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狐の面は月見て笑う  作者: 衣桜 ふゆ
『氷』たちの紅
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Ⅰ.制御①

時は現代。

優秀なる警察諸君が日がな犯罪を取り締まったりしている。

そんな中、滅多にない昔ながらの職業(?)が行われていたりした。

その職業の名前は、「義賊」。


着物で日本刀を操る氷美(ひみ)もまた、その義賊の一人だ。

だが、氷美は単独で義賊の活動をしているわけではない。

5人のグループ、「月夜(げつや)」。

「あーあ、派手にやったな、氷美。」

氷美の背よりも50㎝ほど高い塀を軽々と越えて来たジャージ姿の少年が苦笑した。

「…(れい)。」

零と呼ばれた少年も、「月夜」の一人。

氷美よりも一歳だけ年上で、それだけなのに威張るというのがものすごくいらつくやつだ。

「氷美もさ、やりすぎないようにできないわけ?」

「できたら、とっくの昔にやってるわよ…。」

喋るのは久しぶりな気がした。日本刀を使っているときは、時間が長く感じられるのだ。

感じられるだけじゃないのかもしれないけれど、もう慣れた。

「どうでもいいけど、零。」

「あい?」

「私がやりすぎるのを、黙ってみていたというの?」

氷美は、自分がやりすぎること、誰かにとめられないと相手の息の根が止まるまで戦うことを知っている。

もちろん零も、知っているはずなのに。

「あ、いやー…それは、さ…。」

「黙ってみてたんでしょう?」

やりすぎてしまう自分が、大嫌いだった。

だからやりすぎそうなときはとめてくれと、月夜の全員に言った。

「………悪い。」

ややあって、零が頭を下げた。彼曰く、氷美のやりすぎたときの強さがとめるほどのものなのか品定めしたらしい。

「…………………」

「…氷美?」

「ふっざけんじゃないわよ!」

「ちょ、氷美!仕事!騒ぐとばれる!」

「あんたが悪いのよ、零。」

「だから、悪かったって!」

「悪かったですむ話じゃないのよバカ!」

「じゃぁどうしろってんだよ!」

「そんなの私が知るわけないでしょ!」


「私、帰る。零一人でやって。」

「え、ちょ、氷美!?」

零が後ろで呼び止める声がする。

知ったことか。あいつが悪いんだ。そう腹立ち紛れに思う。

氷美は日本刀を持ち、いつの間にか落としていた狐の面を拾う。

「少し、汚れた……。」

自分で言って、吐き気がした。

その紅い汚れは、氷美がやりすぎてしまった証拠となる。

氷美は、どこで道を間違えたのか。

あの、孤児だった頃から間違えてたというのならば。

氷美は一つため息をつき、知ったことか、と心の中でもう一度呟いた。

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