Ⅲ.仲間割れ?②~零side~
「氷美…?」
気付けば、零は氷美の手首を掴んでいた。
放っておいてっていわれたって、放っておけるわけがない。
外に出かけるときはいつでも持っていた雪鶴も持っていない。
鋼糸しかできない自分が言うのもなんだが、氷美は日本刀しかできないと零は知っている。
幼なじみ(?)だけが知る秘密である。
「っ…離して!」
「なんでだよ!」
「何でも何もないわよ!早く、離してって!」
氷美は手から逃れようと自分の手を振る。
そのくらいで離す零ではない。
逃げることぐらい、予想済みだ。
「離すわけねぇだろ!どこ行く気だ、そんな泣きそうな顔して!」
氷美は今にも泣きそうな顔をしていた。
自分でも知らなかったように氷美ははっとする。
「私…泣きそう…?」
幼い子のようにあどけない瞳で零に問う。
零は力強く頷いた。
「そ、っか…。」
まだ涙は出ていない。
何があったんだ?
そう聞こうとした矢先、氷美はひらりと身を翻した。
「………あっ!」
「零、ありがと。」
いつの間にか、手を離していたのだ。
自分の手を呪う。
「ねぇ、零。」
氷美は、それでもすぐに逃げなかった。
じっとこっちを見つめている。
「…何?」
「ありがとう。」
零は目をみはった。
今の手を離したことだろうか?
いや、あれは偶然で…。
「一生懸命、助けようとしてくれて。ありがとね、零。」
一生懸命、助けようとした。
いつのことだろう?
心当たりは、一つ。
でも、その時の記憶が氷美には………。
「ひ、…あ。」
考え込んでいた零は、もう一度頭を抱えた。
…氷美のやつ、もういない。