、戻らないと、って思った。

あぁ、でも――――――


『視界にはいることも我は許さぬ。もう二度と戻ってくるでない!』


雪鶴は、そんなことを言っていたっけ。

じゃぁ、戻れないんだろうか。戻っても、何もできないんじゃないだろうか。

自己嫌悪…こういうことを言うのか。

最近はそればっかり。


「…なーにやってんの。」

不意に、声をかけられた。

親しげな話し方だが、聞いたことのない声。

顔を上げた氷美は、訝しげに眉をひそめた。

「あのぅ…どなたでしょう?」

つややかな黒い髪は爽やかなポニーテイル。大きな黒い瞳も澄んでいて綺麗だった。

整った顔立ちのその少女は、人懐っこそうな笑みを浮かべていた。

年は…氷美と同じくらいか。

「あれ、…あ、あぁ…そっか。会ったことなかったっけ。」

「はい?」

ますます意味がわからない。

「えぇっと、私はねー、黒羽 りう。よろしくね、氷美。」

「りう、さん…?」

「そうそう!」

氷美は、混乱する頭で一つの疑問を見つけた。

私は、名乗ったっけ…?

「で、何やってたの?人生つまんねーみたいな顔してたけど。」

人生つまんねーって、どんな顔だか見当がつかない。

きっと、りうの表現方法なんだろう。

一生理解できなさそうだ。

「ちょっと、パートナーとケンカしたんです。」

「…パートナー…あぁ。」

「あぁって?」

「あ、なんでもないなんでもない。」

すごく怪しい。

でも、と氷美は思った。


相談する相手は必要だから…。

話すことにした。


黒羽 りうちゃん…

誰だかおわかりですか?

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