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狐の面は月見て笑う  作者: 衣桜 ふゆ
『氷』たちの紅
16/47

*雪鶴語り〔過去③〕*

投稿がしばらくできていませんでした。ごめんなさいっ!


「…記憶を、失った…?」

麗音のぼんやりした声が、やけに大きく響いた。

誰も一言も発することができずにいたからかもしれない。

「そうだ。あまりにも、キツイ光景だったからな。」

弓弦の苦々しい声。

麗音はキッと顔を上げて立ち上がり、弓弦の頬を張り飛ばした。

いい音がした。

「な、…お前…」

弓弦が呆然とする。

弓弦はこれでも、月夜のリーダーだ。

麗音はそれの部下らしき存在であり、弓弦も張り飛ばされたことなんてなかった。

でも、それはただの言い訳になる。

「何普通に言ってんのよ!あんたがもうちょっと早くあの屋敷に来ていたら、誰も死ななくても、氷美だってさらわれなくてもすんでいたじゃない!キツイ光景にさせたのも、あんたが遅れてきたからでしょ!?全部、あんたのせいだわ!!」

メチャクチャにまくしたてられた言葉に、弓弦は反論しなかった。

勢いできたもう一発の平手も、避けなかった。

自分に、それを受けなければいけない責任があったから。

「…悪かった。」

その一言で、麗音には十分だった。

麗音はその場にくずおれる。

わかっている。

すべての責任が弓弦にあるわけではないのだと。

弓弦だって、好きでそうやった訳じゃない。

弓弦だって、麗音のように周りに当たってこの気持ちをまき散らしたかった。

平和な日々は、いつまでも続くものじゃないのだと。

この光景が、物語っていた。


「…おれ、さがしにいく。」

また静まりかえった中で、零は呟くように言った。

幼い心で、決意したあのことを、守れなかった。

『ひみをまもるんだ!』

悔しさ。零の感情はそれ一つ。

自分の非力さに腹が立つ。

「零…」

朔がためらいがちに声をかけた。

「さくにいちゃん、とめないでよ。」

「…止めるに決まってるだろう!」

「だめなんだ!」

零は自分に言うように叫んだ。

「だめなんだ。ここでおれがいかないと、おれはいっしょうひみをまもれなくなる。…そんな、気がする。」

弓弦がふっと笑う気配がする。

なんか馬鹿にされた気がして、零は弓弦を正面から見た。

目が合う。

「おれは、なにをいわれてもいくからな。」

宣言した。

「ふむ。譲る気はなさそうだな。」

弓弦は腕を組み、面白そうに零を見た。

そして、朔に呼びかける。

「よし、朔!」

「…はい?」

「お前、今から月夜のリーダーな。」

間。

「――――――はぁっ!?」

「うるせーな。零がやるって言ってんだ。零は月夜の鋼糸使いになる。」

「な、でも…!」

「でもじゃねーの。こいつが氷美を守る手だてはそれしかねぇ。」

「教える人は…!」

「私。」

麗音の落ち着き払った声。

だいぶ落ち着いたのだろうか。

「でしょ?弓弦。」

「当たり前だ。」

どんどん進んでいく新・月夜の話に、朔は慌てた。

「あ、当たり前って…そんな、すぐ覚えられる訳じゃないんだし…!」

「大丈夫だろ。零は手先が器用だし、もちろん俺たちだってついてくさ。」

弓弦がにっと笑う。

朔の背を冷や汗がつたった。

―――――月夜…大丈夫なんだろうかこんな調子で…

零がたたっと駆けてきて、弓弦の服の裾を引っ張る。

「ゆづるおじさん!!」

「お?」

「ゆづるおじさんっていいやつだな!」

「…あー、まあ、な。」

歯切れの悪い声に、朔は笑いをこらえるのが精一杯だった。


雪鶴が語っている気がしないというツッコミはナシでお願いします。

ちなみに、雪鶴は氷美と一緒にいますので。

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